【SABCS24】 術後タモキシフェンは、放射線治療を受けない「良好リスク」非浸潤性乳管がん(DCIS)の再発リスクを軽減

乳房温存手術を受け放射線治療を受けなかった「良好リスク」の非浸潤性乳管がん(DCIS)患者において、タモキシフェン(販売名:ノルバデックス)は同一乳房における再発リスクを有意に減少させるという結果が、2024年12月10日から13日まで開催されたサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)で発表された。

「良好リスク」DCIS は、グレード1または2、腫瘍径2.5cm以下、切除断端3mm以上と定義された。
 
米国総合がんセンターネットワーク(NCCN)の現在のガイドラインでは、ホルモン受容体陽性のDCISと診断された後に乳房温存手術を受ける患者には、放射線治療を同時に受けるかどうかにかかわらず、術後にタモキシフェンを考慮するよう勧めている。しかし、患者の個別の再発リスクなど多くの要因が、希望する治療法の選択肢に影響を与える可能性がある。
 
 「特定の治療が患者に与える影響について提供できる情報が増えるほど、患者が自分にとって正しい選択をできるようになります」と、Jean L. Wright医師(ノースカロライナ大学ラインバーガー総合がんセンター[チャペルヒル]放射線腫瘍学科長)は述べている。「患者に明確な情報を提供できることが、最善の治療につながると信じています」。
 
Wright医師らは、2つの臨床試験のデータを組み合わせて、放射線治療を受けた非浸潤性乳管がん(DCIS)患者と受けなかったDCIS患者の転帰を評価した。NRG/RTOG9804試験では、「良好リスク」DCIS患者が放射線治療を受ける群と放射線治療を受けない群に無作為に割り付けられた。ECOG-ACRIN E5194試験では、放射線治療を受けなかった高リスクDCIS患者と「良好リスク」DCIS患者の転帰が検討された。両試験とも、すべての患者は希望によりタモキシフェンの服用を許可された。
 
 Wright医師およびNRG/RTOG 9804試験の責任医師であるBeryl McCormick医師(スローンケタリング記念がんセンター腫瘍内科医)らは、両試験で術後放射線療法を受けなかった患者におけるタモキシフェンの再発予防効果を評価しようとした。彼らは878人の患者の結果を分析し、その43%が術後にタモキシフェンを投与された。中央値で約15年の追跡調査後、117人の同側(同じ乳房)再発が診断された。
 
同側再発の推定15年リスクは、タモキシフェンを投与された患者では11.4%、投与されなかった患者では19%であり、統計学的に有意な差があった。データを再発の種類別に分析すると、タモキシフェンの使用は同側浸潤性乳がんの発生率低下と有意に関連していたが、同側非浸潤性乳管がん(DCIS)の再発率には有意差はなかった。
 
研究者らは、原発性DCISの大きさが同側再発のリスクと有意に関連していることに注目し、腫瘍の大きさで調整したところ、タモキシフェンが再発の抑制と独立して関連していることを見出した。DCISの大きさで調整すると、タモキシフェンを投与された患者は投与されなかった患者より同側再発を経験する可能性が44%低かった。
 
同様に、原発性DCISのグレードは浸潤性同側再発のリスクと有意に関連していたため、DCISのグレードで調整したところ、タモキシフェンは浸潤性再発の抑制と独立して関連していた。DCISのグレードで調整すると、タモキシフェンを投与された患者は、投与されなかった患者に比べ、浸潤性同側再発を経験する可能性が51%低かった。

Wright医師は、術後療法の選択肢を検討する際、浸潤性再発のリスクは最も重要な因子の一つであると指摘した。「これまで入手可能なデータでは、予後因子が良好な患者において、タモキシフェンが浸潤性再発と非浸潤性(DCIS)再発にどの程度影響するかについて矛盾していたため、このようなしっかりしたデータセットにおける今回の発見はそれを明らかにしています」と同氏は述べた。
 
Wright医師はさらに、放射線治療を見送ることを選択した患者の場合、タモキシフェンの有無にかかわらず再発リスクを知ることは、患者がさまざまな術後療法の利益や不利益を最も効果的に比較検討するのに役立つと強調した。「タモキシフェン、放射線療法、あるいはその両方、また術後療法の省略はすべて妥当な選択肢です」。「現在、私たちは、患者がこれらの中から選択するのに役立つより多くのデータを持っています」。
 
この研究の限界として、予後のゲノム指標に関する情報の欠如が挙げられる。この指標は、進行リスクの高い患者と低い患者を層別化するために使用される頻度が増加している。さらに、このデータは 「良好なリスク 」の狭い基準に適合する患者のみから収集されたものであり、異なるDCISの特徴を有する患者においてこれらの結果を評価するためには、より多くのデータが必要である。
 
本研究は、米国国立衛生研究所(NIH)の米国国立がん研究所(NCI)からNRG OncologyおよびECOG-ACRINへの助成金により資金提供された。Wright医師は利益相反がないことを宣言している。

  • 監修 小坂泰二郎(乳腺外科/JA長野厚生連 佐久総合病院 佐久医療センター)
  • 記事担当者 青山真佐枝
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  • 原文掲載日 2024/12/12

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