HR、HER2陽性乳癌術前療法にアロマターゼ阻害剤の利益なし
ドセタキセル、カルボプラチン、トラスツズマブ(ハーセプチン)、およびペルツズマブ(パージェタ)を用いた術前治療にアロマターゼ阻害剤を追加しても、ホルモン受容体(HR)陽性HER2陽性乳がん患者の病理学的完全奏効(pCR)率は有意に増減しないことが、 12月6〜10日に開催された2016年サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)で発表された第3相臨床試験のデータで明らかになった。
「大きく、手術可能な乳房腫瘍を有する、またはがんが腋窩リンパ節に転移した徴候を有するHR陽性HER2陽性乳がん患者の多くに、ドセタキセル、カルボプラチン、トラスツズマブおよびペルツズマブを術前投与します。これは、術前化学療法と呼ばれる治療法です 」と、ヒューストンにあるベイラー医科大学のDan L Duncan 総合がんセンターの一部であるレスター・アンド・スー・スミス・ブレスト・センターの准教授および医長のMothaffar F. Rimawi医師は述べた。 「しかし、これらの薬剤の多くは、特に患者の腫瘍がHR陽性の場合には、至適な奏効を示しません。 前臨床および臨床データを受け、このような患者群においてこの術前化学療法レジメンにアロマターゼ阻害剤を追加することで、病理学的完全奏効(pCR)を示す、つまり、乳房組織に検出可能な浸潤がんや手術中に取り除いたリンパ節転移が残存していない患者の割合が増加するかどうかの試験を行うことになりました」。
ドセタキセル、カルボプラチン、トラスツズマブ、ペルツズマブにアロマターゼ阻害剤を併用投与する群に無作為に割り付けられた308人の患者のうち、71人(46.1%)が病理学的完全奏効(pCR)を示した。アロマターゼ阻害剤を併用せず、 ドセタキセル、カルボプラチン、トラスツズマブ、ペルツズマブのみを投与する群に無作為に割り付けられた154人の患者のうち63人がpCR(40.9%)を示した。
「本研究のアロマターゼ阻害剤併用群において、pCRを示した患者数がわずかに増加しましたが、この増加は統計的に有意ではありませんでした。 化学療法とホルモン療法には拮抗作用があるかもしれないという懸念があったのですが、そのような作用は認められませんでした」と、Rimawi医師は述べた。 「現時点では、HR陽性HER2陽性乳がん患者に対する標準治療の術前化学療法レジメンの変更は推奨できませんが、この併用療法は、安全で忍容性が良好でした。 われわれは、術前化学療法にアロマターゼ阻害剤を加えることで利益を示す可能性のある患者集団があるかどうかを調査するために、患者の組織検体をさらに分析しています」。
「最終的に、できる限り多くの患者の治療を問題のない範囲で減らしていきたいと考えています」と、Rimawi医師は続けた。「 どの患者がより多くの治療を必要とし、どの患者が治療を減らすことができるかを明らかにすることが重要です。 本試験の相関研究やわれわれの他の研究の成果により、そういった方向に向かうための重要な情報を得ることができるでしょう」。
米国で診断された乳がん症例の約10%が、HR陽性かつHER2陽性である。
Rimawi医師らは、ドセタキセル、カルボプラチン、トラスツズマブ、ペルツズマブによる術前化学療法にアロマターゼ阻害剤を併用する群としない群に、手術可能な局所進行HR陽性HER2陽性乳がん患者315人を1対1で無作為に割り付けた。アロマターゼ阻害剤療法に無作為に割り付けられた閉経前女性は、ゴセレリンまたは同等の薬剤を用いた卵巣機能抑制療法も受けた。
グレード3またはグレード4の有害事象が認められた患者の割合は、アロマターゼ阻害剤を加えた術前化学療法群の患者では同等であった。
本研究は、米国国立衛生研究所およびGenentech社から資金提供を受けた。 Rimawi医師は、利益相反がないことを宣言している。
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