非浸潤性乳管がん(DCIS)治療は20年にわたり発展したが、がん死亡率は変化せず
デューク大学医療センター
非浸潤性乳管がん(DCIS)の治療法は1990年代から変化し続けており、その間、片側乳房切除術を選択するよりも、放射線療法と組み合わせる乳房部分切除術を選択する米国人女性が増加したことが、デュークがん研究所の研究者らが主導する研究で明らかになった。
しかしながら、両乳房切除を希望する女性も増加傾向にあるとはいえ、研究者らの解析によると、どの治療法を選択しても、がん生存率にほとんど差はみられないという。
今回得られた知見は、National Cancer Institute誌今月号の電子版に掲載されている。DCISと定義される、非侵襲性ではあるが早期のがん細胞に対する最良の治療法に関して議論が続く中、この知見は新たな問題を提起するものである。
「今回の解析結果を用いて、われわれは、DCISと診断された際に女性はどの治療法を選択したのか、また、治療法の違いが死亡率に何らかの影響を与えたのかを見極めようとしました」と、統括著者であり、デュークがん研究所の乳腺外科部長であるE. Shelley Hwang医師は述べた。
「DCISに対する治療法は女性の健康問題にとって重要ですが、最良の治療法に関するデータが依然として不足しています」とHwang医師は述べる。「今回われわれが行ったような研究が複数実施されれば、医師と患者をより適切に導くため、より多くの情報をもたらすことのできる適切に設計された臨床試験が必要であると考えられるでしょう」。
Hwang医師らは、米国で実施された生存率・疫学・最終結果(SEER)プログラムから得たデータを用い、1991~2010年にDCISと診断された121,000人を超える女性について解析を行った。
研究者らによると、広範囲の切除を選択する患者は全体的に徐々に減少し、片側乳房切除術を選択した割合は44.9%から19.3%となり、乳房部分切除術と放射線療法を選択した割合は24.2%から46.8%に増加していた。また、リンパ節の大部分が切除される腋窩郭清よりも、センチネルリンパ節生検が実施された割合のほうが増加していた。
しかし、こうした傾向と同時に、若い女性は両乳房切除術を選択する場合が多く、0%から8.5%に増加している。
また、全生存率でみられた差は治療のタイプに関連しており、全身状態の違いが治療法の選択に影響を与える可能性を示している。10年全生存率が最も高かった(89.6%)のは、乳房部分切除術(温存術)と放射線療法を実施した患者で、次に乳房切除術(全摘術)を実施した患者(86.1%)、乳房部分切除術のみ実施した患者(80.6%)が続いた。
しかし、診断から10 年後の乳がん死亡率のみに注目すると、これらの治療群ではほとんど差がみられなかった。10年後の乳がん生存率は、乳房部分切除術+放射線療法群が98.9%、乳房切除術群が98.5%、乳房部分切除術のみ行った群は98.4%であった。
「われわれが検討したかったことの1つは、DCISと診断された後、この女性たちがどうなったかということです」とHwang医師は述べる。「全体で、全死亡の9.2%が乳がんによるものでした。しかし、最も多くみられた死因は乳がんではなく、心血管系疾患で、全死亡の33%占めていました」
しかし、Hwang医師によると、DCISを発症した50歳未満の女性は例外で、死亡した3分の1は乳がんが原因であったことから、この世代の女性には積極的な治療を行うことが重要であると強調している。
「50歳未満のDCIS患者に対して適切な治療が行われているかどうかを知るため、早急に臨床試験を実施する必要があることをわれわれの研究は示しています」とHwang医師は述べる。「適切な治療が行われているかどうかとは、何の治療も行わないことや、過度に積極的な治療を行うことを問題とするのではなく、治療法に関わらず予後が良好な患者群に対して個別化療法が適切に行われているかを問題とします。われわれの介入が患者に対して本当に利益になっているのかを確かめるため、個々の患者に推奨する治療法についてさらに多くの優れたエビデンスが必要です」
Hwang医師の他の共著者は以下のとおりである。Mathias Worni; Igor Akushevich; Rachel Greenup; Deba Sarma; Marc D. Ryser; and Evan R. Myers。
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