【SABCS24】低リスク非浸潤性乳管がんでは監視療法でも手術でも生活の質は同等:COMET試験

監視療法を受けた低リスクの非浸潤性乳管がん(DCIS)患者は、現行の標準治療を受けた患者と同等の身体的、感情的、心理的転帰を報告した。このCOMET臨床試験の結果が、2024年12月10日から13日に開催されたサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)で発表された。

本研究結果は同時にJAMA Oncology誌にも掲載された。

「監視療法」とは、患者を注意深くモニタリングし、手術はがんを発症した患者に限って行う戦略である。

マンモグラフィやその他の乳がんスクリーニング法が着実に増加したことにより、非浸潤性乳管がん(DCIS)の症例がさらに多く発見されるようになった。しかし、症例の25%から60%は浸潤性がんに進行するため、DCISの最適な治療法の決定については議論の余地がある。SABCS でも発表されたCOMET試験の主要解析では、低リスクDCIS患者に対する監視療法を現行の標準治療と比較すると、浸潤性同側 (同じ乳房) 乳がん発生率が同程度となることが研究者によって判明した。

しかし、治療の段階的縮小に伴う一般的な懸念は、患者ががんの悪化や再発について感じる不安が増す可能性があることだと、Ann Partridge医師(公衆衛生学修士)は説明した。ダナ・ファーバーがん研究所の腫瘍内科部門暫定部長で、ハーバード大学医学部教授であるPartridge医師は、生活の質に関して監視療法と現行治療とを比較するCOMET試験の二次解析を発表した。

「監視療法を受けている女性たちがどのように感じているか、そしてそれが彼女たちの全体的な生活の質、心理社会的健康、DCISに関する心配、不安や抑うつ、その他の関連症状にどのような影響を与えるかを理解することが重要です」とPartridge医師は述べる。

Partridge医師らは、微小浸潤性または浸潤性疾患の徴候がないグレード1または2、ホルモン受容体陽性、HER2陰性DCIS患者995人を登録したCOMET試験の患者報告アウトカムを評価した。患者を監視療法を受ける群484人、ガイドライン準拠治療(手術のみ、または手術+補助放射線療法)を受ける群473人に無作為に割り付けた。監視療法群の患者はいつでも手術を受けることを選択でき、腫瘍が浸潤進行の徴候を示した場合は手術が必要とみなした。両治療群の患者は希望すれば、ホルモン療法を受けることもできた。

患者には、試験開始時、6カ月後、1年後、および治療割り付け後1年ごとに、臨床的に検証されたいくつかの質問票に回答するよう求めた。質問票は、健康関連の生活の質 (身体的および精神的要素の両方を含む)、不安、抑うつ、DCISに関する心配、および痛みなど乳がん治療に伴う症状を評価するように作成されたものである。1件以上の質問票に回答した患者を研究の対象とした。

全体的な健康関連の生活の質は、試験開始時から 2 年間安定しており、2治療群間で有意差はなかった。また、不安スコアと DCISに関する心配にも経時的な有意差はなかった。抑うつスコアは2治療群間で有意差はなかったが、ガイドライン準拠ケア群では、監視療法群と比較して、時間の経過とともに抑うつスコアが高くなり、抑うつ発症の可能性が高くなる傾向がみられた。

健康関連の生活の質に関する身体機能スコアは、時間の経過とともに2群間で有意差が生じ、監視療法群の患者の平均スコアはガイドライン準拠治療群の患者よりも低かった。しかし、患者全体の29%が割り当てられた治療法を順守しなかったため、研究者らは割り当てられた治療を受けた患者について別の解析を行った。この解析では、ガイドライン準拠治療を受けた患者の身体スコア平均は、監視療法を受けた患者のそれと比べて時間の経過とともに一時的かつ有意に低かった。ガイドライン準拠治療群の患者が報告した腕の問題、乳房の痛み、感覚障害 (しびれなど) による負担は平均して有意に大きかったが、平均差は2年後までに解消された。

研究者らが人種、年齢、腫瘍のグレード、ホルモン療法の使用に基づいてスコアを正規化したところ、2治療群間で時間の経過に伴う身体機能の有意差は観察されなかった。

Partridge医師は、2治療群における実体験の類似性は励みになるものであり、どちらの治療法も患者の生活の質に顕著な悪影響を及ぼさなかったことを示していると考える。

「今回のデータは、短期的には、患者の経験の観点から、監視療法が合理的なアプローチであることを示唆しています」と同医師は言う。「妥当な長期的データがまとまれば、この治療法を低リスクDCIS患者に対する管理選択肢の一つとして検討してもよいでしょう」。

この研究の限界としては、人種的・民族的少数派グループに属する女性の代表性が低いこと、40歳未満の患者が除外されていること、追跡期間が2年と比較的短いことなどが挙げられる。

  • 監修 勝俣範之(腫瘍内科/日本医科大学武蔵小杉病院)
  • 記事担当者 山田登志子
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  • 原文掲載日 2024/12/12

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