術前化学療法後の米国トリネガ乳がん女性は全摘術を選択する傾向

術前化学療法歴のある米国人トリプルネガティブ乳がん女性は、欧州やアジアの女性と比較し、乳房温存部分切除術よりも乳房切除術を選択する可能性がはるかに高いことが、ダナファーバーがん研究所/ブリガム&ウィメンズ病院がんセンターの研究によって明らかになった。本研究結果は本日、2017年6月2~6日にシカゴで開催される米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会に先立ち電子版で発表された。

本研究では、国際ランダム化第3相臨床試験のBrighTNess試験に参加した女性604人が選択した手術について解析した。初期ステージがんの女性は、手術前に3種類の化学療法/分子標的療法のうち一種類を受けていた。このような「術前化学」療法は、手術前に腫瘍を縮小させることを目的とし、場合によっては、当初乳房切除術のみに適格であった女性に、その代わりとして乳房部分切除術を受けることができるという選択肢を与える。

「本研究におけるすべての患者がどちらかの手術を選択しましたが、乳房切除術を行ったのは米国人女性が53%であったのに対し、欧州やアジアの先進国の女性は33%でした」と、ダナファーバーがん研究所/ブリガム&ウィメンズ病院がんセンター腫瘍外科のDistinguished Chair、Mehra Golshan医師(FACS)は述べた。

さらにいっそう衝撃的なことに、「乳房切除術を行った米国人女性は、ベルリンまたはソウルのまったく同じ状況の女性に比べて、反対側の罹患していない乳房も切除すると決断する可能性が4倍でした」と、Golshan氏は述べた。同氏は本解析をASCO総会のセッションで発表予定である。「乳房切除術を選択し、かつBRCA遺伝子変異(乳がんになるリスクを高める)がなかった女性で、反対側の乳房を切除すると決断したのは、米国人女性では61%であったのに対し、欧州およびアジアの女性では14%でした」。

「このような決断の際に、米国人女性およびその治療チームは、欧州またはアジアの女性およびその治療チームとは違った選択をしています」とGolshan氏は付け加えた。

Golshan氏は、保険と並び社会的、外科的バイアスがこのような選択に影響を及ぼす可能性があることを指摘した(米国の保険団体は一般的に健康な乳房の切除を含めた手術に対し支払いをするが、他国では十分にサポートされていない可能性があるため)。

「BrighTNess臨床試験は、治療開始前に乳がん患者や外科医に遺伝子検査の結果を提供する、初めての第3相術前化学療法試験です」とGolshan氏は述べた。「しかし、本試験では、患者が決断した理由や外科医が提供した情報や推奨した治療法について調査していませんでした。乳がん手術におけるこのような複雑で層状の意思決定プロセスを評価するために、さらなる研究が必要です」。

翻訳担当者 生田亜以子

監修 尾崎由記範(臨床腫瘍科/虎の門病院)

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