DocetaxelのFDA承認

商品名: Taxotere[タキソテール]

頭頸部がんへの承認2006年10月2日

胃がんへの承認2006年3月22日

乳がんへの承認 2004年8月18日

前立腺がんへの承認2004年5月19日

非小細胞肺がんへの承認1999年12月23日

臨床試験情報、安全性、投与量、薬物間の相互作用および禁忌などの全処方情報Full prescribing informationが参照できます。


頭頸部がん

2006年10月17日、FDAは、ドセタキセル(タキソテール®注射用濃縮液、サノフィ・アベンティス社製)を、シスプラチンおよびフルオロウラシルとの併用において、切除不能の局所進行頭頸部扁平上皮がん(SCCHN)患者への導入療法に使用することを承認しました。

ドセタキセルをSCCHN患者への導入化学療法に使用する際の安全性および有効性が、多施設共同非盲検ランダム化試験によって評価されました。同試験では、未治療の切除不能局所進行SCCHNを有し、WHOパフォーマンス・ステータス(PS)が0または1の患者358人が、1日目にドセタキセル75mg/m2、その後シスプラチン75mg/m2を投与、1~5日目に5-フルオロウラシル750mg/m2/日を持続静注する療法(TPF群)、または1日目にシスプラチン100mg/m2、1~5日目に5-フルオロウラシル1000mg/m2/日を持続静注する療法(PF群)のいずれかを受けました。

これらの療法は3週間ごとに4サイクル行われました。化学療法の4〜7週間後に、進行がみられなかった患者は放射線療法を受けました。放射線療法は通常照射法、または加速/過分割照射法で行われました。化学療法後、放射線療法の前または後に、外科的切除を施行してもよいとされました。

同試験の主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)とし、無作為割付日から増悪判定日まで、またはあらゆる原因による死亡日までの、いずれか短い方の期間と定義されました。PFSの中央値は、TPF群(11.4ヵ月)の方がPF群(8.3ヵ月)より有意に長くなりました(p=0.0077)[ハザード比0.71(0.56, 0.91)]。

全生存期間の中央値は、TPF群(18.6ヵ月)の方がPF群(14.2ヵ月)より有意に長くなりました[ハザード比0.71(0.56, 0.90)]。

TPF群で最もよくみられた有害事象は次のとおりです。

好中球減少(93%)

貧血(89%)

脱毛(81%)

口内炎/食道炎(55%)

悪心(47%)

TPF群で5%以上の頻度でみられたグレード3または4の有害事象は次のとおりです。

好中球減少(76%)

脱毛(11%)

感染(9%)

貧血(9%)

体重減少(7%)

血小板減少(5%)

TPF群患者の約5%は発熱性好中球減少症、14%は好中球減少を伴う感染が認められました。TPF群はPF群に比べ、脱毛、好中球減少、下痢、感覚神経障害、好中球減少を伴う感染、体液貯留、味覚異常または嗅覚異常が、より高い頻度でみられました。

今回承認されたSCCHNを適応症とする、ドセタキセルの推奨用量は、75mg/m2で、1日目に1時間の静脈点滴で投与したあと、シスプラチン75mg/m2を1時間かけて静注投与し、その後、1~5日目にフルオロウラシル750mg/m2を24時間持続点滴で投与するというものです。治療は3週間ごとに4サイクル行ないます。

2007年9月28日、FDAはドセタキセルを、シスプラチンとフルオラシルとの併用で、局所進行頭頸部扁平上皮がん(SCCHN)患者への導入療法として承認しました。

ドセタキセルを上記に適用する際の安全性および有効性が、多施設共同、非盲検、ランダム化臨床試験によって評価されました。同試験では、未治療の局所進行SCCHNを有し、PS(全身状態スコア)が0または1の患者501名が、1日目にドセタキセル75 mg/m2、その後シスプラチン100mg//m2を投与、その後1~4日目に5-フルオロウラシル1000mg/m2を持続静注する療法(TPF療法)、または1日目にシスプラチン100mg/m2、その後1~5日目に5-フルオロウラシル1000mg/m2を持続静注する療法(PF療法)のいずれかを受けました。

これらの療法を3週間ごとに3サイクル行いました。両方の治療群で、導入療法後に進行がみられなかった患者は、7週間の化学放射線療法(CRT)を受けました。放射線療法の期間中、カルボプラチンAUC1.5を、1時間の静注で最大7回投与されました。化学放射線療法の完了後、外科手術はいつ検討してもよいとされました。

全生存期間は、PF療法と比較して、ドセタキセルを含む療法で有意に長くなりました(ログランク検定、p=0.0058)。生存期間の中央値はTPF療法群が70.6ヶ月なのに対し、PF療法群では30.1ヶ月でした(ハザード比0.7、95%信頼区間:0.54, 0.90)。

