米国人女性における浸潤性乳がんの生存パターンの変化
米国国立がん研究所(NCI)ニュースノート
原文掲載日 :2015年7月20日
1970年代以来、欧米諸国の多くで女性の乳がん死亡率は減少している。全体的に、乳がん診断後の生存率は、局所または領域(腫瘍の周辺までの広がり)の乳がんと診断されたすべての女性で改善している。
70歳までに診断された女性は、転移性乳がんでも短期(5年以内)死亡率は低くなっている。局所/領域乳がん患者の長期死亡率(5年以上生存)は、すべての年齢群で改善している。診断時の腫瘍径は1980年代から縮小しているが、新しいエビデンスによると、診断時の各ステージで腫瘍径の違いによる乳がん死亡率の改善割合は、70歳未満の女性では極めて小さい。これに対し、局所/領域乳がんと診断された70歳以上の女性では、予後改善の約半分が発見時の腫瘍径の変化で説明できる。
この結果は、NCIのSurveillance, Epidemiology, and End Results (SEER) のデータベースのデータ解析による。またこの研究では、診断後5年以内の70歳以上の女性を除き、エストロゲン受容体(ER)の変化は、腫瘍径を調整した後の改善にほとんど影響しないことがわかった。NCIのがん疫学・遺伝学部門のMitchell H. Gail医学博士、William F. Anderson医師、および同研究チームの東国大学校(ソウル)のJu-Hyun Park博士によるこの研究結果は、2015年7月20日、Journal of Clinical Oncology誌の電子版で発表された。
研究チームは、乳がん診断時の年齢、診断年、腫瘍径、リンパ節転移(陰性または陽性)、乳がんステージ(局所、領域または転移性)、ER状況(陰性、陽性、不明)などのデータを解析した。これらのデータによって、診断後の生存パターンの変化が明らかになり、研究者らは、原発性の浸潤性乳がんと初めて診断された女性では、腫瘍径およびER状況が、それぞれの生存転帰の改善に関与していると特定した。
彼らの解析結果により、1973~2010年にかけて、乳がん特異的死亡率は、診断後5年以内だけでなく、その後も低下していることが示された。各ステージで腫瘍径が小さいことにより、このような肯定的な傾向が示された割合は、70歳以上の女性を除いては、17%以下であった。70歳以上の女性では、腫瘍径が小さいことによる改善の割合は、局所乳がんの女性で49%、領域乳がんの女性で38%であった。また、腫瘍径による改善の割合は通常、年齢に関係なく、診断後5年以上より診断後5年以内で、より大きいことがわかった。
乳がん生存率の改善は治療によるものがほとんどである一方、より好ましい腫瘍の生物学的特性もまた、改善傾向に影響している可能性がある。治療が困難なエストロゲン受容体陰性の腫瘍の割合が1990年から減少していることが専門家により確認されている。
ステージに特異的な生存率の改善の中には、診断方法が年月を経て変化したことによる可能性もあり、各ステージでより好ましい予後の女性の割合が増える傾向にある。この大規模な研究による知見は、あらゆる年齢の女性の乳がん生存率に関連する因子を明らかにするのに役立つ、と研究者らは述べている。
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