乳がん検診リーフレット(英国NHS)

第1章 はじめに

英国では、女性の約8人に1人がその生涯で乳がんと診断されています。乳がんが早期で発見されれば、回復する見込みは十分にあります。

乳がん検診は、乳がんの早期発見を目的としています。検診では、小さすぎて見たり触れたりできないがんも見つけることができるマンモグラフィと呼ばれるX線検査を用います。

ただ、乳がん検診には一定の不利益を伴うことも知っておく必要があります。(以下参照)

年齢が上がるにつれて乳がんになる可能性が高まるため、かかりつけ医に登録している50歳から70歳までの女性は全員、自動的に3年ごとの乳がん検診に呼ばれます。

一方で、乳房にしこりや組織が硬くなっている部分があるなど、乳がんの症状について心配されている場合は検診まで待たずにかかりつけ医の診察を受けてください。

このページでは、乳がん検診の概要を説明すると共に、検診がなぜ実施されるのか、いつ実施されるのか、乳がん検診で何をするのか、そして検診結果の理解に関する情報へのリンクを掲載します。

● なぜ乳がん検診を実施するのですか

ほとんどの専門家は、定期的な乳がん検診が乳がんの早期発見に有益であると考えています。疾患が早期に発見されれば、その分生存の確率が高くなります。

また、乳がんが早期に発見されれば、乳房切除術や化学療法が必要になる可能性も低くなります。

主な不利益としては、乳がん検診では時に、症状を引き起こしたり生命を脅かすことがないがんが見つかることです。これにより、不必要な追加検査と治療を受けることになるかもしれません。

第2章の乳がん検診のメリット・デメリットについてをお読みください。

● いつ乳がん検診を受けますか

現在イギリスでは50歳から70歳までの女性に乳がん検診を受診する機会が与えられています。しかし、英国国民医療サービス(NHS)はこのプログラムを試験的に拡大し、47歳から73歳までの女性に提供する準備をしています。

50歳の誕生日から53歳の誕生日までの間に初めて乳がん検診の案内が届きますが、一部の地域ではプログラムの試験的拡大の関係で47歳から案内が届きます。

乳がん発症リスクが平均より高い場合は50歳未満でも乳がん検診の受診資格を得られる場合があります。(詳細は下記の乳がん家族歴がある場合 をお読みください。)

70歳を超えると乳がん検診の案内が来なくなります。しかし、受診資格はありますので、地元の検診所に連絡して受診予約をすることができます。

第3章 いつ乳がん検診を受けますか をお読みください。

あなたの地域の乳がん検診所を見つける(原文検索ページへ)

● 乳がん検診では何をしますか

乳がん検診は、特別な診療所または移動式乳がん検診所で行われます。検診はマンモグラフィ撮影をする女性のスタッフによって行われます。

検診では、乳房が片方ずつX線撮影されます。乳房をX線装置に置くと、透明な板でそっと、でもしっかりと圧迫されます。各乳房につき、違う角度から2枚X線撮影されます。

第4章 乳がん検診では何をしますか をお読みください。

● 結果はいつ受け取れますか

乳房のX線撮影が行われた後、異常がないかマンモグラフィ画像がチェックされます。マンモグラフィの結果は、受診後2週間以内にあなたとあなたのかかりつけ医に送られます。

受診後、約25人のうち1人の女性が再検査に呼ばれます。再検査に呼ばれても必ずがんに罹患しているということはありません。最初のマンモグラフィ画像が不明瞭だったのかもしれません。

再検査に呼ばれる約4人のうち1人の女性が乳がんと診断されています。

第5章の乳がん検診結果 をお読みください。

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第2章 なぜ検診を実施するのですか

英国国民医療サービス(NHS)は、小さすぎて見たり触れたりできない早期の段階で乳がんを発見することで命を救うために検診を実施しています。

しかし、検診にはいくつかの不利益を伴います。検診を受けた女性の中には、放っておいても無害だったかもしれないのに、乳がんと診断されて治療を受けることになる人もいます。

