【SABCS24】乳がんctDNAによるニラパリブの再発予測:ZEST試験結果

ステージ1~3の乳がん患者において治療後のctDNA検出率が低かったため、研究を早期中止

循環腫瘍DNA(ctDNA)を有する患者における乳がん再発予防を目的とするニラパリブ(販売名:ゼジューラ)の評価として設計されたZEST臨床試験において、ctDNA陽性となった患者は十分な人数にならなかった。この試験結果が、2024年12月10日から13日まで開催されたサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)で発表された。

この試験から得られた教訓として、研究者らは、ZEST試験のように治療完了を待つのではなく治療中にctDNA検査を開始することと、高リスク疾患患者を含めることを提案しており、それによって、ctDNA検査で陽性となり治療介入の対象となる患者数が増える可能性がある。

治療後に微小残存病変(MRD)を有する患者を特定し、適切な治療で介入することは、疾患の再発を遅らせたり予防したりするために非常に重要である、と研究発表者のNicholas Turner医学博士(ロンドンのロイヤル・マースデン病院・がん研究所、臨床研究開発部長)は説明した。

Turner氏らは、MRDを有する(本試験では推奨治療コース終了後にctDNAが存在すると定義)乳がん患者においてPARP阻害薬ニラパリブが再発を予防する可能性を評価するために、ZEST第3相臨床試験を開始した。

「試験の目的は、検出可能なctDNAを有するために再発リスクが高いステージ1〜3の乳がん患者に対して新たな治療戦略を開発することでした」とTurner氏は語った。

本試験への参加要件は、トリプルネガティブまたはBRCA遺伝子変異陽性、ホルモン受容体(HR)陽性のステージ1~3乳がんであること、推奨された治療が終了していること(HR陽性乳がん患者は安定したホルモン療法の継続が許可された)、各患者の腫瘍に特異的な16の遺伝子変異について血液サンプルを調べる個別検査の結果、検出可能なctDNAを有していることであった。

本試験への適格性を判定するためにctDNA検査を受けた1,901人のうち、147人(7.7%)が検出可能なctDNAを有し、適格となった。これらの患者のうち55%が治療完了後6カ月以内に検出可能なctDNAを有していた。147人中98人は最初の検査で検出可能なctDNAを有していたが、その時点で51人(55%)はすでに画像診断で検出可能な疾患再発がみられた。

その後の検査で検出可能なctDNAがあった48人の患者のうち、21人(44%)は初めてctDNA陽性となった検査時点で画像診断で検出可能な再発がみとめられた。

検出可能なctDNAがない患者と比較して、ctDNA陽性患者は、リンパ節転移がある、腫瘍径が大きい、病期がステージ3である、術後療法後に残存病変がある、術前/術後の両方で投与を受けている可能性が高かった。

試験終了前に40人の患者が登録され、ニラパリブ群とプラセボ群に無作為に割り付けられた。これはニラパリブの有効性を有意義に評価するには不十分な患者数であったが、無再発期間中央値はニラパリブ群11.4カ月、プラセボ群5.4カ月であった。ニラパリブ群では6人、プラセボ群では4人がデータカットオフ時点で無再発を維持していた。

「ニラパリブの有効性については、登録数の少なさと試験の早期終了によって結論を出せませんが、この試験が直面した課題は、今後、臨床試験を設計するにあたり参考になるものです」とTurner氏は述べた。

「第一に、検出可能なctDNAを有する患者の半数はすでに疾患が再発していたことから、今後の研究では、ctDNA検査開始の時期として治療終了を待つのではなく、術前投与の終了前にすべき」と提言し、術前療法期間中、定期的にctDNA検査を行えば、術前療法後もctDNA陽性の患者を同定するのに役立つと指摘した。このことは、術前療法でがんが消失しなかった場合に急速に再発する可能性のあるトリプルネガティブ乳がんに特に関連すると付け加えた。

「さらに、今後の研究では、術前投与後に病理学的完全奏効が得られなかったステージ2Bまたは3のがん患者など、ctDNA陽性を示す可能性が高い高再発リスク患者にも焦点を当てる必要があります。 また、再発までのリードタイムが長く、ctDNAがより大きな影響を与える可能性のある異なるサブタイプに焦点を当てることも考えられます」と彼は述べた。

※本試験の情報開示については、原文を参照のこと。

  • 監修 高光恵美(生化学、遺伝子解析)
  • 記事担当者 山田登志子
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  • 原文掲載日 2024/12/13

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