HR陽性HER2陰性早期乳がんに対する術前アベマシクリブ療法の第2相臨床試験が主要評価項目を達成

試験薬abemaciclib[アベマシクリブ]単剤またはアベマシクリブとアロマターゼ阻害薬アナストロゾールとの併用による術前療法が、アナストロゾール単剤療法よりも、ホルモン受容体(HR)陽性HER2陰性乳がん細胞中のKi67(細胞増殖のマーカー)レベルを低下させることが、neoMONARCH第2相臨床試験の結果から明らかになった。12月6日から10日まで開催された2016サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)で発表された。

「CDK4とCDK6を標的とする抗腫瘍薬は、HR陽性HER2陰性進行乳がんの治療薬としては大規模に研究が行われており、palbociclib[パルボシクリブ](商品名:Ibrance[アイブランス])はこのタイプの乳がんに対してすでに承認されています」とカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の内科学准教授でUCLAジョンソン総合がんセンター臨床研究ユニット医長のSara A. Hurvitz医師はいう。「そこでわれわれは、CDK4/6阻害薬アベマシクリブが、HR陽性HER2陰性早期乳がんに対して測定可能な生物学的効果をもたらすかどうかを調べる試験を行いました」。

「その結果、アベマシクリブが、HR陽性HER2陰性乳がん細胞のKi67レベルを低下させることがわかりました」とHurvitz氏は続けた。「Ki67レベルの低下は細胞増殖の低下を意味しており、他の試験では予後の改善との関連が認められています。したがって、われわれの結果は、CDK4/6阻害薬が早期乳がん患者に有効である可能性を示しています。早期乳がんに対するCDK4/6阻害薬の臨床的な評価をより確実なものにしていく必要があります」。

手術前に行われる薬物療法は術前化学療法とよばれ、その目的は、腫瘍を小さくすることや、乳房の外に転移している可能性があるがん細胞を根絶することだとHurvitz氏は説明した。HR陽性HER2陰性早期乳がん患者に対する術前療法としては、一般的には化学療法、あるいはホルモン療法が行われる、と同氏はいう。

この試験では、閉経後のHR陽性HER2陰性早期乳がん患者223人を、アナストロゾール単剤、アベマシクリブ単剤、またはアナストロゾール+ アベマシクリブ併用の各術前化学療法群にランダムに割付け、治療を2週間行った。その後、全員にアナストロゾールとアベマシクリブを14週間投与してから、手術を行った。主要評価項目はベースラインから2週間後までのKi67レベルの変化で、治療開始から2週間時点の前後でコア生検を行い各検体のKi67を調べた。

その結果、乳がん細胞中のKi67レベルが有意に低下したのは、単剤またはアナストロゾールと併用してアベマシクリブの投与を受けた患者で107人、それに対してアナストロゾール単剤の投与を受けた患者では54人であり、本試験は主要評価項目を達成した。

さらに、アベマシクリブ+アナストロゾール併用群ではほとんどの患者の腫瘍が縮小したことが、臨床および放射線学的評価で明らかになった。

「この試験の結果が肯定的で有望であるとしても、概念実証(proof-of-concept)試験なので標準治療が変わることはありません」とHurvitz氏はいう。「治療期間が比較的短く、病理学的奏効率を確実に評価することも、患者を追跡調査して長期的なアウトカムを評価することもできていません。しかし、得られたデータは重要で、早期乳がんに対するこの薬剤のさらなる評価の必要性を裏付けています」。

本試験はEli Lilly and Company社から資金提供を受けた。Hurvitz氏は研究費と旅費を、Amgen、Bayer、Biomarin、Boehringer Ingelheim、Dignitana、Eli Lilly and Company、Genentech、GSK、Medivation、Merrimack、Novartis、OBI Pharma、Pfizer、Puma BiotechnologyおよびRoche各社から受けた。

翻訳担当者 粟木 瑞穂

監修 尾崎由記範(腫瘍内科・乳腺/虎の門病院 臨床腫瘍科)

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