TPF療法群で最もよくみられた有害事象(>40%、すべてのグレードで)は、好中球減少、貧血、悪心、脱毛、口内炎、倦怠感、嘔吐、下痢、食欲不振でした。感染症をともなう、あるいはともなわない発熱性好中球減少は、TPF療法群で5%以上多く起こりました。TPF療法群で5%以上の頻度でみられたグレード3または4の有害事象は、好中球減少、感染、口内炎、悪心、食道炎/嚥下障害/嚥下痛、食欲不振、嘔吐、貧血でした。好中球減少、脱毛、悪心、食欲不振は、TPF療法群でより頻繁にみられました。

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水向 絢子 訳 /丸野有利子一部更新 訳
島村 芳樹(薬学) 監修 
須藤智久(国立がん研究センター 東病院 臨床開発センター・臨床薬学修士)監修 
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胃がん

2006年3月22日、米国食品医薬品局(FDA)はドセタキセル(タキソテールR注射用濃縮液、サノフィ・アベンティス社製)を、シスプラチンとフルオロウラシルとの併用で、進行がんに対する化学療法を以前に受けていない、胃食道接合部の腺がんを含む進行性胃腺がん患者に対する治療薬として承認しました。

この適応症の承認は、進行した疾患に対する化学療法を以前に受けていない、胃食道接合部腺がんを含む局所進行性または転移性の胃腺がん患者457人が参加した多施設共同、非盲検化、比較臨床試験の結果に基づいています。患者は、以下の2つの治療群のいずれかに無作為に割り付けられました。

・TCF群(1日目にドセタキセル75mg/m2とシスプラチン75mg/m2の併用投与、3週間ごとにフルオロウラシル750mg/m2/日を5日間持続静注)
・CF群(1日目にシスプラチン100mg/m2投与、4週間ごとにフルオロウラシル1000mg/m2/日を5日間持続静注)
445人の患者が治療を受けました(TCF群=221名、CF群=224名)。

無増悪期間(TTP)がこの試験の主要評価項目で、ランダム化から疾患の増悪までの期間,または最後の評価可能な腫瘍評価から12週間以内、またはランダム化以降評価可能な腫瘍検査ができなかった患者では最初の治療薬投与から12週間以内におけるあらゆる原因による死亡までの期間と定義されました。

無増悪期間(TTP)に対するハザード比(HR)は1.47(CF群/TCF群、95%信頼区間:1.19-1.83)で、TCF群においてTTP有意な延長を認めました。TCF群のTTP中央値は5.6ヶ月で、CF群では3.7ヶ月でした。

全生存期間は、TCF群で有意に長く(p=0.02)、HRは1.29(95%信頼区間:1.04-1.61)でした。生存期間中央値は、TCF群で9.2ヶ月、CF群で8.6ヶ月でした。

CF群の患者に比べ、TCF群の患者の方に多く、好中球減少症、発熱、感染症、発熱性好中球減少症、好中球減少性感染、アレルギー反応、体液貯留または末梢浮腫、感覚神経毒性、めまい、脱毛、発疹、爪の異変、下痢、食道炎/嚥下障害/嚥下痛、胃腸痛(胃腸痙攣)、流涙がみられました。

TCF群の患者の82%がグレード3か4の好中球減少症を発症し、32%が発熱性好中球減少症または好中球減少性感染症を発症しました。治療中止の原因で最も多かったのは、胃腸毒性、インフルエンザ様の症状、感覚神経毒性でした。CF群の患者では、血小板減少症、嘔吐、食欲減退、便秘、聴覚の変調が多くみられました。

胃がんに対する推奨用量は、ドセタキセルを1時間かけて75mg/m2投与した後、1から3時間かけてシスプラチンを75mg/m2投与し(共に1日目のみ)、シスプラチン投与後から5日間の24時間持続静注でフルオロウラシルを1日750mg/m2投与するものです。この治療が3週間ごとに繰り返されます。

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Oonishi 訳
瀬戸山修 監修 
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乳がん