検診を受けても乳がんになることを妨ぐことはできませんし、すでに進行した乳がんにかかっている場合は助けにならないかもしれません。

乳がん検診を受けるかどうかを決めるのはあなたです。
不利益利益については、以下でより詳しく説明します。

● 乳がん検診の利益(メリット)

ほとんどの専門家は、定期的に乳がん検診を受診することが乳がんの早期発見に有益であると考えています。疾患が見つかるのが早ければ早いほど、生存の可能性は高くなります。

また、乳がんが早期に発見された場合、乳房切除術や化学療法を必要とする可能性が低くなります。

● 乳がん検診の不利益(デメリット)

過剰な治療
検診を受けた女性の中には、放っておけば無害だったかもしれないのに、乳がんと診断されて治療することになる人もいます。乳がんの治療と起こり得る副作用について(原文ページ)をご覧ください。

不必要な不安や苦痛
検診後、25人の女性のうちの約1人が再検査に呼ばれます。再検査に呼ばれたからといって必ずがんにかかっているというわけではありません。最初のマンモグラフィ画像が不明瞭だったのかもしれません。

検診の結果が異常と出た女性のほとんどが、乳がんではないことが確認されます。これらの女性は不必要な心配や苦痛を経験するかもしれません。

再検査を受ける4人の女性のうち約1人が乳がんと診断されています。

誤診(見逃し)
がんがあるにもかかわらず、マンモグラフィの結果が陰性(すべて問題ない)と出る可能性もわずかながらあります。乳がん検診は、ほとんどの乳がんを見つけられますが、受診した2,500人の女性のうち約1人の割合で乳がんが見逃されてしまうことがあります。

放射線
マンモグラフィは一種のX線であり、X線は非常にまれにがんを引き起こすことがあります。

マンモグラフィの最中、乳房は少量の放射線(0.4mSv(ミリシーベルト))を被曝します。

比較のために、英国では、自然界からの放射線によって年間1人あたり2.2mSv被曝しています。しかし、検診と早期発見の利益は、X線の不利益を上回ると考えられています。

● 乳がん検診によって期待される利益と起こりうる不利益を比べる

乳がん検診によってどれだけの命が救われるか、そして、どれだけの女性が、その後生命を脅かすことにならない(放っておいても致死的にならない)にもかかわらず、がんと診断されるか について、意見が分かれています。以下に示す数字は、証拠を検証した専門家グループが算出した最良推定値です。

*乳がんから命を救う

乳がん検診によって、受診した200人の女性ごとに約1人の命が救われています。これは、英国で毎年約1,300人の命が乳がんから救われたという計算になります。

*無害かもしれないがんの発見

3年ごとに検診を受けている50歳から70歳までの200人の女性うち、がんと診断された約3人は、検診をしなければ決して見つかることがなく、命を脅かすこともなかったがんだと考えられます。これは、毎年英国の約4,000人の女性が必要としない治療を提供されている計算になります。

*これが意味すること

全体として、乳がんから命を救われる女性1人に対し、約3人の女性が命を脅かすことがないにもかかわらず、がんと診断されます。

研究者は、致死的ながんとそうでないがんをより良く見分ける方法を探っています。

*乳がんのリスクが高い人

乳がんの原因が完全には理解されていないため、なぜ乳がんを発症する女性と発症しない女性がいるのかを説明するのは困難です。

しかし、乳がん発症の可能性に影響を及ぼすことが知られているリスク因子はあります。これらの中には解決手段のないものもありますが、変えることができるリスク因子もあります。乳がんのリスク因子について(原文)をご覧ください。

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第3章 いつ乳がん検診を受けますか

50歳から70歳までのかかりつけ医に登録している女性は自動的に3年ごとの検診に呼ばれます。

乳がん検診は現在、イギリスの50歳から70歳の女性に実施されています。しかし、英国国民医療サービス(NHS)はこのプログラムを試験的に拡大し、一部47歳から73歳の女性にも検診を実施しています。

