乳癌の予防、検診、治療における発展ー2014年乳癌シンポジウム主要研究ハイライト

米国臨床腫瘍学会(ASCO) プレスリリース

本日行われた制限付きの記者向け報道会見において、2014年乳癌シンポジウムからの5つの研究に焦点が当てられた。会見では、予防的乳房切除、推奨されたマンモグラフィ検診に対する患者の遵守、乳癌術前療法後の再発リスクなどを探求する新しい研究が重点的に取り上げられた。シンポジウムは2014年9月4日~6日にカリフォルニア州サンフランシスコのMarriott Marquisホテルにおいて開催される。

本日の報道会見では、5つの主要な研究に焦点が当てられた。

女優アンジェリーナ・ジョリーの告白によってカナダのがんセンターでのBRCA遺伝子検査の受診率が倍増した可能性
最近の研究によると、カナダのある学術的医療センターにおいて公表後6カ月間にわたり、遺伝カウンセリングへの紹介を受けた人数、遺伝子検査受診率およびBRCA遺伝子変異保有者の発見がそれぞれ倍増したことが示された。これは、アンジェリーナ・ジョリーが自身のBRCA遺伝子変異の状態を理由に予防的乳房切除を受ける決意を公表し、またそれをメディアが報道したことが影響を与えたとみられている。

乳癌の手術および再建術による合併症は稀であるが、両側乳房切除術は片側乳房切除術よりも特定の合併症リスクが高い
乳房切除術を受け、さらに乳房再建術を受けた18000人以上の女性乳癌患者を対象に、術後30日間での合併症の評価を行った大規模な研究によると、乳房再建術を伴った両側の乳房切除術または片側の乳房切除術のどちらでも合併症を起こすことは稀であることがわかった。しかし、両側の乳房切除術を受けた女性では、インプラント術の失敗や輸血が必要になる率が高く、また入院期間も概して長いということが判明した。

予防的対側乳房切除術の考慮に影響を与えている要因が調査により明らかに
シカゴの2病院において新たに乳癌と診断された女性150人を対象に行われた調査で、予防的対側乳房切除術を選択した女性は、予防的対側乳房切除術を検討しなかった、または望まなかった女性に比べて、不安の度合いが高い一方、実際の乳癌再発の可能性についての知識が不足している傾向にあったことがわかった。

・単純な介入により、マンモグラフィ検診の予定日を過ぎた女性が検診を受けに戻る率が増す
カナダで行われた大規模な研究によると、プライマリケア医による署名入りの手紙を一般的な予約通知はがきに付け加えるだけで、女性がマンモグラフィ検診の受診に戻る確率が増すことがわかった。

術前化学療法への反応性と腫瘍タイプは乳癌における局所再発の強い予測因子
大規模な試験により、手術前に化学療法による治療を受けた女性において、乳癌局所再発に影響を与える因子についての新たな知見が得られた。この研究結果は、再発リスクを減らすための術後放射線療法によって有益な結果を得られる可能性のある女性患者を、より有効に特定するのに役立つものになりうる。

「患者が検診を受けたり治療の選択をする際に、何が動機になっているのかを理解することは、われわれ腫瘍学者にとって最高のケアを提供するために重要なことです」とASCOの専門家委員であるHarold Burstein医師は述べ、「今日取り上げた研究は、患者の意思決定に役立つ重要な情報を提供し、また、われわれにとって術後の再発リスクと合併症についての知識を深めるものです」と語った。

3日間にわたる今年のシンポジウムでは、学際的な共同研究を通じて治療への取り組みおよび患者ケアを強化するために、腫瘍学専門家が集結し、最新の乳癌研究の発展について考察する予定である。シンポジウムでは160の抄録が発表される予定であり、治療への取り組みおよび2014年中に新たに乳癌の診断を受けると推定される232,670人の乳癌患者に対する患者ケアの強化に焦点が当てられる。

この学際的シンポジウムは、代表的な医学専門団体である米国乳腺疾患学会(American Society of Breast Disease)、米国乳腺外科医学会(American Society of Breast Surgeons)、米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology)、米国放射線腫瘍学会(American Society for Radiation Oncology)、米国乳腺センター協会(National Consortium of Breast Centers)、 および米国外科腫瘍学会(Society of Surgical Oncology)の6団体によって共同開催される。

翻訳担当者 星野恭子

監修 林正樹(血液・腫瘍内科/社会医療法人敬愛会中頭病院)

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原文掲載日 

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