FDAが特定の進行/転移性乳がんにアベマシクリブを承認

米国食品医薬品局(FDA)は本日、ホルモン療法(内分泌療法)後に病勢が進行した、ホルモン受容体(HR)陽性、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)陰性の進行乳がんまたは転移性乳がんの成人患者に対して、abemaciclib[アベマシクリブ](商品名: Verzenio[ベージニオ])を承認した。アベマシクリブは、内分泌療法中にがんが増殖した後の、フルベストラントと呼ばれる内分泌療法との併用で承認された。がんが広がった(転移)後に内分泌療法および化学療法による治療歴がある場合、単剤での使用も承認されている。

「アベマシクリブは、治療に反応しない特定の乳がん患者にとって、新たな標的治療の選択肢となります。アベマシクリブはこのクラスの他の薬剤と異なり、内分泌療法と化学療法による治療歴のある患者に対しては単剤投与も可能です」と、FDAのOncology Center of Excellence室長であり、FDA医薬品評価研究センター抗腫瘍薬製品室長代理であるRichard Pazdur医師は述べた。

アベマシクリブは、がん細胞の増殖を促進する特定の分子(サイクリン依存性キナーゼ4および6)を阻害することによって作用する。アベマシクリブ以外にもこのクラスには、2015年2月にパルボシクリブ、2017年3月にリボシクリブの2剤が乳がんの特定の患者に対して承認されている。

乳がんは、米国で最も多いがんである。国立衛生研究所の国立がん研究所によれば、今年、約252,710人の女性が乳がんと診断され、約40,610人がこの病気で死亡すると推定されている。乳がん患者の約72%は、HR陽性およびHER2陰性の腫瘍を有する。

フルベストラントと併用した場合のアベマシクリブの安全性と有効性は、内分泌療法の治療後に進行し、がんの転移後に化学療法を受けなかったHR陽性HER2陰性乳がん患者669人を対象としたランダム化試験で検討された。この試験では、治療後に腫瘍が増殖しなかった期間(無増悪生存期間)を測定した。無増悪生存期間の中央値は、フルベストラントとアベマシクリブの併用群が16.4カ月であったのに対し、フルベストラントとプラセボの併用群は9.3カ月であった。

単剤療法としてのアベマシクリブの安全性および有効性は、内分泌療法およびがん転移後の化学療法による治療後に進行したHR陽性HER2陰性乳がん患者132人の単群試験で検討した。試験では、治療後に完全または部分的に腫瘍が縮小した患者の割合(奏効率)を測定した。この試験では、アベマシクリブを服用している患者の19.7%で、8.6カ月間(中央値)、腫瘍の完全または部分的な縮小がみられた。

アベマシクリブによくみられる副作用として、下痢、ある種の白血球数減少(好中球減少症および白血球減少症) 、悪心、腹痛、感染症、疲労、赤血球数の減少(貧血)、食欲減退、嘔吐および頭痛がある。

アベマシクリブの重篤な副作用として、下痢、好中球減少症、肝臓血液検査値の上昇、血栓(深部静脈血栓症または肺塞栓症)がある。妊娠中の女性は、発育中の胎児に害を及ぼす可能性があるため、アベマシクリブを服用すべきではない。

この申請は、FDAにより優先審査および画期的治療薬の指定を受けた。

FDAはイーライリリー社に対し、Verzenioを承認した。

添付文書はこちらから。

翻訳担当者 中島 節

監修 原 文堅(乳がん/四国がんセンター)

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