2004年8月18日、米国食品医薬品局はdocetaxel(Taxotere、AventisPharmaceuticals,Inc.の商標)注射液を、手術可能な腋窩リンパ節転移陽性乳がんの女性の術後補助療法として、ドキソルビシンとシクロホスファミドとの併用に対して承認しました。
1491人の手術可能な腋窩リンパ節転移陽性乳がんの女性が多国間、多施設共同、無作為化比較対照臨床試験(TAX316)に登録されました。被験者は腋窩リンパ節(1~3個、4個以上)転移陽性数に応じて層別され、いずれかの次のような補助療法を受けるよう無作為に割り付けられました。すなわち、被験者の一方はドキソルビシン50mg/m2とシクロホスファミド500 mg//m2の投与1時間後にdocetaxel 75mg/m2を投与され(TAC療法を受けた群)、もう一方は、フルオロウラシル500 mg/m2とシクロホスファミド500 mg/m2の投与1時間後にドキソルビシン50mg/m2を投与されました(FAC療法を受けた群)。双方の療法は3週間毎6サイクル実施されました。この化学療法の最後のサイクル終了後、エストロゲン・レセプター陽性、及び、又は、プロステゲン・レセプター陽性の被験者はその後最長5年間タモキシフェンを20mg/日、投与されました。
主要評価項目である無病生存期間(DFS)は、局所、及び、遠隔再発、対側乳がん、及び、死因を問わず死亡するまでの期間などを意味します。追跡期間中央値55ヶ月目での、2度目の中間解析の結果によると、TAC療法を受けた群はFAC療法を受けた群よりも無病生存期間が有意に延長し、総合的に25.7%の再発のリスクの減少がみられました(hazard ratio=0.74; 2-sided 95% CI=0.60,0.92, stratified log-rank p=0.0047)。中間解析の時点では219例の死亡があり、その死亡例に基づけば、FAC療法を受けた群よりもTAC療法を受けた群の方が全生存期間は延長しました(hazard ratio=0.69; 2-sided 95% CI=0.53,0.90) 。生存期間のデータが十分得られた時点で更に解析が行われるでしょう。
TAC療法を受けた群は、FAC療法を受けた群に比べて、貧血、grade3よりも重度の好中球減少、口内炎、無月経、感染症によらない発熱、感覚過敏症、末梢の浮腫、知覚神経障害、及び、皮膚の障害の増加がみられました。副作用が顕著であったにもかかわらず、被験者の多数は療法をやめませんでした。他のアントラサイクリン/シクロホスファミドを含む療法を受けた群と同様、TAC療法を受けた群には、白血病(0.4%)及び、鬱血性心不全(1.6%)を含む、長期にわたる重度の副作用がみられました。

手術可能な腋窩リンパ節転移陽性乳がんの女性の術後補助療法で承認されたdocetaxel投与量はドキソルビシン50mg/m2とシクロホスファミド500 mg/m2の投与1時間後に75 mg/m2で、3週間毎に6サイクルです。

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有田香名美 訳
平 栄(放射線腫瘍科)監修 
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前立腺がん

2004年5月19日、FDAは転移性アンドロゲン非依存性(耐ホルモン性)前立腺がんの治療に、注射液ドセタキセル(アベンティス・ファーマ社製造タキソテール®)をプレドニゾンと併用での使用を承認しました。
安全性及び有効性は、TAX317(転移性、耐ホルモン性前立腺がん患者の治療におけるタキソテールとプレドニゾン使用の化学療法を評価するための、無作為、多施設共同、国際的規模の臨床試験)に示されました。被験者1,006人は以下の3治療群のいずれかに無作為に割り付けられました。
ミトキサントロン+プレドニゾン(MTX+P)
週毎のタキソテール(TXT qw)+プレドニゾン
3週間毎のタキソテール(TXT q3w)+プレドニゾン
効果の主要評価項目は全生存期間としました。TXT q3w+プレドニゾン治療群ではMTX+P群よりも統計上有意な延命効果が見られました(平均生存期間18.9ヵ月対16.5ヵ月、p=0.0094)。TXT qw+プレドニゾン群では、対照群と比べ総じて延命効果は見られませんでした。
有害事象は貧血、好中球減少症、感染症、嘔気、嘔吐、食欲不振、疲労等でした。MTX+P治療群よりもTXT q3w治療群に多く見られた有害事象は、アレルギー反応、体液貯留、感覚性神経障害、脱毛、爪の変化、下痢、口内炎等でした。

本適応症につき認可された用量は、3週間毎の第1日目にドセタキセル75mg/m2を1時間静注と、プレドニゾン5mgの経口投与を毎日2回、これを10サイクルです。

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Chachan 訳
林 正樹(血液・腫瘍科)監修 
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非小細胞肺がん

1999年12月23日、米国食品医薬品局は、過去にプラチナベース化学療法が奏効しなかった局所進行あるいは転移性の非小細胞肺がん患者の治療薬として、注射液ドセタキセル(商標名タキソテール、アベンティスファーマ社製)を承認しました。
2002年11月27日、米国食品医薬品局は、切除不能で化学療法歴のない局所進行あるいは転移性の非小細胞肺がん患者の治療薬として、シスプラチンとの併用において注射液ドセタキセルを承認しました。

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宮本満里 訳
林 正樹(血液・腫瘍内科/社会医療法人敬愛会中頭病院)監修 
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この薬剤情報のサマリーは、FDA抗腫瘍薬製品室長のRichard Pazdur医師により作成されています。米国食品医薬品局(FDA)とは米国保健社会福祉省(HHS)の一部門で、新薬その他の製品の安全性と有効性を確保するための機関です。 (FDA:医薬品・医療機器の承認方法の理解(原文)を参照。
FDAの使命は、安全かつ有効な製品の迅速な市場流通を促し、流通後も継続的に製品の安全性を監視することによって、国民の健康を守り、推進することです。

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