カペシタビンは術前化学療法後に残存病変をもつ乳がん患者の転帰を改善

化学療法薬剤カペシタビン(ゼローダ) による治療は、術前化学療法で消失しなかったHER2陰性乳がん患者女性の無病生存率を改善したとのCREATE-X第3相臨床試験結果が、12月8日から12日に開催された2015サンアントニオ乳がんシンポジウムで発表された。

術前に腫瘍を縮小または除去する治療はネオアジュバント療法と呼ばれる。ネオアジュバント化学療法を受けた乳がん患者の中には、手術の際に取り除いた乳がん組織の検体やリンパ節内に、残存浸潤乳がんが検出されることがある。このような患者は、ネオアジュバント療法が完全に奏効する女性に比べて、長期間の転帰が悪化する傾向がある。

「ネオアジュバント化学療法後に浸潤がんが残る患者の乳がんは化学療法に対して抵抗性があると示唆されていましたが、アジュバント全身化学療法がこのような患者にとって有益かどうかを調べる大規模な臨床試験は、これまでに実施されませんでした」と、京都大学医学部附属病院の大学教授であり、Japan Breast Cancer Research Group (JBCRG) の創設者で上席理事の戸井雅和医学博士は述べた。「CREATE-Xの目的は、ネオアジュバント化学療法後に浸潤がんが残る患者の無病生存率について、カペシタビンが改善するかどうかを調べてこの臨床試験を評価することでした」。

「2年間の追跡調査後、標準療法とカペシタビンを併用して無病生存率が著しく改善することを、最初の有効性結果が示しています」と戸井氏は続けた。「治療の副作用は対処可能で、カペシタビン療法の有益性は明らかなため、このデータには胸が躍ります」。

戸井氏と同僚が試験に登録した910人の患者は、全員がHER2陰性乳がん患者で、アンスラサイクリンとタキサンの両方、またはどちらか一方を使用するネオアジュバント療法後に、浸潤性がんが残っていた。患者の全員が、ホルモン受容体の状態に応じてホルモン療法か化学療法の標準療法を受け、カペシタビン療法か、付加療法なしのどちらかに無作為に割り当てられた。無作為にカペシタビンに割り当てられた455人の患者は、1サイクル21日間の投与を8サイクル受け、最初の14日間に体表面積1平方メートル当たり1,250ミリグラムの化学療法薬を1日2回投与され、その後7日間は無治療であった。

この試験の開始2年後に、プラセボに割り当てられた患者と比較して、カペシタビンを割り当てられた患者のがん再発リスクが31%低下したことが、調査で明らかになった。無病生存率はカペシタビンに割り当てられた患者では87.3%で、プラセボでは80.5%であった。

カペシタビンに割り当てられた患者において、全生存率にわずかな改善傾向がみられ、2年全生存率中央値は、プラセボ群の93.9%に対し、96.2%であった。このデータは不完全なため、時間経過とともに全生存率の差がより明白になると、戸井氏は説明した。

また、特定の集団の患者が他の患者に比べて、カペシタビンに奏効を示すかどうかを判定するサブセット解析も実施する予定であると、戸井氏は述べた。たとえば、ホルモン受容体の状態が転帰に影響を与えているかどうかを調べているとのことである。

この試験は、特定非営利活動法人先端医療研究支援機構(ACRO)から拠出された助成金と、JBCRGへのその他の寄付金による支援を受けた。戸井氏は、中外製薬株式会社から研究助成金を受けている。



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翻訳担当者 三木村 秋

監修 原 文堅(乳腺科/四国がんセンター)

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