【SABCS24】タキサン系化学療法へのアントラサイクリン追加が再発リスクの高いHR+/HER2-乳がんに有効な可能性
ゲノム検査により、リンパ節転移陰性、HR陽性、HER2陰性の乳がん患者のうち、化学療法レジメンへのアントラサイクリン追加が有益となる患者を特定
オンコタイプDXゲノム検査で再発リスクが高いと判定されたリンパ節転移陰性、ホルモン受容体(HR)陽性、HER2陰性の早期乳がん患者において、アントラサイクリン+タキサンベースの補助化学療法レジメンを受けた患者はタキサンベース補助化学療法レジメンのみを受けた患者と比較して、転帰が良好であった。この結果が、 2024年12月10日から13日に開催されたサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)で発表された。
「HR陽性HER2陰性は米国で最も一般的なタイプの乳がんであり、補助化学療法が有益かどうか、有益であればどの種類の化学療法が有益かを判断しなければならないことは頻繁にあります」と、本研究発表者のNan Chen医師(シカゴ大学医学部、内科助教)は説明した。このタイプの乳がんの患者は一般的にタキサンベース補助レジメン、またはタキサン+アントラサイクリンベース補助レジメンのいずれかを受けるが、アントラサイクリンを追加する、より強力な化学療法の使用を裏付けるデータは限られている、とChen医師は言う。
Chen医師らは、TAILORx試験のデータを解析し、ステージ I/II、リンパ節転移陰性、HR陽性、HER2陰性乳がんに対して手術後にタキサン+アントラサイクリン/シクロホスファミドおよび類似レジメン (T-AC) を受けた患者と、タキサン+シクロホスファミド (TC)化学療法を受けた患者の転帰を比較した。試験では、化学療法が効果を発揮する可能性のある患者を予測するために、OncotypeDX検査を使用した。広く使用されている、この遺伝子検査は、再発スコア (RS) を0から100で示し、スコアが低いほど再発リスクが低い、つまり、副作用と比べて補助化学療法のメリットが少ないことを示唆する。
再発スコア11~25の患者は、ホルモン療法のみを受ける群、ホルモン療法と医師が選択する化学療法レジメンを受ける群のいずれかに無作為に割り当てられ、再発スコア26以上の患者は、ホルモン療法と医師が選択する化学療法レジメンを受けた。試験対象患者2,639人のうち、2,197人がタキサン+シクロホスファミド (TC)、442人がタキサン+アントラサイクリン/シクロホスファミドおよび類似レジメン (T-AC)による治療を受けた。T-ACとしては、アントラサイクリン+シクロホスファミドの後にタキサン投与、アントラサイクリン+シクロホスファミド+ドセタキセルの同時投与、またはそれ以外のアントラサイクリン+タキサン併用の3つのレジメンのいずれかで投与が行われた。
年齢、グレード、腫瘍サイズ、エストロゲン/プロゲステロン受容体の状態で調整した後、再発スコア31以上かつ腫瘍が2cm以上の患者におけるT-ACの使用は、5年後の生存転帰の改善と関連していた。
再発スコア31以上の患者のうち、TCを受けた患者に対してT-ACを受けた患者は、5年時点において無遠隔転移率(90.7%対96.1%)、無遠隔転移生存率(89.5%対95.4%)、無再発率(89.1%対94.1%)の数値が高く、無再発生存率(87.9%対93.4%)および全生存率(93.1%対97.3%)に改善傾向がみられた。
アントラサイクリン療法の効果は、再発スコアが31を超えると増加することも判明したが、スコアが26~30の患者ではその傾向はみられなかった。
Chen医師らの研究で、閉経前および閉経後の患者においてアントラサイクリン療法の効果が同様であることがわかり、同医師は、その効果がアントラサイクリンの卵巣抑制作用によるものではないことを示唆していると述べた。
「今回の結果は、生物学的にトリプルネガティブ疾患に近い腫瘍にアントラサイクリンをより積極的に投与するという現在の臨床診療と一致しています」とChen医師は述べる。「HR陽性、HER2陰性腫瘍のほとんどは再発スコア31以上ではありませんが、再発スコアが非常に高い腫瘍の多くはエストロゲン受容体の発現が少なく、増殖が活発で、スペクトル上でトリプルネガティブ疾患に近い可能性があります。トリプルネガティブ疾患では、アントラサイクリンの有用性がはるかに明確に実証されています」。
Chen医師の説明によると、無遠隔転移生存期間など、いくつかの副次評価項目は腫瘍が2cm以上の場合にのみT-AC群で高かったのに対して、主要評価項目の無遠隔転移期間は腫瘍サイズに関係なくT-AC群で高かった。Chen医師らは、引き続きこれらの知見を検証し、他の患者集団におけるアントラサイクリンの使用を検討していく予定である。
「これらの研究結果は、臨床治療に何らかの影響を与えると私たちは考えていますが、注意が必要です」とChen医師は言う。「これまでの試験では、アントラサイクリンによる再発抑制の早期効果は、白血病など乳がん以外の原因による死亡の晩期リスクによって相殺される可能性があることが示されています。そのため、より長期の追跡調査が必要であり、アントラサイクリンベースの化学療法を検討する前に、これらのリスクについて患者と話し合う必要があります」。
この研究の限界としては、TAILORx研究の事後解析であるという事実が挙げられる。TAILORx研究は、アントラサイクリン系薬剤の有用性を評価するために特別に設計されたものではなく、結果に偏りが生じる可能性がある。さらに、低リスク患者 (再発スコア26~30) におけるアントラサイクリン系薬剤の有用性は、この集団の再発リスクが全体的に低いため測定が困難であった可能性がある。
この研究は、米国国立衛生研究所(NIH)の国立がん研究所(NCI)、がん研究財団、リン・セージ乳がん財団の支援を受けた。Chen医師は、Guardant Health社、第一三共社、Stemline Therapeutics社、Seagen社、AstraZeneca社、Novartis社からのコンサルタント料受領を報告している。
- 監修 野長瀬祥兼(腫瘍内科/市立岸和田市民病院)
- 記事担当者 山田登志子
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- 原文掲載日 2024/12/13
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