【SABCS24】サンアントニオ乳がんシンポジウムでのダナファーバーの研究発表

ダナファーバーがん研究所の研究者らは、2024年12月10日から13日まで開催される第47回サンアントニオ乳がんシンポジウムで、30件を超える研究を発表する。サンアントニオ乳がんシンポジウムは、世界で最も包括的な乳がんの学術会議であり、世界中から何千人もの乳がん専門家が集まる。

ダナファーバー研究者による発表の一部は次のとおり。

GS1-09:OlympiA - 生殖細胞系列BRCA1/BRCA2病原性変異および高リスクHER2陰性原発性乳がん患者を対象とした(術前)術後補助化学療法後の補助療法としてのオラパリブ(販売名:リムパーザ)の第3相多施設共同ランダム化プラセボ対照試験、長期追跡

発表者:Judy Garber医師、公衆衛生学修士
日時:12月11日(水)午前7:15 CST、SABCSプレスプログラムにて

OlympiAは、BRCA陽性、HER2陰性の乳がん患者1,836人を対象に、化学療法、手術、放射線療法の完了後1年間、オラパリブを投与する群またはプラセボを投与する群にランダムに(1:1)割り付けた多施設共同二重盲検試験である。この試験の以前の結果に基づき、オラパリブはHER2陰性、BRCA陽性乳がんの特定の患者に対する補助療法として2022年に承認された。ダナファーバーのがん遺伝学および予防部門長であるJudy Garber医師は、中央値6.1年の追跡調査後におけるOlympiAの無浸潤疾患生存、無遠隔転移生存、および全生存のデータを発表する。

GS2-06:COMET研究(AFT-25)における低リスクDCISに対する積極的モニタリングまたは手術後の患者報告アウトカム 

発表者:Ann Partridge医師
日時:12月12日(木)午前7:15 

大規模な第3相COMET(内分泌療法の有無にかかわらず手術とモニタリングを比較する)試験では、低リスクDCIS(乳がんの一種である乳管内がん)に対する積極的モニタリングを受ける群と、放射線療法の有無にかかわらず手術を含む現在の治療ガイドラインに従う群に、女性を無作為に割り付けた。COMETは、低リスクDCISのさまざまな管理戦略を検討する米国初の大規模な第3相ランダム化臨床試験である。

この試験には957人の患者が登録された。患者は2年間にわたり、生活の質、不安、抑うつ、DCISに関する心配、症状の経過について質問票に回答した。ダナファーバーの腫瘍内科暫定部長であるAnn Partridge医師が、COMET試験の患者報告アウトカムを発表する。

RF3-01:TBCRC 056:BRCAまたはPALB2変異乳がん患者に対するニラパリブ(販売名:ゼジューラ)とドスタルリマブ(販売名:Jemperli[ジェンベルリ])の併用による術前療法の第2相試験:ER+/HER2-コホートの結果

発表者:Erica Mayer医師、公衆衛生学修士
日時:12月13日金曜日、午後12:00

PARP阻害剤であるニラパリブと抗PD-1抗体であるドスタルリマブの併用による術前治療のランダム化第2相試験の初期結果では、ホルモン受容体陽性(HR+)、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)陰性乳がんおよび遺伝的に乳がんリスクが高い患者コホートで有望な結果が示され、病理学的完全奏効率は18.8%であった。TBCRC 056と呼ばれるこの試験の結果は、これらの非化学療法アプローチのさらなる調査が必要であることを示唆している。

PARP阻害剤は、BRCA1/2またはPALB2変異乳がん患者の治療薬として承認されている。前臨床研究では、PARP阻害剤が、間質腫瘍浸潤リンパ球(sTIL)と呼ばれる免疫細胞を腫瘍内に取り込むことで、抗PD-1抗体などの免疫チェックポイント阻害剤に対する腫瘍の感受性を高める可能性が示唆されている。この研究では、ニラパリブによる治療開始から3週間後のsTILの変化を測定し、腫瘍のコア生検に基づいて平均絶対増加率が11.9%であることがわかった。遺伝的に乳がんリスクが高いトリプルネガティブ乳がん患者コホートのデータは、後日報告される。

