高齢乳がん患者では放射線が少ないほど高い整容性満足度

放射線の減少はわずかな再発リスクと関連があった。

高齢の乳がん女性患者の集団ベースコホートで患者が報告した整容性を評価する最初の試験で、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らは、放射線が少ないほど長期的な整容性満足度の向上と関連があったことを明らかにした。

しかしながら、放射線の減少は、疾患のわずかな再発リスクの上昇とも関連があった。

2016年度サンアントニオ乳がんシンポジウムでのCameron W. Swanick 医師によるポスターセッションで発表されたこの知見は、高齢の患者とその主治医が治療について意思決定する際、重要な議論のポイントとして役立つはずである。

若年患者と同様に、高齢の早期乳がん女性患者にはしばしば多くの治療選択肢がある。乳腺腫瘍摘出術+全乳房照射(Lump + WBI)、乳腺腫瘍摘出術+近接照射療法(Lump + Brachy)、乳腺腫瘍摘出術単独療法(Lumpのみ)、放射線なしの乳房切除術(Mastのみ)および乳房切除術+放射線(Mast + RT)がある。

しかしながら、こうした治療選択肢と関連がある整容性や他の生活の質における転帰について、高齢患者集団で比較検討されたことはなかった。

「高齢の患者報告アウトカムに関する文献はほとんどありません。患者さんは過去の試験に登録されていなかったか、整容性満足度について尋ねられていなかったのです。

本試験では、女性患者さんが長期的な整容性満足度に対する理解をより深めるために調査をし、局所療法戦略ごとの満足度を比較したいと考えました」と放射線腫瘍学の研修医であるSwanick氏は言う。

本試験は2012年にBenjamin D. Smith医師より発表された研究に基づいており、同研究から、加速乳房部分照射(APBI)近接照射療法は、従来のWBIと比較して、後に乳房切除術を受ける確率の上昇、放射線関連毒性や術後合併症の増加に関連していることが分かっている。

「この知見にもかかわらず、近接照射療法の支持者は、患者さんが転帰に満足していると確信していました。

異なる方法論を採用することにより、患者さんの経験から学び、患者さんの志向を決定することが重要でした」と放射線腫瘍学准教授であるSmith氏は言う。

Swanick氏とSmith氏は、2009年に非転移性乳がんと診断された67歳以上の女性患者をあらかじめ特定するためメディケア請求を用いた。

登録女性の条件は、5つの治療選択肢のうち1つを受けたことがあり、2015年時点で生存していることであった。

このコホートから、患者1,650人(局所療法1つにつき330人)が無作為に選ばれた。

登録候補者には、乳がん患者の整容性満足度を評価する複数の有効な手段を用いてデザインされたアンケートが郵送された。

合計498人の女性患者(30%)が、アンケート調査に回答した。

年齢の中央値は73歳であった。

主要評価項目は、整容性満足度であった。

標準治療として最も広く受け入れられているLump + WBI群を参照群とすると、整容性満足度スコアはLump + Brachy群およびLump群で高かった。

乳房切除術の2群を見ると、Mast + RT群患者が申告した整容性転帰は、Lump + WBI群と比較して有意に不良であった。

このコホートでは、Lump + WBI群とMast群の間に差はなかった。

患者はまた、乳がんが再発した場合にも報告した。

Lump + WBI 群と比較して、Lump + Brachy群およびLump群の少ないが統計学的に有意な数の患者(6%)が再発ありと答えた。

過去の知見を踏まえて、研究者らはLump + Brachyの転帰が大変良好であったことに驚いたが、再発率が上昇することを指摘した。

これらの知見が示すように、全般的に、放射線照射が少ないほど、患者の長期的整容性満足度が高いと研究者らは言う。

「全乳房照射より身体に優しいが、近接照射療法より広い範囲に照射できる治療が必要です」とSmith氏は言う。

「これら2つの治療法の良いところをとる折衷策を示唆する手がかりが文献には多数あります。それはおそらく乳がん患者さんの多くにとって最適な方法です」。

その目標に到達するために、Smith氏は2週間~2週間半で行う腫瘍床周囲の広い面積を治療する外部照射療法の放射線研究に着手している。

「これらは患者さんと議論するための重要なデータです。なぜなら、女性患者さんの中には、高い整容性満足度とひきかえに局所再発リスクの上昇を受け入れる人もいると考えられるからです」。

研究者らは、高齢の乳がん患者向けの意思決定ツールを開発している。

Swanick氏およびSmith氏以外のMD アンダーソンの本試験の著者は、以下のとおり。Sharon Giordano医師、Xiudong Lei医学博士およびYing Xu医師(いずれも保健医療研究)、Yu Shen医学博士(生物統計学)、Susan K. Peterson医学博士およびNathan A. Goodwin氏(いずれも行動科学)、Kelly Hunt医師(乳腫瘍外科)、ならびにSimona F. Shaitelman医師(放射線腫瘍学)。
University of Michigan Health Systemの医学博士であるReshma Jagsi医師も、本試験の著者の一人である。

本試験はMDアンダーソンSurvivorship IRG Grantおよび米国放射線腫瘍学会(ASTRO)Comparative Effectiveness Research Grantの助成金を受けた。

翻訳担当者 太田奈津美

監修 小坂泰二郎(乳腺外科/順天堂大学附属練馬病院)、、

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