【SABCS24】中リスク乳がん患者のほとんどは乳房切除後の胸壁照射を安全に回避できる可能性


BIG 2-04 MRC SUPREMO臨床試験によると、中リスク乳がん患者は乳房切除後に胸壁照射(CWI)を受けても受けなくても、10年生存率は同程度であったという結果が、2024年12月10日から13日まで開催されたサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)で発表された。
 
「乳房切除後の胸壁照射(CWI)は、腋窩リンパ節転移陽性が4個以上ある早期乳がん患者のほとんどにとって標準治療ですが、リンパ節転移が少ない患者やリンパ節転移陰性患者におけるCWIの役割については依然として議論の余地があります」と、エジンバラ大学教授で本研究の発表者であるIan Kunkler氏(MA, MB BChir)は述べた。
 
ガイドラインはさまざまであるが、胸壁照射(CWI)は一般的に以下のような中リスク乳がん患者の治療に用いられると説明した。リンパ節転移陽性が1~3個である患者、またはリンパ節転移陰性だが再発リスクを高める他の因子、例えばグレード3の組織型やリンパ管浸潤がみられる患者と定義される。
 
中リスク乳がん患者における乳房切除後CWIの影響を評価するため、Kunkler氏らはBIG 2-04 MRC SUPREMO第3相臨床試験を実施した。この国際共同試験には、数カ国から以下の患者が登録された:
  
  ●腫瘍径が 50mm 以下(pT1-2)で腋窩リンパ節転移が1~3個陽性(N1)
  ●腫瘍径が 50mm をこえ(pT3)、リンパ節転移陰性(N0)
  ●腫瘍径が 20mm をこえるが 50mm 以下(pT2)、リンパ節転移陰性(N0)、および組織学的グレード3または
リンパ管浸潤またはその両方
 
不適格および離脱による除外を経て解析対象となった患者1,607人のうち、乳房切除後に胸壁照射(CWI)を受ける群(CWI群)に無作為に割り付けられた患者は808人、乳房切除後にCWIを省略する群(CWI非実施群)に割り付けられた患者は799人であり、患者はガイドラインに準拠した腋窩リンパ節郭清および全身治療も受けた。
 
CWIを受けた群と受けなかった群で全生存率に有意差はなく、CWIを受けた群では81.4%、受けなかった群では82.0%の患者が追跡期間中央値9.6年後に生存していた。CWIは胸壁再発のリスクを半分以上減少させたが、胸壁再発の絶対率は2%未満しか減少せず、これは臨床的に有意な差ではないとKunkler氏は説明した。
 
研究者らは、特定の患者グループにおけるCWIの影響を分析したところ、N0の患者もN1の患者も、CWIによって生存利益が得られることはなく、リンパ節転移陽性の患者であっても、乳房切除後のCWIを省略しても安全である可能性があることを示唆した。
 
「本研究は、乳房切除後の胸壁照射(CWI)が中リスク乳がん患者の10年生存率に影響を与えないことを示しています」とKunkler氏は述べた。「乳房切除後CWIの対象となる患者の多くは、その治療を必要としない可能性があるため、この結果は、患者と臨床医の間で意思決定を共有するための重要な検討事項となります」。
 
この試験の限界は、pT3、N0の患者の登録が少なかったことと、全生存期間が予想より良好であったことである。

本研究の資金提供については原文を参照のこと

  • 監修 小坂泰二郎(乳腺外科/JA長野厚生連 佐久総合病院 佐久医療センター)
  • 記事担当者 青山真佐枝
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  • 原文掲載日 2024/12/12

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