若年発症乳がん既往歴あるBRCA変異保持者は、リスク軽減手術の恩恵を受ける可能性【SABCS24】
生殖細胞系列BRCA遺伝子変異を有し、40歳以前に乳がんと診断され、両側リスク低減乳房切除術(RRM)やリスク低減卵巣卵管摘出術(RRSO)を受けた患者は、これらの手術を受けなかった患者に比べて、再発、二次性乳がんや卵巣悪性腫瘍、および死亡の発生率が低かったという結果が、2024年12月10-13日に開催されたサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)で発表された。
「両側リスク低減乳房切除術(RRM)とリスク低減卵巣卵管摘出術(RRSO)の有益性は、がんの既往歴のないBRCA遺伝子変異保持者には示されていますが、若年発症乳がんの既往歴のあるBRCA遺伝子変異保持者に対する影響はあまり明らかではありません」と、発表者であるMatteo Lambertini医学博士(イタリア-IRCCS Policlinico San Martino Hospital /ジェノバ大学の腫瘍内科准教授、腫瘍内科顧問)は述べた。
両側リスク低減乳房切除術(RRM)とリスク低減卵巣卵管摘出術(RRSO)はどちらも患者の生活の質に悪影響を及ぼす可能性があり、RRSOは不妊症や早期閉経にもつながる。これは、乳がんの既往があるBRCAキャリアにとっては、更年期障害の症状を和らげるホルモン補充療法を受けることができないため、特に困難であるとLambertini氏は説明した。「このような若年層特有の特徴やニーズ、そして二次悪性腫瘍のリスクの高さを考慮すると、リスク低減手術が患者の転帰にどのような影響を及ぼすかを理解することは、これらの手術のリスクと利益を慎重に比較検討する上で極めて重要です」と同氏は述べた。
Lambertini氏らは、RRMやRRSOと生存転帰との関連を検討するため、2000年1月から12月までの間に40歳以下でステージ1~3の乳がんと診断されたBRCAの生殖細胞系列病原性変異または病原性変異の可能性が高い患者を対象とした、国際的な多施設共同後ろ向きコホート研究であるBRCA BCY Collaboration研究の解析を行った。
解析の対象となったのは、5大陸109施設の5,290人の患者である。これらの患者のうち、3,888人が少なくとも1つのリスク低減手術を受けた:2,910人がRRM、2,782人がRRSO、1,804人がRRMとRRSOの両方を選択した。残りの1,402人はいずれの手術も受けなかった。
研究者らは、RRMまたはRRSOまたはその両方を受けることは、追跡期間中央値8.2年後の転帰の改善と関連することを発見した。
特に、RRMを受けた患者は死亡リスクが35%低く、乳がんの再発または二次原発性悪性腫瘍のリスクが42%低かった。この転帰の改善は、生殖細胞系列のBRCA変異がBRCA1またはBRCA2遺伝子のいずれに存在するかに関係なく観察された。
RRSOを受けた患者は死亡リスクが42%低く、乳がん再発または二次原発性悪性腫瘍のリスクが32%低かった。全生存期間に対するRRSOの有益性は、変異したBRCA遺伝子によって異なり、BRCA2の生殖細胞系列変異よりもBRCA1の生殖細胞系列変異を有する患者の方が生存の有益性が高かった(死亡リスクはBRCA1が56%低下、BRCA2が15%低下)。乳がんのタイプ別に検討したところ、RRSOはトリプルネガティブ乳がん患者の生存に最も有効であり(死亡リスク56%低下)、次いでホルモン受容体陽性乳がん患者の生存に有効であった(死亡リスク20%低下)。
全生存期間は、両方の手術を受けた患者と片方の手術のみを受けた患者で同程度であった。
「この国際共同研究は、若年発症乳がんの既往歴のあるBRCA遺伝子変異を有する若年者において、リスク低減手術が生存予後を改善するという最初の証拠を提供するものです」とLambertini氏は述べた。「今回の知見は、若年発症乳がんのBRCA遺伝子変異保持者に対するがんリスク管理戦略に関するカウンセリングを改善するために非常に重要であると考えています」。
この研究の限界は、後ろ向きデザインであることと、異なるリソースとガイドラインを持つ異なる医療システムの患者を対象としていることである。加えて、本分析は20年以上にわたって治療を受けた患者を対象としており、その間に生殖細胞系列BRCA検査とリスク低減手術の推奨が発展してきた。さらに、予後が良好とみなされた患者にはリスク低減手術を勧められる可能性が高かった場合、結果に偏りが生じた可能性がある。
本研究は、イタリアがん研究協会(AIRC)および欧州臨床腫瘍学会(ESMO)の支援を受けた。Lambertini氏は、Roche社、Lilly社、Novartis社、AstraZeneca社、Pfizer社、Seagen社、Gilead社、MSD社、Exact Sciences社、Pierre Fabre社、Menarini社からの顧問、Roche社、Lilly社、Novartis社、Pfizer社、Sandoz社、Libbs社、第一三共社、武田薬品工業社、Menarini社、AstraZeneca社からの講演謝礼、Gilead社、第一三共社、Roche社からの旅費助成金、Gilead社から所属機関への研究助成金を報告した。
- 監修 下村昭彦(腫瘍内科/国立国際医療研究センター病院乳腺・腫瘍内科)
- 記事担当者 青山真佐枝
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- 原文掲載日 2024/12/11
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