【SABCS】オラパリブは高リスクBRCA陽性乳がんの長期生存に有益:OlympiA試験
標準治療後にオラパリブ(販売名:リムパーザ)を投与された高リスクBRCA陽性乳がん患者は、追跡期間中央値6.1年時点で、プラセボを投与された患者と比較して良好な生存転帰を維持していた。この第3相OlympiA臨床試験の最新結果が、2024年12月10日から13日に開催されたサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)で発表された。
「OlympiA試験は、病原性生殖細胞系列BRCA変異のある高リスク乳がん患者を対象として、標準治療完了後に経口PARP阻害薬であるオラパリブを1年間追加投与することを検証するものです」と、研究発表者のJudy E. Garber医師(公衆衛生学修士、ダナファーバーがん研究所がん遺伝学・予防部門長)は述べた。
OlympiA試験は、多施設共同二重盲検試験であり、BRCA変異陽性、HER2陰性の乳がん患者1,836人を化学療法、手術、放射線療法の完了後1年間、オラパリブを投与する群またはプラセボを投与する群のいずれかに(1:1)無作為に割り付けた。本試験のこれまでの結果に基づき、オラパリブは2022年に、BRCA変異陽性、HER2陰性乳がんの一部(再発高リスク)の患者に対する補助療法として承認されている。
「今回発表した3回目の事前規定された中間解析のデータは、BRCA1またはBRCA2の生殖細胞系列変異のある高リスクHER2陰性乳がん患者に対するオラパリブの有効性をさらに裏付けるものです」とGarber医師は述べた。
追跡期間中央値6.1年の時点で、オラパリブ治療を受けた患者は、トリプルネガティブ乳がんとエストロゲン受容体(ER)陽性乳がんの両サブグループにおいて、生存転帰に有意な改善を示し続けた。研究の主要評価項目である無浸潤疾患生存と遠隔無病生存はいずれも達成され、オラパリブはそれぞれのリスクを35%低下させた。6年時点で、オラパリブ治療を受けた患者の79.6%は浸潤性再発がなく、83.5%は遠隔再発がなかったのに対して、プラセボ群ではそれぞれ70.3%と75.7%であった。
さらに、術後PARP阻害薬は死亡リスクの28%低下と関連しており、乳がん治療に関連するまれな合併症として起こる可能性がある骨髄異形成症候群(MDS)または急性骨髄性白血病(AML)の発生リスクは上昇しなかった。
「OlympiA試験で進行中のデータから、追跡調査段階においてこれらの乳がん患者における有益性の持続と増大が認められ、再発予防だけでなく全生存期間の改善も確認できます」とGarber医師は言う。「この有効性の実証により、治療開始時に治療法が奏効する可能性のある患者をみきわめ、最も適切なタイミングでオラパリブを治療に導入する計画を立てることがこれまで以上に重要になります」。
オラパリブ群ではBRCA関連二次がんが38例報告され、プラセボ群の57例と比べて少なかったが、Garber医師は、確固たる結論を導くにはさらなるデータと解析が必要だと指摘した。両群で同人数が妊娠し、これは励みになるとともに、この患者集団の年齢が若いことを浮き彫りにしていると同医師は付け加えた。
「これらのデータはオラパリブの安全性を浮き彫りにしており、したがってPARP阻害薬をBRCA関連低リスク乳がんの治療に応用できる可能性を示しています」とGarber医師は指摘する。「また、このデータにより、がん遮断のために開発される安全で効果的な経口薬、つまり、複数種の悪性腫瘍へと変化し始めたBRCA変異キャリアの細胞を除去する目的で断続的に投与する薬の非常に高い可能性についても検討できるようになります」。
この研究の限界の1つは、すべてのサブセットが同程度の人数ではなかったことだが、すべてのサブセットで有効性が実証され続けていることは非常に心強いことだとGarber医師は指摘する。
本研究は、AstraZeneca社とMerck and Co., Inc.社の支援を受けた。Garber医師は利益相反がないことを宣言している。
- 監修 下村昭彦(腫瘍内科/国立国際医療研究センター病院乳腺・腫瘍内科)
- 記事担当者 山田登志子
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- 原文掲載日 2024/12/11
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