OncoLog 2014年7月号◆「乳癌骨転移へのビスフォスフォネート剤、治療頻度を減らしても同等の効果」

MDアンダーソン OncoLog 2014年7月号(Volume 59 / Number 7)

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乳癌骨転移患者に対しビスフォスフォネート剤の治療頻度を減らしても効果において標準レジメンとの差はない

乳癌が骨転移した患者における骨関連事象を予防するためのビスフォスフォネート治療については、頻度を減らしても標準治療レジメンと同等の効果が得られることが最近の試験で示された。この結果は月1回の治療(標準治療)を1年間継続したのちに得られたものである。

ゾレドロン酸などのビスフォスフォネート製剤は、乳癌が骨転移した患者にみられる骨の痛み、骨粗鬆症、脊髄圧迫、またカルシウムレベルの上昇といった骨関連事象の発生頻度を減らす。これは本製剤が、骨を破壊してカルシウムを放出する破骨細胞の活性を抑制するためである。転移した乳癌細胞は、活性破骨細胞がある領域に引き寄せられるというエビデンスもある。そのため、ビスフォスフォネート製剤による治療で破骨細胞活性を抑制することで、さらなる骨転移のリスクを減らすことが出来る可能性がある。

骨転移した乳癌患者へのビスフォスフォネート製剤の標準治療レジメンでは、生涯にわたり本製剤の静脈内注入を月に1回の頻度で行う。このレジメンがビスフォスフォネート製剤使用について至適な投与スケジュールかどうかを決定するため、OPTIMIZE-2と呼ばれる第3相臨床試験がテキサス大学MDアンダーソンがんセンターと他の臨床試験施設で実施された。

OPTIMIZE-2試験では、骨転移乳癌のため月1回のゾレドロン酸による治療を1年間継続してきた女性403人を、引き続き1カ月に1回投与する群と、3カ月に1回投与する群に無作為に割り付けた。試験の結果、治療の有効性において、この2群間には有意な差が無いことが判明した。骨関連事象の発現率は1カ月に1回の投与を受けた群において22%であり、3カ月に1回の治療群では23%であった。

骨転移を生じた乳癌患者における標準的治療を変える可能性を持つ本試験結果は、今年6月に開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で、乳腺腫瘍内科教授のGabriel N. Hortobagyi医師によって発表された。「概して、私たちの乳癌患者さんは健康状態を十分に保っており、治療頻度を減らし得る段階にきています。私たちは患者さんの多くに過度の治療をしている可能性があり、この試験はその一例になります」。

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翻訳担当者 岡田章代

監修 辻村信一(獣医学・農学博士、メディカルライター/メディア総合研究所)

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