米FDAがホルモン抵抗PIK3CA変異、HR陽性HER2陰性進行乳がんにイナボリシブとパルボシクリブ+フルベストラント併用を承認

米国食品医薬品局(FDA)

2024年10月10日、米国食品医薬品局(FDA)は、FDAが承認した検査でPIK3CA変異が検出された、内分泌抵抗性、ホルモン受容体(HR)陽性、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)陰性かつ、術後補助内分泌療法中または終了後に再発した局所進行性または転移性乳がん成人患者に対して、inavolisib[イナボリシブ](販売名:Itovebi、Genentech社)とパルボシクリブおよびフルベストラントとの併用療法を承認した。

FDAはまた、パルボシクリブとフルベストラントを併用するイナボリシブによる治療の対象となる乳がん患者を同定するコンパニオン診断機器として、FoundationOne Liquid CDxアッセイを承認した。

有効性はINAVO120試験(NCT04191499)で評価された。INAVO120試験は、局所進行性または転移性疾患に対して全身療法を受けたことがなく、術後補助内分泌療法中または術後12カ月以内に疾患が進行した、内分泌抵抗性、PIK3CA変異HR陽性、HER2陰性の局所進行性または転移性乳がん患者325人を対象とした無作為化、二重盲検、プラセボ対照、多施設共同試験であった。一次内分泌抵抗性は、術後2年間の内分泌療法(ET)施行中の再発と定義され、二次内分泌療法抵抗性は、術後2年以上経過した術後ET施行中の再発、または術後ET終了後12カ月以内の再発と定義された。

患者は、イナボリシブ 9 mgまたはプラセボを1日1回経口投与する群に1対1で無作為に割り付けられ、パルボシクリブ125 mgを1日1回21日間連続経口投与し、その後7日間休薬して28日間を1サイクルとし、フルベストラント500 mgを1サイクル目の1日目と15日目、および28日間サイクルの1日目に筋肉内投与した。患者は病勢進行または許容できない毒性が認められるまで治療を受けた。無作為化は内臓疾患の有無、内分泌抵抗性(一次または二次)、地域(北米/西ヨーロッパ、アジア、その他)で層別化された。

主要評価項目はRECIST1.1による無増悪生存期間(PFS)であった。その他の有効性評価項目は、全生存期間(OS)、医師評価客観的奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)であった。PFS中央値はイナボリシブ+パルボシクリブ+フルベストラント群で15.0カ月(95%信頼区間:11.3、20.5)、プラセボ+パルボシクリブ+フルベストラント群で7.3カ月(95%信頼区間:5.6、9.3)であった(ハザード比0.43[95%信頼区間:0.32、0.59]p値 < 0.0001)。ORRはinavolisib+パルボシクリブ+フルベストラント群で58%(95%CI:50、66)、プラセボ+パルボシクリブ+フルベストラント群で25%(95%CI:19、32)であった。DOR中央値はそれぞれ18.4カ月(95%CI:10.4、22.2)、9.6カ月(95%CI:7.4、16.6)であった。63%の情報分数に基づく全生存期間の中間解析では統計学的有意差は認められなかったが、HRは0.64(95%CI:0.43、0.97)で全ベネフィットリスク評価を支持するものであった。

臨床検査値異常を含む主な副作用(20%以上)は、好中球減少、ヘモグロビン減少、空腹時高血糖、血小板減少、リンパ球減少、口内炎、下痢、カルシウム減少、疲労、カリウム減少、クレアチニン増加、ALT増加、悪心、ナトリウム減少、マグネシウム減少、発疹、食欲低下、COVID-19感染、頭痛であった。

イナボリシブの推奨用量は9 mgで、病勢進行または許容できない毒性が発現するまで、食事の有無にかかわらず1日1回経口投与する。パルボシクリブおよびフルベストラントの用量については、処方情報を参照のこと。

Itovebiの全処方情報はこちらに掲載予定である。

  • 監修 下村 昭彦(乳腺・腫瘍内科/国立国際医療研究センター乳腺腫瘍内科)
  • 記事担当者 後藤 若菜
  • 原文を見る
  • 原文掲載日 2024/10/10

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

乳がんに関連する記事

喫煙はいかにして乳がん放射線治療を複雑にするのかの画像

喫煙はいかにして乳がん放射線治療を複雑にするのか

放射線治療は基本的ながん治療のひとつであり、乳がんを含むさまざまながん種での治療に用いられている。 
放射線治療は、放射線(通常はX線)を用いてがん細胞のDNAを損傷させ、がん細胞を破壊...
がんにおけるエストロゲンの知られざる役割ー主要な免疫細胞を阻害の画像

がんにおけるエストロゲンの知られざる役割ー主要な免疫細胞を阻害

エストロゲンは、その受容体を持つ乳がん細胞の増殖を促進することが知られているが、デュークがん研究所による新たな研究では、エストロゲンが、他のがんと同様に、受容体を持たない乳がんにおいて...
乳がん個別化試験で、免疫陽性サブタイプにDato-DXd+イミフィンジが効果改善の画像

乳がん個別化試験で、免疫陽性サブタイプにDato-DXd+イミフィンジが効果改善

早期乳がんに対し、抗体薬物複合体Dato-DXdと免疫チェックポイント阻害薬デュルバルマブの術前併用療法が有用である可能性がI-SPY 2.2試験で示された。乳がんは、米国およ...
転移トリネガ乳がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の効果予測ツールを開発の画像

転移トリネガ乳がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の効果予測ツールを開発

ジョンズホプキンス大学キンメルがんセンターおよびジョンズホプキンス大学医学部の研究者らは、転移を有するトリプルネガティブ乳がんにおいて、免疫療法薬の効果が期待できる患者をコンピュータツ...