米国公衆衛生局長官がアルコールとがんリスクの関連について勧告

米国保健福祉省(HHS)ニュースリリース

飲酒は米国におけるがんの予防可能な原因の第3位

本日(2025年1月3日付)、米国公衆衛生局長官Vivek Murthy氏は、飲酒とがんリスク増加との直接的な関連について概説した新たな「アルコールとがんリスクに関する米国公衆衛生局長官勧告」を発表した。飲酒は、米国において、タバコ、肥満に次いでがんの予防可能な原因の第3位であり、少なくとも7種類のがんのリスクを増加させる。この関連性を示す科学的エビデンスは過去40年間増え続けているが、飲酒をがんのリスク因子として認識しているアメリカ人は半数未満である。

米国公衆衛生局長官の勧告には、アルコールに関連したがんの発症や死亡を最小限に抑えるための認識を高めるためいくつかの勧告が含まれており、アルコール含有飲料に貼付されている既存の米国公衆衛生局長官健康警告ラベルの改訂も含まれる。

「アルコールは、がんの予防可能な原因として確立されており、米国では年間約10万件のがん症例と2万件のがんによる死亡の原因となっています。これは、米国における年間13,500人のアルコール関連交通事故死亡者数よりも多いのです。」と米国公衆衛生局長官Vivek Murthy氏は述べている。「この勧告では、アルコールのがんリスクに対する認識を高め、害を最小限に抑えるために、私たち全員が取ることのできる対策を示しています」。

少なくとも7種類のがん(乳がん、大腸がん、食道がん、肝臓がん、口腔がん、咽頭がん、喉頭がん)については、アルコールの種類(ビール、ワイン、蒸留酒など)に関係なく、飲酒とがんリスクとの直接的な関連が確立されている。特に乳がんについては、乳がん症例全体の16.4%が飲酒に起因している。

米国では、アルコールに関連したがん症例は年間約10万件、アルコールに関連したがんによる死亡は約2万件ある。がんのリスクは、飲酒量が増えるにつれて増加する。乳がん、口腔がん、咽頭がんなどの特定のがんについては、1日1杯以下の飲酒でがん発症リスクが増加し始めるというエビデンスがある。飲酒による個々人のがん発症リスクは、生物学的、環境的、社会的、経済的要因の複雑な相互作用によって決まる。

この勧告では、アルコール含有飲料に対する米国公衆衛生局長官の健康警告ラベルを改訂し、がんリスクを加えるよう求めることに加えて、さらにいくつか提言を行っている。この提言では、がんリスクを考慮した飲酒量のガイドライン制限値の再評価を求めており、飲酒するかどうか、あるいはどのくらいの量を飲酒するのか検討する際には、飲酒量とがんリスク増加との関係に注意するよう個々人に助言している。さらに、公衆衛生の専門家および地域団体は、飲酒が修正可能ながんの主要リスク因子であることを強調し、一般的な認識を高めるための教育活動を強化、拡大し、医療提供者は、臨床現場で患者にこの関連について知らせ、必要に応じてアルコールのスクリーニングおよび治療紹介の利用を促進すべきである。

米国公衆衛生局長官の勧告は、重大な公衆衛生問題に対しアメリカ国民の注意を促す公式声明である。勧告は、国家が直ちに認識し、行動する必要がある重大な公衆衛問題に対して発せられる。国家を代表する医師である第 21 代米国公衆衛生局長官のMurthy氏は、親のメンタルヘルスと幸福、銃器による暴力、孤独と孤立、ソーシャル メディアと若者のメンタルヘルス、 若者のメンタルヘルス、 医療従事者の幸福、職場の幸福に関するフレームワークに関する「公衆衛生局長官の勧告」を発行しています。

勧告の全文は、こちら。公衆衛生局長官室の詳細については、www.surgeongeneral.gov/priorities をご覧ください。

  • 監訳 加藤恭郎(緩和医療、消化器外科、栄養管理、医療用手袋アレルギー/天理よろづ相談所病院 緩和ケア科)
  • 記事担当者 生田亜以子
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  • 原文掲載日 2025/1/3

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