50歳の誕生日から53歳の誕生日までの間に初めて検診に呼ばれます。ただし、一部の地域では、プログラムの試験的拡大の関係で47歳から呼ばれます。

指定された受診日時を変更したい場合は、受診票に記載の名前と住所に連絡してください。

乳がん発症リスクが平均より高い場合は、50歳よりも前に乳がん検診の受診資格を得ることができる場合があります(下記ご参照ください)。

70歳以上になると(検診の試験的拡大対象地域の場合、73歳以上になると)、受診票は来なくなります。それでも受診資格はありますので、地元の乳がん検診所に直接連絡して予約することは可能です。

あなたの地域の乳がん検診所を見つける(原文ページ)

乳がんの家族歴がある場合

乳がん(女性または男性)や卵巣がんの家族歴があって、平均より高い乳がんリスクがあるかもしれないと思われる場合は、かかりつけ医に相談して高次医療機関に紹介してもらってください。その医療機関の判断によっては、遺伝子検査に照会されるかもしれません。

詳細は、遺伝カウンセリングがんリスク遺伝子の予測的遺伝子検査(原文ページ)をお読みください。

乳がんリスクの高い女性の検診

乳がん発症リスクが高いと判明した場合、年齢やリスクレベルに応じて、毎年MRI(磁気共鳴イメージング)検査またはマンモグラフィをすることになるかもしれません。MRIは堅い乳房細胞があってもがんを検知することに優れているため、マンモグラフィの代わりに使われるときがあります。

個人的に乳がん検診を受ける

英国国民健康保険の検診プログラムは、その後の治療や処置を含め、検診の全てにおいて面倒を見てくれます。個人的に検診を受けた場合、検診後の処置や治療が検診を受けた所で受けられない場合があります。

ただし、個人的に受診したマンモグラフィー画像に異常が認められた場合、いつでも英国国民健康保険に戻してもらえます。

詳細は、「個人的に検診を受けることを検討されている方へ」NHSリーフフレット(PDF)(原文)をお読みください。

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第4章 乳がん検診では何をしますか

乳がん検診は、特別な診療所または移動式乳がん検診所で、マンモグラフィー(乳房のX線)を撮る女性スタッフよって実施されます。

検診の目的は、まだ乳房の異常が小さすぎて触ってもわからず、治療が成功して完全回復の可能性が高いような、早い段階で乳がんを見つけることです。

● 検診日の流れ

乳がん検診所に到着すると、スタッフが詳細を確認し、乳房に異変がなかったか尋ねてきます。何か質問があれば聞いてください。

マンモグラフィはマンモグラファと呼ばれる医療スタッフの女性が行います。上半身裸になる必要がありますので、ワンピースよりスカートやズボンを履いて行った方が楽かもしれません。

まず、スタッフが流れを説明してくれます。その後、あなたの乳房をマンモグラフィ装置の上に置き、そっと、でもしっかりと乳房を平らにするためにプラスチックの板を下げます。これにより、乳房が動かなくなり、明瞭なX線画像が撮れるようになります。

通常、片方の乳房毎に、上からと横からの1枚づつ、計2枚のX線画像撮影を行います。X線撮影中、スタッフは間仕切りの後ろに下がります。撮影をするごとに何秒間かじっとしていないといけません。

ほとんどの女性がマンモグラフィを不快に感じたり、場合によっては痛みを感じたりします。しかし、明瞭なマンモグラフィ画像を撮影するために圧迫は必要です。不快かもしれませんが、すぐに終わります。

検診は1時間以内に終了し、マンモグラフィ自体は数分で終わります。

● その後の流れ

乳房のX線撮影後、マンモグラフィ画像に異常がないか確認が行われます。マンモグラフィの結果は、検診から2週間以内にあなたとあなたのかかりつけ医に送られます。第5章 乳がん検診の結果をお読みください。

検診中にすべての乳がんが見つかるわけではありません。乳がんは検診後から次の検診までの間に発生することもあります。検診を受診していても、自分の乳房の状態を把握し、普通でない変化があれば早期に発見してかかりつけ医に報告することが大切です。症状については、乳がんの症状について(原文ページ)をお読みください。

