両側乳房切除を選択した女性の生活の質は大きくは向上していない
デューク大学医療センター ニュースリリース
ノースカロライナ州ダーラム―両側乳房切除は、片側のみの乳がん女性の死亡率減少にはほとんど影響がないにも関わらず、同切除を選択する女性の数が増加している。
この傾向を受け、デュークがん研究所の研究者らは、両側の乳房を切除する決断は、寿命が伸びないとしても、女性の生活の質に良い影響を与えるのかどうかを問うた。
3月7日にJournal of Clinical Oncology電子版で報告された彼らの研究によると、生活の質が改善されたことを支持するエビデンスはほとんどみられなかった。
予防的対側乳房切除は、乳房の外観や感触の点において、女性にとってわずかに高い満足感を得られたが、これは主に乳房切除のあとに再建術を実施した女性においてのことである。
「われわれの解析では、予防的対側乳房切除を受けた女性は、つまり、自信を持つことができる、情緒的に健康である、自分のからだを受け入れているなどの心理的・社会的観点において、わずかながらに高い満足感を得ています。しかし、予防的対側乳房切除術を受けた女性とそうでない女性とのあいだでの上記の差は極めて小さく、時間とともに縮小しています。心理的・社会的満足感は、両群において増加が続いており、それは治療後10年を超えても続いています」と、統括著者であり、デュークがん研究所の乳腺外科部長であるShelley Hwang医師は述べた。
Hwang医師らは、研究者が乳がん調査への参加に積極的な貢献度の高い患者グループから試験参加者を登録し、Dr. Susan Love Research FoundationのArmy of Womenプログラムに参加している4000人近くの女性を調査した。女性は全員、片側もしくは両側の切除術を受けた経験があった。
研究員は、よく検証された患者報告型ツールであるBREAST-Qを使用し、心理的・社会的、身体的、性的満足感を測定した。また、乳房の釣り合い、見かけ、感覚、ブラジャーのフィット感、衣服の内・外側での見え方に焦点を当て、乳房の満足度を評価した。
予防的対側乳房切除を選択した女性は、全体的に若く、収入が高く、疾患が早期ステージであった。これらとその他の要因を調整したうえで、予防的対側乳房切除術群は、片側切除群と比較し、乳房の満足度がわずかに高いことが分かった。
しかし、予防的対側乳房切除より重要であったのは再建であり、生活の質に大きな影響を与えた。再建は、予防的対側乳房切除よりも明らかに高い心理的・社会的満足感、乳房の満足度、および性的満足感をもたらしていた。
Hwang医師は次のように述べた。「女性らは、予防的対側乳房切除術後により一層幸せになると想像していますが、実際の同手術を受けた患者の経験は、片側切除術を受けた患者の経験と大差はないことがわかりました。予防的対側乳房切除術は、乳房再建のように大きな生活の質の向上をもたらすとは解釈できないとみられます」。
今回の結果は、多くの場合がんの再発を恐れるため、また、美容上の理由からも予防的対側乳房切除術を選択する女性が増加しているときに、臨床判断を助けるのに役立つ補助的な見識を提供していると、Hwang医師は述べた。
「片側乳がんのために乳房切除を実施した女性における予防的対側乳房切除術の実施割合は、1998年から2011年までに6倍近くまで増加しており、いまや全米で11%に迫っています」とHwang医師は述べた。
この傾向は、早期ステージの片側乳がんで、遺伝的危険因子のない若い女性が大部分を占めているとHwang医師は述べている。これらの多くの女性が、実際は全切除ではなく乳房温存術のほうが望ましかった可能性がある。
Hwang医師は次のように述べた。「今回の研究は、われわれの多くが懸念していること、すなわち、予防的対側乳房切除は女性たちが期待するほど多くの利益をもたらしていないということを裏づけています。遺伝子変異によって反対側の乳房に新たながんが発症するリスクが著しく増加しないかぎり、予防的対側乳房切除は寿命を延ばすことはありませんし、われわれの研究では、生活の質は大きく向上しないことを示しています」。
Hwang医師は、女性にとって、向き合う選択肢のリスクと利益を明確に理解することが重要であると述べている。
「治療の決断で長期間の満足を得るのに重要なことは、すべての選択肢を検討し、それぞれの利益・不利益となる点を認識することです。われわれは今後も、患者様に正確で効果的なこういった利点・不利点を伝えることに全力を尽くす必要があります」とHwang医師は述べた。
Hwang医師の他の共著者は以下のとおりである。 Study authors from Duke include Tracie D. Locklear, Christel N. Rushing, Greg Samsa, Amy P. Abernethy and Terry Hyslop, along with Dunya M. Atisha of the University of South Florida.
Plastic Surgery Foundationが研究支援を行った。
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