ウォーキングやランニングで乳癌リスク低下

キャンサーコンサルタンツ

乳癌リスクを減少させたい?それなら靴紐を結んで動き出そう。なぜなら運動には大きな効果があるから。

運動が癌リスクを減少させるのに極めて重要であることを示す証拠が相次いで出されている。このたび、新たな試験で41.5%というリスク減少の数字が示された[1]。米国疾病管理予防センター(CDC)による有酸素運動ガイドラインに適った運動をしている女性は、運動不足の女性と比較すると、肥満度指数(BMI)について補正した後も、乳癌による死亡率が41.5%低い。

意外なことに、そのガイドラインはそれほど無理なレベルではない。米国疾病管理予防センターは、週に2時間半の適度な運動(早歩きなど)、または75分間の激しい運動(ランニングなど)を勧めている[2]。つまり、週3時間弱の努力で乳癌リスクがほぼ半減するということである。

本試験は、National Walkers’ and Runners’ Health Studies の参加女性79,124人(ウォーキングをしている32,872人ならびにランニングをしている46,252人)を対象として実施された。参加女性は全員、試験開始時に癌を患っていなかった。彼女たちを11年間追跡調査し、その間に111人(ウォーキングをしている57人、ランニングをしている54人)が乳癌で死亡した。参加女性は毎週、ランニングあるいはウォーキング距離、ブラジャーのカップサイズ、体重、身長を報告した。

ランニングとウォーキングとでは同じくらいの癌予防効果があった。どちらか一方がもう一方より良いということはなく、要はエネルギー消費量の問題である。ランニングのような激しい運動をすれば、必要なエネルギー量消費にかかる時間が少なくなり、ウォーキングのような軽めの運動では、同様の成果をあげるのに2倍の時間がかかるだけのことである。自分の運動強度レベルを選び、時間を費やせば、乳癌リスクをかなり減少させることができる。

研究者らは、年齢と閉経以外に、ブラジャーのカップサイズが乳癌死亡率の最大の予測因子であると述べている。つまり、乳癌による死亡リスクはカップサイズとともに増加する。ただし、運動計画ガイドラインに従って運動した場合、カップサイズに関わらず乳癌のリスクは減少した。

では、運動と乳癌とはどんな関係にあるのだろうか?これには乳癌を成長させることが知られているエストロゲンが関わっているようである。研究者らは、運動により身体のエストロゲン分解過程に変化が起こり、癌に対するエストロゲンの影響が減るのではないかと理論立てた。さらに運動には、エストロゲンを分泌させる脂肪組織のレベルを減少させる効果もある。

結論として、運動は乳癌による死亡リスクを著しく減少させる。だから、運動の強度を決めて動き出そう!リスクレベルを大幅に下げるために必要な時間は、週2~3時間だけである。

参考文献:
1. Williams PT. Breast cancer mortality vs. exercise and breast size in runners and walkers. PLoS ONE. 2013;8(12): e80616. doi:10.1371/journal.pone.0080616.
2. How much physical activity do adults need? Centers for Disease Control and Prevention website. Available at: http://www.cdc.gov/physicalactivity/everyone/guidelines/


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翻訳担当者 太田奈津美

監修 朝井鈴佳(獣医学・免疫学)

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