50歳以上乳がん女性における低頻度マンモグラフィ検査は年1回検査と比較して非劣性
Mammo-50試験の結果
乳がんの初回診断時に50歳以上かつ診断後3年間再発のない女性において、低頻度のマンモグラフィ検査が年1回のマンモグラフィ検査と比較して劣性ではないことが、英国で実施された多施設ランダム化第3相Mammo-50試験の結果で示された。
この試験結果は世界的に大きな影響を及ぼす可能性がある。なぜならば、現在、多くの女性が無期限に年1回のマンモグラフィ検査を受けているからである。しかし、これによって、放射線被曝の増加、不安の増大、自己負担額の増大という点で、医療制度と患者の両方に負担がかかっている。このように述べるのは、英国コベントリーのウォーリック大学ウォーリック臨床試験ユニットのJanet A Dunn教授らであり、同教授らは2025年2月1日にLancet誌に本試験結果を発表した。
Janet A Dunn教授らは、マンモグラフィ検査による定期観察は新たな原発性乳がんや再発の検出に役立つと、背景で述べている。局所再発の早期発見は生存率の向上につながる。局所再発が身体検査ではなくマンモグラフィ検査で発見された場合、また症状のある患者よりも無症状の患者の方が生存率は高くなる。
近年、局所再発率が低下していることから、現代の外科治療と薬物療法が局所再発の予防に効果的であることが示唆されている。局所再発の最も強力な予測因子の1つは、若齢である。50歳以下の女性は、50歳以上の女性と比較して、局所再発が発生した場合の転帰が悪くなる。
高齢女性における過去10年間の局所再発率の低下、再発率の低下、スクリーニングのリードタイムの延長に基づいて、この患者集団においてマンモグラフィ検査による定期観察を安全かつ段階的に縮小できる可能性が高まっている。
Mammo-50試験の目的は、診断時に50歳以上であり、手術可能な乳がんの治療から3年経過後も再発のない女性を対象に、低頻度のマンモグラフィ検査が乳がん特異的生存率の観点で非劣性であるかどうかを確認することであった。これは、多施設共同ランダム化第3相試験であり、浸潤性または非浸潤性乳がんの初回診断時に50歳以上であり、根治手術から3年経過後も再発のない女性を対象に、年1回のマンモグラフィ検査と乳房温存手術後2年に1回または乳房切除術後3年に1回のマンモグラフィ検査を比較した。
本試験は、英国の国民保健サービスが運営する114カ所の医療機関で実施された。参加者は、根治手術後3年目に、年1回またはそれ以下の頻度でマンモグラフィ検査を受けるように1:1で無作為に割り付けられ、6年間追跡された。共主要評価項目は、乳がん特異的生存率と費用対効果であった。費用対効果分析は、別途報告予定である。
乳がん特異的生存率は、intention-to-treat集団で評価された。副次評価項目は、無再発期間、全生存率、および医療機関への再受診であった。合計5,000人の女性により、乳がん特異的生存率の絶対非劣性マージン3%および片側有意水準2.5%を検出する90%の検出力が得られた。登録は完了しているが、長期の追跡調査が進行中である。
2014年4月22日から2018年9月28日までの間に、女性2,618人が年1回のマンモグラフィ検査群に、2,617人が低頻度のマンモグラフィ検査群に無作為に割り付けられた。3,858人(73.6%)が60歳以上、4,202人(80.3%)が乳房温存手術を受け、4,576人(87.4%)が浸潤性、1,159人(22.1%)がリンパ節転移陽性、4,330人(82.7%)がエストロゲン受容体陽性であった。
追跡期間の中央値は5.7年(四分位範囲5.0~6.0、根治的手術後8.7年)で、女性343人が死亡し、そのうち116人は乳がんが原因で死亡した(年1回マンモグラフィ検査群で61人、低頻度マンモグラフィ検査群で55人)。
5年乳がん特異的生存率は、年1回のマンモグラフィ検査群では98.1%(95%信頼区間[CI] 97.5~98.6)、低頻度のマンモグラフィ群では98.3%(95% CI 97.8~98.8)であり(ハザード比0.92、95% CI 0.64~1.32)、事前に定められたマージン3%で低頻度マンモグラフィ検査の非劣性が実証された(非劣性p < 0.0001)。
5年無再発率は、年1回マンモグラフィ検査群で94.1%(95% CI 93.1~94.9)、低頻度マンモグラフィ検査群で94.5%(93.5~95.3)であった。5年全生存率はそれぞれ94.7%(95% CI 93.8~95.5%)および94.5%(95% CI 93.5~95.3)であった。全体で、乳がんイベント345件中224件(64.9%)が緊急入院または症状による医療機関への再受診により検出され、内訳は、年1回マンモグラフィ検査群の175件中108件(61.7%)、低頻度マンモグラフィ検査群の170件中116件(68.2%)であった。
Janet A Dunn教授らは、乳がんの診断時に50歳以上で、診断後3年間毎年マンモグラフィ検査による定期観察を受け、その時点で再発の徴候がみられなかった女性は、マンモグラフィ検査の頻度を減らしても問題ないことを、この研究は示していると結論付けている。乳房切除術を受けた女性は、当該年齢層でのスクリーニングのリードタイムに基づいてマンモグラフィ検査を受けるべきである。これは、診断時に50歳以上の女性の場合、2~3年に1回のマンモグラフィ検査を示唆している。浸潤性がんのために広範囲局所切開を受けた女性の場合、ベースラインの外観を確立するために最長3年間毎年マンモグラフィ検査を受けた後、それ以降はマンモグラフィ検査の頻度を減らしても安全性上問題ないであろう。Mammo-50は、英国内および国際的にガイドラインを変更する根拠を示している。
オランダのナイメーヘンにあるラドバウド大学医療センターの医療画像部門とアムステルダムにあるオランダがん研究所の放射線部門のRitse M Mann医師は、付随コメントで、このようなマンモグラフィ検査による観察のランダム化比較試験は他に例がなく、研究者の努力は称賛されるべきだと記している。現在のガイドラインは、専門家のコンセンサスや後ろ向きコホート研究に基づいた方針を推奨している。本試験は本質的に、低リスクの女性に対する定期的なスクリーニングが、医療機関ベースの長期サーベイランスと同様に、二次性がんの悪影響を防ぐ可能性があることを示している。
本試験は、英国国立医療研究所の医療技術評価プログラムによって資金提供された。
参考文献
Dunn JA, Donnelly P, Elbeltagi N, et al. Annual versus less frequent mammographic surveillance in people with breast cancer aged 50 years and older in the UK (Mammo-50): a multicentre, randomised, phase 3, non-inferiority trial. The Lancet 2025;405(10476):396–407.
Mann RM. Rethinking surveillance after breast cancer. The Lancet 2025;405(10476):356-358.
- 監修 小坂泰二郎(乳腺外科/JA長野厚生連 佐久総合病院 佐久医療センター)
- 記事担当者 仲里芳子
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- 原文掲載日 2025/02/18
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