乳がん検診 臨床サマリー(2009)
米国予防医学専門委員会(USPSTF)
乳がん:検診
2009年11月
米国予防医学専門委員会(USPSTF)が作成した推奨は、米国政府から独立しており、米国医療研究品質局または米国保健社会福祉省の公式見解と解釈すべきではない。
目次
米国予防医学専門委員会推奨2009の臨床サマリー*
本文書は、乳がん検診に関する米国予防医学専門委員会の推奨2009のサマリーである。プライマリケア医の利用を目的とし、Annals of Internal Medicine誌2009年11月17日号(Ann Intern Med 2009;151:716-726.)で初めて公表された。本サマリーは、USPSTFによる2009年12月の推奨の表現の改訂を反映している。
マンモグラフィを用いた乳がん検診
対象 | 40~49歳の女性 | 50~74歳の女性 | 75歳以上の女性 |
推奨事項 | 2年に1回の検診を受け始めることは、患者の状況や価値観に基づき個人毎に判 断 | 2年に1回の検診 | 推奨なし |
グレード:C | グレード:B | グレード:I(証拠不十分) | |
リスク評価 | 本推奨は、既知の遺伝子変異または胸部への放射線照射歴によって乳がんのリスクが高まっていない40歳以上の女性を対象とする。加齢は、ほとんどの女性にとって最も重要な危険因子である。 | ||
検診 | マンモグラフィの規格統一により、質の改善に繋がっている。患者へは、下記に記載された、マンモグラフィ品質規格法で保証された施設を紹介する。 Mammography Facilities | ||
検診を受ける時期 | 2年に1回の検診が最適であると、証拠により示されている。2年に1回というスケジュールによって、1年に1回の検診の利益をほとんど保ったまま不利益はほぼ半分に減るが、間隔がさらに長くなると利益が減る可能性がある。 | ||
不利益と利益のバランス | マンモグラフィを用いた検診によって乳がんの死亡率が減るという有力な証拠があり、若年女性よりも50~74歳の女性で絶対的減少がより大きい。 検診による不利益には、がんでない女性の精神的苦痛、追加の通院、画像診断、生検、偽陽性の検診結果による不便、不必要な治療による害、放射線被爆などがある。不利益は、各年齢群で中程度に認められる。 偽陽性の結果は、若年女性において懸念がより大きい。 検診を受けなかった場合には生涯のうちに臨床的に明らかになることのなかったがんの治療(過剰診断)は、加齢に伴い深刻化する。 | ||
推奨なしの根拠(I声明) | 75歳以上の女性では、利益に関する証拠が不足している。 | ||
関連のあるUSPSTF推奨 | 乳がんの遺伝的感受性に対する検診や、乳がんの化学的予防についてのUSPSTF推奨は、下記で入手可能である。 http://www.uspreventiveservicestaskforce.org. |
これらの推奨グレード、推奨声明全文、関連文書を作成するにあたり、システマティックレビューの証拠のサマリーについては下記を参照。
http://www.uspreventiveservicestaskforce.org.
マンモグラフィ以外の方法を用いた乳がん検診
対象 | 40歳以上の女性 | |||
検診方法 | デジタル・マンモグラフィ | 磁気共鳴画像法(MRI) | 乳房視触診(CBE) | 乳房自己触診(BSE) |
推奨グレード | グレード:I(証拠不十分) | グレード:D | ||
推奨なし、または消極的推奨の根拠 | フィルム・マンモグラフィの代用としての、デジタル・マンモグラフィおよび胸部MRIの利益に関する証拠が不足している。 | マンモグラフィより優れていることを示す、CBEの追加の利益に関する証拠が不十分である。 | BSEが乳がんの死亡率を減らさないことを示唆する十分な証拠がある。 | |
実施するために考慮すべき事項 | ||||
乳がんによる負担を回避できる可能性 | 若年女性と乳腺密度の高い女性については、デジタル・マンモグラフィの方が全検出率が若干高い。 | 非常にリスクの高い対象集団では、マンモグラフィよりも造影MRIの方がより多くのがんを検出することが示されてきている。 | 利用可能な検査がCBEだけの場合、かなりの割合のがんを検出する可能性があることが、間接的証拠によって示唆されている | |
見込まれる不利益 | フィルム・マンモグラフィよりもデジタル・マンモグラフィの方が、過剰診断が起こる頻度がより高いかどうかは不明である。 | 造影MRIは、造影剤を注入する必要がある。 MRIは、マンモグラフィと比較して、はるかに多くの偽陽性結果を引き起こし、過剰診断を引き起こす可能性もより高い。 | CBEによる不利益には、不安の要因となる偽陽性結果、不必要な通院、画像診断、生検などがある。 | BSEによる不利益は、CBEで起こりうる不利益と同様であるが、より大きい可能性がある。 |
費用 | デジタル・マンモグラフィはフィルム・マンモグラフィよりも高価である。 | MRIはマンモグラフィよりもはるかに高価である。 | CBEにかかる費用は、主に医師の診察の費用である。 | BSEにかかる費用は、主に医師の診察の費用である。 |
現在の実施方法 | 一部の診療では、現在デジタル機器に変わりつつある。 | MRIは現在、平均リスクの女性の検診には用いない。 | 標準的な検査方法または報告基準は設けられていない。 | 患者にBSEを指導している臨床医の数は不明であり、全ての女性にBSEを指導している臨床医はほとんどいないと思われる。 |
これらの推奨グレード、推奨声明全文、関連文書を作成するにあたり、システマティックレビューの証拠のサマリーについては、下記を参照。
http://www.uspreventiveservicestaskforce.org.
免責事項。USPSTFが作成した推奨は、米国政府から独立しており、米国医療研究品質局または米国保健社会福祉省の公式見解と解釈すべきではない。
*米国保健社会福祉省は、修正された公衆衛生法第2713条a項5号に規定する基準に基づく医療費負担適正化法を実施するにあたり、米国予防医学専門委員会の乳がん検診推奨2002を活用している。
原文掲載日
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