低脂肪食はER陽性/PR陰性乳癌の予防に役立つ可能性

キャンサーコンサルタンツ

脂肪の摂取量を減らすことはエストロゲン受容体(ER)陽性/プロゲステロン受容体(PR)陰性乳癌の発症リスクを低下させる可能性がある。この所見はCancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention誌で発表された。

食事と乳癌の関連性は広く研究されてきた。特に、食事脂肪の摂取量と乳癌リスクとの関連性は研究の主要焦点であり、食事脂肪の摂取量を減らすと乳癌など特定の癌のリスクが低下する可能性があると考えられている。

1993年から2005年に実施されたWomen’s Health Initiative (WHI) low-fat dietary modification (DM)で、閉経後女性48,836人の食事パターンを評価した。

参加者の40%は低脂肪食を摂取する介入群に割り付けた。具体的には、総脂肪摂取量を20%、飽和脂肪摂取量を7%に減らし、果物と野菜の摂取を1日に5回以上、穀物を6回以上に増やした。

残りの参加者60%は、介入を受けず脂肪を摂取することとし、介入群と比較した。

平均8年半の追跡調査の後、介入群(低脂肪食群)において浸潤性乳癌や結腸直腸癌のリスク、癌による死亡率や総死亡率は低下しなかったが、追跡調査期間中、ER陽性/PR陰性乳癌に限定するとリスクが低下した。また、試験前に脂肪摂取量が最も多かった患者群では、介入食期間中の方が、介入後再び脂肪摂取量を増加した時よりも乳癌リスクは低かった。

これらの所見により、介入食の期間終了後に女性たちの脂肪摂取量を増加した。研究者らはWHI-DMにおいて、低脂肪食による乳癌全体におけるリスクの長期的な低下を認めなかった。しかし、重要なことは、低脂肪食が特定の乳癌、すなわちER陽性/PR陰性乳癌の発症の予防に寄与している可能性が示唆されたことである。

参考文献:

Thomson CA, Van Horn L, Caan BJ, et al. Cancer Incidence and Mortality During the Intervention and Postintervention Periods of the Women’s Health Initiative Dietary Modification Trial. Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention. 2014 Dec;23(12):2924-35. doi: 10.1158/1055-9965.EPI-14-0922.

監訳者注:第4,5段落には原文の記述に誤りがあったと思われます。
Women’s Health Initiative (WHI) low-fat dietary modification (DM)の記録(https://www.whi.org/about/Baseline%20Monograph/baseline_DietaryModification.pdf)を確認の上、監訳者が実際の試験内容に沿って修正を加えております。


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 有田香名美

監修 小坂泰二郎(乳腺外科/順天堂大学附属練馬病院)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

乳がんに関連する記事

乳がんリスク評価ツールの仕組みの画像

乳がんリスク評価ツールの仕組み

2024年3月、女優のオリヴィア・マン(Olivia Munn)が乳がんと診断されたことを発表した。Munnさんはまた、がんリスク評価ツールが彼女の診断に至る過程で果たした役割を強調し...
ハイリスク遺伝子を有する若年乳がんサバイバーの生殖補助医療は安全の画像

ハイリスク遺伝子を有する若年乳がんサバイバーの生殖補助医療は安全

ハイリスク遺伝子があり、乳がん後に妊娠した若い女性を対象とした初の世界的研究によれば、生殖補助医療(ART)は安全であり、乳がん再発リスクは上昇しないハイリスク遺伝子があり、乳...
【ASCO2024年次総会】T-DXd(エンハーツ)がホルモン療法歴のある乳がん患者の無増悪生存期間を有意に改善の画像

【ASCO2024年次総会】T-DXd(エンハーツ)がホルモン療法歴のある乳がん患者の無増悪生存期間を有意に改善

ASCOの見解(引用)「抗体薬物複合体(ADC)は、乳がん治療において有望で有益な分野であり、治療パラダイムにおける役割はますます大きくなっています。トラスツズマブ デルクステ...
【ASCO2024年次総会】若年乳がん患者のほとんどが治療後に妊娠・出産可能の画像

【ASCO2024年次総会】若年乳がん患者のほとんどが治療後に妊娠・出産可能

ASCOの見解(引用)「乳がんの治療後も、妊娠や出産が可能であるだけでなく安全でもあることが、データが進化するにつれて次々と証明されてきています。この研究では、妊娠を試みた乳が...