FDAが進行乳がんの治療薬として、abemaciclibを画期的治療薬に指定

キャンサーコンサルタンツ

米国食品医薬品局(FDA)は、難治性ホルモン受容体陽性(HR+)進行または転移性乳がん患者の治療にサイクリン依存性キナーゼ(CDK)4/6阻害剤abemaciclibを画期的治療薬に指定した。

FDAによると、画期的治療薬とはその薬剤が既存の治療法に対して実質的改善を示す可能性があるという臨床的に有意なエンドポイントを設定した予備的臨床試験結果に基づき、重篤な状態を治療対象とし、承認審査の促進を目的として開発された治療薬のことである。

転移性乳がんについて

乳がんは、世界中で最も多い女性のがんであり、2012年には新たに170万人近くが乳がんと診断されている[1]。米国では、毎年232,000人近くが浸潤性乳がんを発症し、約40,000人の女性が死亡している[2]。米国では乳がん全症例のうち約30%が転移性となり、身体の他の部位に広がると予測される。また、新たに乳がんと診断される患者の6~10%はステージ4(初発時に転移がある病態)であると推定される。
転移性乳がんが治癒する例はほとんどないが、長年治療を受け疾患と付き合い続けている例もある。

abemaciclibについて

abemaciclibはサイクリン依存性キナーゼ阻害剤である。サイクリン依存性キナーゼは、細胞の複製と増殖の制御に重要な役割を果たす。多くのがんでは、CDK4および6のシグナル増幅により細胞周期の制御コントロールが失われることで、細胞増殖の制御が不能となる。abemaciclibは、CDK4および6を特異的に阻止し、がん細胞の増殖を阻害する。

現在、abemaciclibは、乳がん治療に対するabemaciclibの臨床研究開発を進めているイーライリリー・オンコロジーにより開発中である。MONARCH 1は、ホルモン受容体陽性(HR+)ヒト上皮成長因子受容体2陰性(HER2-)転移性乳がんの女性患者を対象にabemaciclib単剤使用を評価した第2相臨床試験である。さらに、イーライリリー社は、第3相臨床試験MONARCH2において、HR陽性HER2陰性進行または転移性乳がん患者を対象にフルベストラント(フェソロデックス)とabemaciclibの併用、同じく第3相臨床試験MONARCH 3において、閉経後HR陽性HER2陰性局所領域再発または転移性乳がん患者を対象に非ステロイド性アロマターゼ阻害薬とabemaciclibの併用について評価を行っているところである。

参考文献:
1. American Cancer Society, “What are the key statistics about breast cancer?”, http://www.cancer.org/cancer/breastcancer/detailedguide/breast-cancer-key-statistics. Accessed: August 18, 2015.
2. Metastatic Breast Cancer Network, “13 Facts about Metastatic Breast Cancer”, http://mbcn.org/developing-awareness/category/13-things-everyone-should-know-about-metastatic-breast-cancer. Accessed August 18, 2015.
3. World Cancer Research Fund International, “Breast Cancer”, http://www.wcrf.org/cancer_statistics/data_specific_cancers/breast_cancer_statistics.php. Accessed: August 18, 2015.


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 廣瀬千代加

監修 下村昭彦(乳腺・腫瘍内科/国立がん研究センター中央病院)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

乳がんに関連する記事

米国公衆衛生局長官がアルコールとがんリスクの関連について勧告の画像

米国公衆衛生局長官がアルコールとがんリスクの関連について勧告

米国保健福祉省(HHS)ニュースリリース飲酒は米国におけるがんの予防可能な原因の第3位本日(2025年1月3日付)、米国公衆衛生局長官Vivek Murthy氏は、飲酒とがんリ...
【SABCS24】乳がんctDNAによるニラパリブの再発予測:ZEST試験結果の画像

【SABCS24】乳がんctDNAによるニラパリブの再発予測:ZEST試験結果

ステージ1~3の乳がん患者において治療後のctDNA検出率が低かったため、研究を早期中止

循環腫瘍DNA(ctDNA)を有する患者における乳がん再発予防を目的とするニラパリブ(販売名:ゼ...
【SABCS24】CDK4/6阻害薬の追加はHR+/HER2+転移乳がんに有効の画像

【SABCS24】CDK4/6阻害薬の追加はHR+/HER2+転移乳がんに有効

「ダブルポジティブ」転移乳がん患者において、標準療法へのCDK 4/6阻害薬追加により、疾患が進行しない期間(無増悪期間)が有意に延長したことが、サンアントニオ乳がんシンポジウ...
【SABCS24】中リスク乳がん患者のほとんどは乳房切除後の胸壁照射を安全に回避できる可能性の画像

【SABCS24】中リスク乳がん患者のほとんどは乳房切除後の胸壁照射を安全に回避できる可能性


BIG 2-04 MRC SUPREMO臨床試験によると、中リスク乳がん患者は乳房切除後に胸壁照射(CWI)を受けても受けなくても、10年生存率は同程度であったという結果が、2024年...