心臓病患者は進行乳がんのリスクが高まる可能性

進行または転移乳がんと診断された患者は、早期乳がんの患者に比べて心血管疾患の既往の可能性が高いことが研究から判明

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者によると、心血管疾患(CVD)とがんは、米国における2大死因であり、末期または転移性乳がんと診断された患者は、診断時に早期乳がんであった患者と比較して、診断前の心血管疾患リスクが統計学的に有意に高いことが明らかになっている。
 
2025年01月02日、JAMA Network Open誌に発表されたこの研究では、診断時に進行乳がんであった患者はCVDの既往がある可能性が10%高いことが明らかになった。さらに、特定のタイプの乳がんであるホルモン受容体陽性(HR+)およびHER2陰性(HER2-)の患者は、CVDの既往がある可能性(11%)が最も高いことが明らかになった。
 
 「心血管疾患は免疫抑制状態を引き起こし、乳房腫瘍細胞の増殖と転移を促進する可能性があります」と、疫学および放射線腫瘍学助教で筆頭著者のKevin Nead医師は述べた。「この研究結果は、心血管疾患を有する女性が進行乳がんと診断される可能性が高いことを示唆しており、この2つの間に潜在的な関連性があることを浮き彫りにしています」。
 
 この症例対照研究では、年齢中央値73歳の19,000人以上のデータを調査し、早期がん(ステージI-II)と進行がん(ステージIII-IV)の患者間で心血管疾患(CVD)の有無を比較した。リスクの増加は局所進行乳がんと転移乳がんの両方に認められた。
 
 米国国立がん研究所によると、ホルモン陽性/HER2陰性乳がんは乳がん全体の70%近くを占める。転移する前の早期段階で発見されれば、この病気は非常に治療しやすい。しかし、転移性HR+/HER2-乳がんの5年相対生存率はわずか34%であり、予防と早期発見の必要性が強調されている。
 
 心血管疾患は、米国で年間100万人近くが死亡する原因となっている。この疾患には、冠動脈性心疾患、脳卒中、高血圧、心不全、高血圧症、動脈疾患などが含まれる。
 
 研究対象者のうち49%にCVDが見つかった。コホートは、2009年から2020年までのSEER(Surveillance, Epidemiology, and End Results)-Medicare Linked Databaseから抽出された。解析は2023年5月から2024年8月にかけて行われた。
 
 「この研究は、心血管疾患(CVD)のある人は乳がん検診をより早く、より頻繁に受けることで、より早い治療可能な段階で病気を発見できる可能性があることを示唆しているので、個人に合わせた検診戦略の参考となるでしょう」とNead氏は述べた。
 
 この研究の限界としては、観察研究であり因果関係を証明するものではないこと、残差バイアスの影響を受けやすいこと、CVDの分類を誤る可能性があること、喫煙を含む潜在的複合要因のコントロールが不十分であることなどが挙げられる。患者群は主として白人であり、このことも研究結果の一般化に影響を与える可能性がある。
 
 本研究は、米国国立衛生研究所(CCSG P30 CA016672)、Cancer Prevention and Research Institute of Texas (CPRIT)(RR190077)、米国国立がん研究所(L30CA253796、K08CA263313)の支援を受けた。共著者の全リストおよび開示情報はこちらをご覧ください。

  • 監修 小坂泰二郎(乳腺外科/JA長野厚生連 佐久総合病院 佐久医療センター)
  • 記事担当者 青山真佐枝
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  • 原文掲載日 2025/01/02

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