ナブパクリタキセルにより初期乳癌患者が顕著な病理学的完全寛解を示す

キャンサーコンサルタンツ

初期の高リスク乳癌女性の治療に対し、ナブパクリタキセル(アブラキサン)は従来の溶媒を用いたパクリタキセルより優れているという臨床試験結果が、ドイツの医師らによりサンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS)で報告された。

ナブパクリタキセルは、ナノサイズに近いアルブミンのタンパク質の殻の内に、パクリタキセルをカプセル化している。ナブパクリタキセルはアルブミンの天然の輸送特性を利用しており、溶媒を用いたパクリタキセルに比べて多くのパクリタキセルを癌に輸送できる。

本臨床試験で、1200人の初期乳癌女性が、エピルビシン+シクロホスファミド+パクリタキセルまたはエピルビシン+シクロホスファミド+ナブパクリタキセルによるネオアジュバンド化学療法を受け、直接比較された。ネオアジュバンド化学療法は、速やかな治療と、手術で取り除ける大きさに癌を縮小することを目的に、手術前に実施される。手術で取り除かれた癌は、化学療法の有効性を判定するために測定できる。もしネオアジュバンド化学療法後に癌が認められなかったら、病理学的完全寛解(pCR)とされる。

pCRに達したのが、パクリタキセル投与群の患者のわずか29%であったのに比べて、ナブパクリタキセル投与群の患者では38%であることが、試験で明らかになった。この絶対値で9%の改善は印象的で、臨床的に意味がある。また、トリプルネガティブの患者ではpCRが約2倍となり、ナブパクリタキセルの優れた効果も報告された。

パクリタキセルは、転移性および初期両方の乳癌の治療に、標準的および広範囲に使用される。また、パクリタキセルは神経障害および他に問題を引き起こす副作用にも関連している。パクリタキセルをナブパクリタキセルに代えることにより、患者の転帰を改善できれば、かなりの進歩となりうる。SABCSで発表された予備的データの追加解析により、ナブパクリタキセルとパクリタキセルとの間に、副作用の差があるかどうか確認する必要がある。さらに追加の長期追跡データにより、pCRの改善が意味のある延命効果につながるかを確認する必要がある。

参考文献:
Untch M, Jackisch C, Schneeweiß A, et al. A randomized phase III trial comparing neoadjuvant chemotherapy with weekly nanoparticle-based paclitaxel with solventbased paclitaxel followed by anthracyline/ cyclophosphamide for patients with early breast cancer (GeparSepto); GBG 69. Presented at the 2014 San Antonio Breast Cancer Symposium, December 9-13, 2014. San Antonio, Texas. Abstract S2-07.


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 木下秀文

監修 金田澄子(薬学)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

乳がんに関連する記事

浸潤性乳がんの治療に手術不要の可能性の画像

浸潤性乳がんの治療に手術不要の可能性

薬物治療後の乳房手術を省略しても、患者は5年後もがんのない状態を維持していたネオアジュバント(術前)化学療法と標準的な放射線治療で完全奏効を示した早期乳がん患者にとって、手術は...
50歳以上乳がん女性における低頻度マンモグラフィ検査は年1回検査と比較して非劣性の画像

50歳以上乳がん女性における低頻度マンモグラフィ検査は年1回検査と比較して非劣性

Mammo-50試験の結果乳がんの初回診断時に50歳以上かつ診断後3年間再発のない女性において、低頻度のマンモグラフィ検査が年1回のマンモグラフィ検査と比較して劣性ではないこと...
術前化学療法にPD1阻害薬追加で高リスク早期ER+HER2-乳がんの完全奏効率が有意に上昇の画像

術前化学療法にPD1阻害薬追加で高リスク早期ER+HER2-乳がんの完全奏効率が有意に上昇

CheckMate7FL試験およびKEYNOTE-756試験結果CheckMate7FL試験(ランダム化多施設二重盲検プラセボ対照第3相試験)では、アントラサクリンおよびタキサ...
健康な女性にも乳がんに似た細胞があることが研究で判明の画像

健康な女性にも乳がんに似た細胞があることが研究で判明

乳房組織には、浸潤性乳がんに見られる遺伝子変化を持つ正常細胞が含まれており、将来の早期発見へのアプローチの指針となる可能性がある。

健康な女性の場合、一見正常に見える乳房細胞の一部に浸潤...