術前化学療法へのカルボプラチン併用がトリプルネガティブ乳がん患者の生存を改善
キャンサーコンサルタンツ
トリプルネガティブ乳がん患者の術前化学療法にカルボプラチンを併用投与すると患者の無病生存率が改善することが、サンアントニオ乳がんシンポジウムで発表されたドイツの臨床試験の結果によって明らかになった[1]。
エストロゲンやプロゲステロン曝露による増殖刺激を受けず、HER2(ヒト上皮成長因子受容体)陰性の乳がんはトリプルネガティブ乳がん(TNBC)と呼ばれる。TNBCは他の乳がんより進行が速い傾向があり、治療選択肢も少ない。
手術で切除するがんの大きさを小さくすることを目的として術前に化学療法剤を投与することを術前補助化学療法という。これまでに報告された臨床試験によれば、アントラサイクリン/タキサンベースの術前補助化学療法へのカルボプラチン追加投与により、TNBC患者の病理学的完全奏効(pCR)率が改善する可能性が示唆されている(臨床結果では36.9%から53.2%へ上昇)。
今回報告された試験では、研究者らは315人のTNBC 患者を対象として、パクリタキセル、非ペグ化リポソームドキソルビシン、ベバシズマブを投与する18週の術前補助化学療法にカルボプラチンを週1回併用投与する群と、投与しない群とに無作為に割り付けて、直接比較した。
追跡期間中央値3年において、パクリタキセル、非ペグ化リポソームドキソルビシン、ベバシズマブにカルボプラチンを追加投与したTNBC患者のうち85.5%はがんが再発しない状態で生存していたが、カルボプラチンを併用投与しなかった患者では無再発率は76.1%であった。
これまでの研究においても、術前補助化学療法後に乳房温存療法を受けることのできた局所進行乳がん女性では、長期生存と再発率で優れた結果が得られると結論づけられてきた[2]。今回の結果により、多くの局所進行乳がん患者にとって、術前補助化学療法は適切な治療選択肢であり、カルボプラチンの追加投与は生存率を一層改善する可能性があることが裏づけられた。局所進行乳がん患者は、術前補助化学療法のリスクと利益、他の新規治療方法を評価する臨床試験への参加について、医師と相談してもよいであろう。
参考文献:
1. von Minckwitz G, Loibl S, Schneeweiss A, et al. Early survival analysis of the randomized phase II trial investigating the addition of carboplatin to neoadjuvant therapy for triple-negative and HER2-positive early breast cancer (GeparSixto). Abstract: S2-04. Presented at the 2015 San Antonio Breast Cancer Symposium, San Antonio, TX. December 9, 2015.
2. Cance W, Carey L, Calvo B, et al. Long-term outcome of neoadjuvant therapy for locally advanced breast carcinoma: effective clinical downstaging allows breast preservation and predicts outstanding local control and survival. Annals of Surgery. 2002;236:295-303.
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