リボシクリブがHER2陰性乳がんのFDA画期的治療薬に

ホルモン受容体陽性/HER2陰性進行性乳がんに対する一次治療薬として検討

ノバルティス社は2016年8月3日、ホルモン受容体陽性/ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)陰性の進行性または転移性乳がんの治療薬であり、レトロゾールと併用投与されるLEE011(ribociclib[リボシクリブ])について、米国食品医薬品局(FDA)が「画期的治療薬」に指定したと発表した。LEE011は、選択的サイクリン依存性キナーゼ(CDK4/6)阻害剤である。

今回の「画期的治療薬」指定は、進行性疾患に対して治療を受けていない閉経後女性を対象にLEE011をレトロゾールと併用投与した第3相MONALEESA-2試験の良好な成績に主に基づいている。MONALEESA-2試験は、事前に計画された中間解析において、臨床的に意味のある無増悪生存率(PFS)の改善という主要評価項目を達成した。本試験の結果は、今後の医学学会で発表される予定であり、本適応症での使用について欧米やその他の国々での規制議論の的となるであろう。

初期乳がん患者のうち最大で3分の1が、後に転移性疾患を発症する。進行性乳がん女性の生存率は、初期乳がん女性よりも低い。5年相対生存率は、ステージIII乳がんでは約72%である一方、転移性ステージIV乳がんでは約22%である。

FDAによると「画期的治療薬」指定の目的は、重篤または生命を脅かす疾患を治療できる可能性のある新薬について、臨床的に重要な評価項目がひとつでも既存の治療薬より実質的な改善を認めている場合、開発および審査を迅速に行うことである。この指定には、ファスト・トラック・プログラムの全項目、有効な薬剤開発プログラムに対するより集約的なFDAガイダンスが含まれている。

LEE011は、非臨床モデルを用いた試験に供されてきたが、現在、MONALEESA(Mammary Oncology Assessment of LEE011’s Efficacy and Safety)臨床試験プログラムの一部として、内分泌系に作用する薬剤との併用で評価されている。LEE011は現時点でいずれの適応症に対しても販売を承認されていない。

MONALEESA-2試験は、第3相ランダム化二重盲検プラセボ対照多施設共同世界的登録試験であり、進行性乳がんに対する治療歴のないホルモン受容体陽性/HER2陰性進行性乳がんの閉経後女性を対象に、LEE011をレトロゾールと併用投与した際の安全性および有効性をレトロゾール単剤投与と比較して評価する。MONALEESA-2試験は、事前に計画された中間解析において、臨床的に意味のあるPFSの改善という主要評価項目を達成し、続けて全生存率を評価している。

MONALEESA-3試験は、治療歴がないかまたは一度内分泌療法を最大量受けたことのあるホルモン受容体陽性/HER2陰性進行性乳がんの男性および閉経後女性を対象に、LEE011とフルベストラントとの併用投与をフルベストラント単剤投与と比較して評価する試験である。MONALEESA-3試験の組み入れは完了している。

MONALEESA-7試験は、内分泌療法を受けたことのないホルモン受容体陽性/HER2陰性進行性乳がんの閉経前女性を対象に、LEE011と内分泌療法およびゴセレリンとの併用投与を、内分泌療法にゴセレリンのみの投与と比較して評価する試験である。MONALEESA-7試験の組み入れは完了しており、本試験は、進行性乳がんの閉経前/閉経周辺期女性にのみ注目した唯一の第3相試験である。

LEE011は、Astex Pharmaceuticals社との共同研究のもと、ノバルティス・バイオメディカル研究所が開発した。

ノバルティス社の報道発表には、先進的な報告が含まれている。

翻訳担当者 仲里芳子

監修 廣田 裕(呼吸器外科、腫瘍学/とみます外科プライマリーケアクリニック)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

乳がんに関連する記事

乳がんリスク評価ツールの仕組みの画像

乳がんリスク評価ツールの仕組み

2024年3月、女優のオリヴィア・マン(Olivia Munn)が乳がんと診断されたことを発表した。Munnさんはまた、がんリスク評価ツールが彼女の診断に至る過程で果たした役割を強調し...
ハイリスク遺伝子を有する若年乳がんサバイバーの生殖補助医療は安全の画像

ハイリスク遺伝子を有する若年乳がんサバイバーの生殖補助医療は安全

ハイリスク遺伝子があり、乳がん後に妊娠した若い女性を対象とした初の世界的研究によれば、生殖補助医療(ART)は安全であり、乳がん再発リスクは上昇しないハイリスク遺伝子があり、乳...
【ASCO2024年次総会】T-DXd(エンハーツ)がホルモン療法歴のある乳がん患者の無増悪生存期間を有意に改善の画像

【ASCO2024年次総会】T-DXd(エンハーツ)がホルモン療法歴のある乳がん患者の無増悪生存期間を有意に改善

ASCOの見解(引用)「抗体薬物複合体(ADC)は、乳がん治療において有望で有益な分野であり、治療パラダイムにおける役割はますます大きくなっています。トラスツズマブ デルクステ...
【ASCO2024年次総会】若年乳がん患者のほとんどが治療後に妊娠・出産可能の画像

【ASCO2024年次総会】若年乳がん患者のほとんどが治療後に妊娠・出産可能

ASCOの見解(引用)「乳がんの治療後も、妊娠や出産が可能であるだけでなく安全でもあることが、データが進化するにつれて次々と証明されてきています。この研究では、妊娠を試みた乳が...