HER2陽性乳癌に対するネラチニブの抗癌活性が引き続き示される

キャンサーコンサルタンツ

現在実施中であるネラチニブ[neratinib]の第2相臨床試験の中間結果が、2014年サンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS)で発表された。

ネラチニブは、HER2およびHER4と上皮成長因子受容体(EGFR)を標的とする臨床試験中の経口薬である。乳癌の20~25%では、HER2として知られるタンパク質が過剰発現して(過剰に産生されて)いる。このタンパク質が過剰発現すると、癌細胞の増殖が促進され、乳癌の予後不良をもたらす。HER2陽性細胞を標的とするトラスツズマブ(ハーセプチン)のような分子標的治療薬の開発により、HER2陽性乳癌女性の予後は改善されてきている。ネラチニブは、ラパチニブ(タイケルブ)やアファチニブ(ジオトリフ)と同様に、HER2とEGFRキナーゼの両方を阻害する。

進行したHER2陽性乳癌の治療におけるネラチニブを評価するため、研究者らは、HER2陽性転移性乳癌患者に対し抗癌剤のテムシロリムス(トーリセル)と併用してネラチニブを投与する第2相臨床試験を実施した。

本試験の参加者はすでに多くの治療を受けており、試験に参加する前に平均で3つの転移性乳癌に対する治療レジメンに失敗していた。

本試験の安全性に関する中間結果では、ネラチニブとテムシロリムスの併用投与を受けた患者において最も頻繁にみられた副作用は下痢であった。全体として、併用投与を受けた患者のおよそ30%で、乳癌の少なくとも部分的な消失が認められた。

ネラチニブはHER2陽性乳癌患者に対して顕著な抗癌活性を有することが、この第2相臨床試験により明確に示された。乳癌管理におけるネラチニブの役割を決定するため、臨床試験段階での継続的な開発が行われている。

参考文献:
Gajria D, Modi S, Saura C, et al. A phase I/II study of neratinib plus temsirolimus in HER2+ metastatic breast cancer reveals ongoing HER2 pathway dependence in many patients despite several lines of HER2 targeted therapy. Presented at the 2014 San Antonio Breast Cancer Symposium, December 9-13, 2014. San Antonio, Texas. Abstract P5-19-04.


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 下川智美

監修 北村裕太(内科/東京医科歯科大学医学部付属病院)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

乳がんに関連する記事

乳がんリスク評価ツールの仕組みの画像

乳がんリスク評価ツールの仕組み

2024年3月、女優のオリヴィア・マン(Olivia Munn)が乳がんと診断されたことを発表した。Munnさんはまた、がんリスク評価ツールが彼女の診断に至る過程で果たした役割を強調し...
ハイリスク遺伝子を有する若年乳がんサバイバーの生殖補助医療は安全の画像

ハイリスク遺伝子を有する若年乳がんサバイバーの生殖補助医療は安全

ハイリスク遺伝子があり、乳がん後に妊娠した若い女性を対象とした初の世界的研究によれば、生殖補助医療(ART)は安全であり、乳がん再発リスクは上昇しないハイリスク遺伝子があり、乳...
【ASCO2024年次総会】T-DXd(エンハーツ)がホルモン療法歴のある乳がん患者の無増悪生存期間を有意に改善の画像

【ASCO2024年次総会】T-DXd(エンハーツ)がホルモン療法歴のある乳がん患者の無増悪生存期間を有意に改善

ASCOの見解(引用)「抗体薬物複合体(ADC)は、乳がん治療において有望で有益な分野であり、治療パラダイムにおける役割はますます大きくなっています。トラスツズマブ デルクステ...
【ASCO2024年次総会】若年乳がん患者のほとんどが治療後に妊娠・出産可能の画像

【ASCO2024年次総会】若年乳がん患者のほとんどが治療後に妊娠・出産可能

ASCOの見解(引用)「乳がんの治療後も、妊娠や出産が可能であるだけでなく安全でもあることが、データが進化するにつれて次々と証明されてきています。この研究では、妊娠を試みた乳が...