FDAが化学療法剤の過剰投与に緊急治療薬ウリジン・トリアセテートを承認

速報

米国食品医薬品局(FDA)は、本日、小児および成人患者へのフルオロウラシルまたはカペシタビンの過剰投与、あるいはこれらの抗がん剤投与後4日以内に発現した重度または致死的な毒性に対する緊急治療として初めてuridine triacetate(商品名:Vistogard)を承認した。

「がん治療では、最も有効で忍容性が高い治療薬を選択することはもちろん、最適な用量を適切なスケジュールで投与を行うことが必要です。一方で、まれに予期せぬ過剰投与も起こりえます。本日の承認はこれらの化学療法剤の過剰投与や致死的な毒性から患者の生命を救うための初の治療薬です」と、FDA医薬品評価研究センター内、血液・腫瘍製品室のRichard Pazdur医師は述べる。

フルオロウラシル(静注)およびカペシタビン(経口)は、数十年前から乳がんや消化器がんの治療に用いられている同種の化学療法剤である。両薬剤の過剰投与はめったにないが、起こった場合の影響は深刻で死亡に至る可能性がある。

Uridine triacetateは経口薬で、フルオロウラシルによる化学療法によって引き起こされる細胞のダメージや細胞死を阻止する。患者は、過剰投与が行われた後(症状があるかないかに関わらず)、あるいは投与後早い時期(4日以内)に重度または致死的な毒性が認められた場合、可及的速やかにuridine triacetateを服用する。Uridine triacetate服用後に、処方された抗がん剤投与を再開するかどうかは、患者の担当医師らが決定する。

Uridine triacetateの有効性と安全性は135人の小児および成人がん患者における2つの別の試験で確認された。対象は、フルオロウラシルまたはカペシタビンの過剰投与を受けたか、あるいはフルオロウラシル(過剰投与ではない)投与後96時間以内の早期に、尋常でない重度または致死的な副作用を発現した患者であった。試験の主要評価項目は30日後の生存または30日以内の化学療法の再開であった。過剰投与に対してuridine triacetateを服用した患者の97%は30日後に生存していた。重度または致死的な副作用を発現してuridine triacetateを服用した患者では89%が30日後も生存していた。両試験で、33%の患者が30日以内に化学療法を再開した。

Uridine triacetateはフルオロウラシルとカペシタビンの緊急でない有害事象に対しては推奨されない。同薬がこれらの薬剤の効果を減少させるためである。フルオロウラシル、カペシタビン治療終了後から96時間以上経過後にuridine triacetate治療を開始した場合の有効性と安全性は確立されていない。

Uridine triacetate治療の最も多い副作用は下痢と嘔気、嘔吐であった。

FDAはuridine triacetateを希少疾病用医薬品に指定していた。それにより臨床試験の税額控除や薬剤処方料の自己負担免除、および希少疾病用薬剤開発への独占的権利を与えるなど、経済的な特別措置が講じられる。Uridine triacetateはまた、優先審査品目および優先承認審査に指定されている。これらの特有の指定は、重篤もしくは致死的な状態の患者に有益な可能性に着目した新薬の開発や審査を迅速に進めることを目的としたものである。

Uridine triacetateは、メリーランド州ゲイサーズバーグにあるWellstat Therapeutics Corporation社により販売される。

翻訳担当者 野中 希

監修 林 正樹(血液・腫瘍内科/社会医療法人敬愛会中頭病院)

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