高濃度乳房の女性の多くは追加のスクリーニングが不要である可能性
米国国立がん研究所(NCI)/ブログ~がん研究の動向~
原文掲載日 :2015年6月22日
高濃度乳房の女性は乳がんのリスクが高く、また高乳腺密度は標準のマンモグラフィ検診での偽陰性(誤った陰性)結果の原因となっている。しかし、新たな研究結果では、マンモグラフィ検診の結果が正常であった場合、乳腺密度だけで乳がんの追加スクリーニングを指示するべきではないとしている。
むしろ、高濃度乳房の女性にとって、マンモグラフィで陰性でも次回マンモグラフィまでに発現する中間期がんとも呼ばれる乳がんを予測するのに、他の危険因子も考慮したスクリーニング計画が最良の手段であることが、NCIが支援する研究によって示された。
当研究の主任担当医師であるカリフォルニア大学サンフランシスコ校のKarla Kerlikowske医師は、「マンモグラフィを受けた女性の大多数(高濃度乳房だが5年乳がんリスクが低い女性を含む)では、マンモグラフィの結果が正常な人が12ヵ月以内に乳がんを発現する確率は低いことがわかりました」と述べた。
当研究の研究者らは、今回の発見は多くの女性にとって重要なことを示唆し得るとみている。その理由は、現在22の州において、高濃度乳房であれば医師はそのことを伝え、その女性がマンモグラフィ検診で正常との結果であっても、MRI、PET、超音波などの追加の画像検査を受けるかどうかを医療従事者と話し合うことを推奨することが法律で定められているためである。
現在、同様の連邦規定が議会で検討されている。追加の画像検査はマンモグラフィで見逃されたがんを検出することができるが、一方で、偽陽性(誤った陽性)結果が増加し、不必要な生検などの追加検査につながっていることもわかっている。
Annals of Internal Medicine誌で発表された当研究は、Breast Cancer Surveillance Consortium (BCSC)(7つの乳がんスクリーニング機関を含むNCI出資プログラム)における40~74歳女性約365,000人のデータを使用している。5年乳がんリスクはBCSCリスクモデルで判断される。このモデルは、乳腺密度に加え、年齢、人種、乳がんの家族歴、および乳房生検歴で今後5年間の乳がんリスクを判断する。乳腺密度は、BI-RADSで知られる標準的測定システムを使用して評価された。
当研究では、研究対象の約47%の女性が高濃度乳房であった。高濃度乳房の女性のうち、中間期がんが発現するリスクが最も高いのは、極度の高濃度乳房(乳腺組織の少なくとも75%が高濃度)で、1.67%以上の5年乳がんリスクの女性 、また、不均一高濃度乳房(乳房組織の半分超が高濃度)では2.5%以上の5年乳がんリスクの女性であった。
BCSCリスクモデルに基づくと、高濃度乳房女性の24%のみが中間期がんのリスクが高く、そのため、その女性たちは追加や代替の検査について議論するための最適な候補者であったとKerlikowske医師らは報告した。また、中間期がんのリスクが最も高い女性は、がんが検出された時には進行がんであることも多く、このことは、中間期がんのリスクが高い女性が追加や代替の検査を受けることは有益であるという考えを強固にしたと同医師らは述べた。
BCSCリスク計算は、臨床上の意思決定を助けるツールとして設計された。プライマリーケア提供者は、このリスク計算表を使用して5年乳がんリスクを算出し、その情報を用いて高濃度乳房女性の補助的または代替となる検査について話し合うことができる。また、このリスク計算は、同年齢、同人種女性の平均的リスクとの比較にも使用することができる。
NCIのDivision of Cancer Control and Population SciencesのStephen Taplin医師は、「当研究は、情報を賢く利用し、個々のリスク評価を実現する良い例です」と述べた。
当研究の結果を踏まえ、Kerlikowske医師は、「高濃度乳房の女性すべてが追加で検査を受けるというのは道理にかなっていない」と述べた。
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