簡単な介入でマンモグラフィー検診の期日を過ぎた女性の受診率が向上

<乳癌の予防、検診、治療における発展ー2014年乳癌シンポジウム主要研究ハイライト>
(折畳記事)

*この要約には抄録にはない最新データが記載されています

専門家の見解:
「乳癌の検診による検出率を向上させる方法として、画像診断の技術の発達が注目されがちだが、この研究は、女性に対して個人的に接触するだけで、検診による検出率をどれだけ向上させるかを強調するものである」と、Breast Cancer Symposium News Planning Teamの一員であるJulia White医師は話した。

カナダのブリティッシュコロンビア州にあるBC Cancer Agencyが行った大規模研究では、標準的なスケジュールで送られる検診案内の葉書に、かかりつけ医が署名したレターを添付することで、検診期日を過ぎた女性の検診受診率が大幅に向上していることを報告している。6カ月間の調査で、葉書とレターを受け取った女性は33%が検診に来たのに対し、葉書のみを受け取った女性は22%であった。この発見は、女性はかかりつけ医からの個人的な接触があれば、より多く検診を受けにくる傾向があることを示している。

「マンモグラフィー検診を効果的にするには、推奨される間隔で検診を受ける必要がある」と当該研究を行った期間にBC Cancer Agencyに所属し、現在カナダのニューブランズウィック州にあるSaint John Regional Hospitalで放射線腫瘍医であり、Dalhousie Universityで助教を務め、この研究の主著者であるElisa Chan医師はいう。「この研究は検診期日を過ぎている女性に、たとえ検診案内の葉書を送っていても、かかりつけ医からの簡単な介入があることでマンモグラフィー検診の受診率に大きな違いがもたらされることを示している」。

マンモグラフィー検診は女性の乳癌の兆候を探すX線検査である。カナダでは胸部マンモグラフィー検査のガイドラインが州により少しずつ異なる。ブリティッシュコロンビア州では、乳癌の兆候のない50歳から74歳の女性は2年毎にマンモグラフィー検査を受けるよう推奨されている。これはU.S. Preventive Services Task Forceの方針と一致している一方で、より若い年齢で検診を開始し、より頻回に検診を受けることを推奨している団体もある。

BC Cancer Agencyのマンモグラフィー検診プログラムでは検診期日の女性に一連の標準的な検診案内の葉書を送っている。この取り組みにより50歳から69歳の女性のスケジュールどおりの検診率は54%となった。

この研究において、研究者らは、過去にマンモグラフィー検診結果が正常であったが、30カ月から48カ月検診期日を過ぎているマンモグラフィー検診プログラムに参加している52歳から74歳の5,385人の女性を特定した。その女性は、無作為に標準的な検診案内の葉書を受け取る人と、かかりつけ医が個人的に署名をしたレターを受け取る人に割り当てられた。(当該研究には822人の医師が参加した。)年齢、過去の検診回数、過ぎた期日の長さは2つのグループにおいて有意差はみられなかった。

葉書のみのグループでは600人(22%)の女性が、葉書とレターのグループでは894人(33%)の女性が6カ月以内に検診を受けた。マンモグラフィー検診を過去に2回以上受けたことのある女性の検診受診率は、一度しかマンモグラフィー検診を受けていない女性に比べて2.2倍高かった。さらに、研究者は過ぎている期日が短い(30カ月から36カ月)女性では検診受診率が、より長く期日をすぎている(42カ月から48カ月)女性よりも2.4倍高いことを発見した。

Chan医師は、電話による検診案内のような他の方法に比べて、BC Cancer Agency マンモグラフィー検診プログラムによるレターを使った方法のほうが、時間を使わず、かつ資源集約型であることにも言及した。医師のレターが効果的なのは女性が一般的にかかりつけ医に信頼を寄せており、長期にわたる関係を築いているからであることにも触れている。他の検診プログラムでも、マンモグラフィー検診推奨のさらなる成果をあげるためには同様の戦略をとることが有効だと考えるかもしれない。

この研究は、Canadian Breast Cancer Foundation、BC/Yukon Division、 BC Cancer Agencyの支援を受けている。

翻訳担当者 池上 紀子

監修 廣田裕(呼吸器外科/とみます外科プライマリーケアクリニック)

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