P5-07-28: HR+/HER2−転移性乳がん患者の初回治療としてレトロゾールと併用した次世代CDK4選択的阻害剤atirmociclib[アティルモシクリブ]

発表者:Antonio Giordano医師、医学博士
日時:12月13日(金)午後12時30分

HR陽性/HER2陰性転移乳がんの初回治療としてホルモン療法レトロゾールとの併用で検討されている新しいCDK4選択的阻害剤は、進行中の第1/2a相試験で中央値11.1カ月の追跡調査後に良好な安全性と忍容性を示し、疾患に対する活性の兆候を示した。アティルモシクリブ(PF-07220060)と呼ばれるこの新しい薬剤は、CDK6ではなくCDK4を特異的に阻害する。この試験の別のコホートの以前の分析では、CDK4/6阻害剤や内分泌療法を含む2つ以上の以前の治療後に進行した転移性乳がん患者における忍容性と臨床活性が示された。

この試験では、34人の患者がレトロゾールとの併用でアティルモシクリブを投与された。これらの患者は転移性疾患に対する抗がん剤投与を受けておらず、CDK4/6阻害剤も未治療であったが、55%はがん摘出手術を受けており、47.1%は以前に治療を受けていた。試験開始時に測定可能な疾患を有していた患者32人のうち、半数が治療に反応を示した。重篤な有害事象は発生しなかったが、患者1人がCDK4阻害剤の投与を中止し、3人は投与量を減らした。

RF1-01:肥満および乳がんの女性における減量介入(WLI)の代謝および炎症バイオマーカーへの効果:乳がん減量(BWEL)試験の結果 (Alliance)

発表者:Jennifer Ligibel医師
日時:12月11日(水)午後12:00

第3相乳がん減量試験(BWEL)では、電話による減量介入により、早期乳がんの治療を受けた肥満患者のがん再発、その他の健康問題、生存に関連することが知られている代謝および炎症バイオマーカーが有意に改善した。BWEL試験では、2年間の減量介入と健康教育を受ける群と、健康教育のみを受ける群に患者を無作為に割り付けた。BWEL試験の今後の追跡調査では、これらのバイオマーカーの変化ががんの結果の改善を予測するかどうかを評価する予定である。

この試験には、ステージ2または3のHER2陰性乳がんを患い、肥満または肥満予備群を示す体格指数を持つ女性3,180人が登録された。健康教育を受けた患者と比較すると、減量介入に参加した患者は、6カ月後と2年間の追跡調査後の両方で、インスリン、レプチン、インスリン抵抗性、C 反応性タンパク質のレベルが有意に低下した。

LB1-02:MARGOT/TBCRC052:ステージ2-3 HER2+乳がん患者における術前パクリタキセル/margetuximab[マルゲツキシマブ]/ペルツズマブ(TMP)とパクリタキセル/トラスツズマブ/ペルツズマブ(THP)を比較するランダム化第2相試験

発表者:Adrienne G. Waks医師
日時:12月10日(火)午後6:00

早期HER2陽性乳がん患者におけるマルゲツキシマブ+化学療法またはトラスツズマブ+化学療法を比較するランダム化第2相試験の初期結果では、2つのレジメン間で病理学的完全奏効に統計的に有意な改善は見られなかった。患者は、治療歴のないステージ2または3のHER2陽性乳がんであり、CD16A遺伝子型はFFまたはFVのいずれかであった。マルゲツキシマブはトラスツズマブと作用機序が類似しているが、患者の免疫系を活性化してがん細胞を殺す上でより効率的であると考えられている。

この試験は、早期がんと新たに診断された患者を対象にマルゲツキシマブとトラスツズマブを比較した初めての研究である。以前の研究では、マルゲツキシマブ+化学療法の併用は、HER2陽性転移性乳がんに対して多くの治療歴のある患者で、トラスツズマブ+化学療法の併用と比較して、転帰をわずかに改善した。この試験では、2つの治療法の安全性と忍容性は同等であることがわかった。研究者は、患者の追跡調査を継続し、長期にわたる生存率についてさらに詳しく調べる予定である。

  • 監修 下村昭彦(腫瘍内科/国立国際医療研究センター病院乳腺・腫瘍内科)
  • 記事担当者 仲里芳子
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  • 原文掲載日 2024/12/03

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