進行性乳癌臨床試験でHER2陽性の患者を登録中

キャンサーコンサルタンツ

第3相EMILIA臨床試験は、治療歴のあるHER2陽性の局所進行性あるいは転移性乳癌患者を登録中である。本試験では、治験薬であるトラスツズマブ・エムタンシン(T-DM1)を評価している。T-DM1は、HER2標的薬ハーセプチン(トラスツズマブ)と化学療法薬(DM1)を結合させたものである。T-DM1はハーセプチンとDM1をHER2陽性細胞に直接送り込む。

乳癌の約20~25%にHER2タンパクの過剰発現(多すぎる生産)が認められる。ハーセプチンなどのHER2標的療法により、HER2陽性乳癌患者の転帰は著しく改善したが、研究者達は引き続き新しい治療法を探索調査している。この研究で重要な焦点となるのは、HER2標的療法を受けた後に進行(悪化)した癌に対する治療法である。

T-DM1は、HER2陽性乳癌の前治療歴が複数回ある患者を対象とした第2相臨床試験で有意な結果を示した(患者の26%に腫瘍縮小が認められた¹)。EMILIA臨床試験は、これらの所見に基づき、より多くの患者を対象として、T-DM1と標準治療を比較するものである。本試験への参加は、タキサン系薬剤とハーセプチン併用による前治療歴があるHER2陽性乳癌患者に限られる。本試験に参加する患者は、T-DM1群またはゼローダ(カペシタビン)+タイケルブ(ラパチニブ)群に割り付けられる。ゼローダとタイケルブは、転移性乳癌の治療薬として承認されている。本試験にプラセボ群はない。

本試験は、37州にわたる107カ所の病院で実施されている。2011年4月の時点では、予定患者980人のうちすでに700人近くが登録されている。適格基準の詳細についてはインターネットで公開されている(www.emiliaclinicaltrial.com)。臨床試験への参加を希望する方は、リスクとベネフィットについて主治医に相談してください。

参考文献:
1 Burris HA, Rugo HS, Vukelja SJ et al. Phase II study of the antibody drug conjugate trastuzumab-DM1 for the treatment of human epidermal growth factor receptor 2 (HER2) – positive breast cancer after prior HER2-directed therapy. Journal of Clinical Oncology. 2011;29:398-405.


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翻訳担当者 森島 由希

監修 辻村 信一 (獣医学/農学博士、メディカルライター)

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