乳がん検診所への事前連絡が必要な場合

次の場合には、受診前に乳がん検診所に電話してください(連絡先の詳細は受診票に記載されています)。

• 体に障がいを持っているか、段差をのぼることが困難な場合。検診所が必要な手配をしてくれます。

• 豊胸手術をした場合。豊胸手術をした女性にとって、マンモグラフィはあまり効果的でない場合があります。これは、X線が埋め込まれたものの裏にある乳腺組織を写すことができないからです。通常、マンモグラフィを受けることは可能ですが、検診スタッフに事前にお知らせください。「豊胸手術と乳がん検診」NHSリーフフレット(原文)をお読みください。

・ 最近マンモグラフィを受けたか、妊娠中もしくは授乳中の場合。この場合、乳がん検診のタイミングを遅らせるようにアドバイスされるかもしれません。

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第5章 乳がん検診の結果

乳房のX線撮影後、マンモグラフィー画像に異常がないか確認が行われます。 25人に約1人の女性が再検査に呼ばれます。

再検査に呼ばれたからといって、必ず乳がんであるというわけではありません。最初のマンモグラフィ画像が不明瞭だったのかもしれません。

再検査に呼ばれた4人の女性のうち約1人が乳がんと診断されています。

受診後、2週間以内に乳がん検診の結果と通知書が届きます。結果はあなたのかかりつけ医にも送られます。

● ほとんどの女性は異常なしという結果を受け取ります

受診した100人の女性のうち約96人のマンモグラフィ画像はがんの徴候を示しません。これが異常なしの結果です。

ただ、マンモグラフィ後から次のマンモグラフィ受診までの間もがんが発生する場合があることを覚えておいてください。そのため、乳房に異変を感じたらすぐにかかりつけ医に相談してください。症状については、乳がんの症状について(原文ページ)をお読みください。

● 異常が見つかり、追加で検診が必要になる女性もいます

マンモグラフィ画像に異常が認められるので追加の検査が必要だと通知書に書かれている場合があります。100人の女性のうち約4人が検診後に再検査を受けるように言われます。

これら4人の女性のうち、がんが見つかるのは1人です。残りの3人はがんではなく、通常通り3年ごとに検診を受けることになります。

再検査に呼ばれたら乳房検査やマンモグラフィの追加撮影や超音波検査を受けることになるでしょう。また、乳房に針を刺して採取した小さなサンプルを顕微鏡で検査する生検を受けることになるかもしれません。検査結果は通常1週間以内に届きます。

● 結果を受け取る前に追加のマンモグラフィが必要な場合もまれにあります

技術的な問題というのは、マンモグラフィ画像が明瞭でなく読影できないことを意味します。この場合、乳房のより鮮明な画像を得るためにマンモグラフィの再撮影が必要になります。

● 乳がんに罹患していることが判明した場合

乳がんに罹患していることが判明した場合、そのがんが非侵襲性の場合と侵襲性の場合があります。

非浸潤性乳がん

検診で乳がんと診断された女性のおよそ5人に1人は非浸潤性がんです。これは、乳房にがん細胞があるものの、乳管内にのみ存在し、それ以上広がっていないことを意味します。これは非浸潤性乳管がん(DCIS)とも呼ばれます。

がん細胞が管の中にとどまる場合もありますが、将来的に周囲の乳房に広がる(浸潤する)場合もあります。

非浸潤性乳がんが周囲の乳房の中まで増殖するかどうかは医師も判別できません。

浸潤性乳がん

検診で乳がんと診断された女性の5人に約4人が浸潤性がんです。これは、乳管を超えて周囲の乳房に広がったがんです。ほとんどの浸潤侵襲性乳がんは、治療しないと体の他の部位に転移します。

浸潤がんと非浸潤乳がんの治療(原文ページ)を お読みください。

前回更新日:2015年7月1日
次の更新期限:2018年1月1日

*サイト注:上記は英国NHSのリーフレットです。日本の検診については、「科学的根拠に基づくがん検診推進のページ」(http://canscreen.ncc.go.jp/)をご参照ください。

翻訳担当者 関口百合

監修 林 正樹(血液・腫瘍内科/社会医療法人敬愛会中頭病院)

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原文掲載日 

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