【ASCO2024年次総会】若年乳がん患者のほとんどが治療後に妊娠・出産可能
ASCOの見解(引用)
「乳がんの治療後も、妊娠や出産が可能であるだけでなく安全でもあることが、データが進化するにつれて次々と証明されてきています。この研究では、妊娠を試みた乳がんサバイバー、特に経済的にゆとりのある人の、かなりの人数が生児出産を達成していることが示されました。妊よう性温存に関心のある若い患者さん全員に、将来妊よう性温存の選択肢が平等に与えられるべきです」。
—Elizabeth Comen スローンケタリング記念がんセンター乳腺腫瘍専門医
研究要旨
目的 | 乳がんサバイバーの妊よう性 |
対象者 | 40歳以下でステージ0~3の乳がん患者1,213人 、うち197人が妊娠を試みた。 |
主な結果 | 妊娠を試みたステージ0~3の乳がんサバイバーの多くが、治療後に妊娠・生児出産に成功した。 |
意義 | ・乳がんサバイバーの妊娠率および生児出生率に関する現在の研究は、乳がんの一部のタイプを対象としていること、短期間の追跡調査であること、前向きの評価が欠如していることなどにより、限定的である。 ・著者らによると、本研究は10年以上の追跡を行い、妊娠の試みを考慮した初めての前向き研究である。本研究の患者集団には、あらゆるタイプの乳がんの既往歴のある患者が含まれる。 |
ステージ0~3の乳がんサバイバーが治療後に妊娠を試みた場合、そのほとんどが妊娠し、生児を出産できることが新たな研究で明らかになった。この研究は、5月31日から6月4日までイリノイ州シカゴで開催される米国臨床腫瘍学会(ASCO)2024年年次総会で発表される予定である。
試験について
「この研究は、乳がん診断後に妊娠を試みることを望んだ乳がん患者、および乳がんサバイバーの、前向きコホート群における妊娠率と生児出産率を報告することにより、従来の研究の不足を埋める目的で設計されました。さらに、本研究で報告された患者集団の追跡期間中央値は10年以上であり、あらゆるサブタイプの乳がんの既往歴のある患者が含まれています」と、マサチューセッツ州ボストン、ダナファーバーがん研究所リサーチフェローのKimia Sorouri氏(MD、MPH)は述べた。
本研究は、2006年から2016年の間に、40歳以下でステージ0~3の乳がんと診断された1,213人を対象とした。この研究には、転移性疾患のある人や、乳がん診断前に子宮や卵巣を摘出した人は含まれていない。対象となった参加者のうち、197人が中央値11年の追跡期間中に妊娠を試みたと報告した。
妊娠を試みた参加者について:
- 診断時の年齢中央値は32歳であった。
- 74%が非ヒスパニック系白人であった。
- ステージ0(一般に、非浸潤性乳管がん、あるいはDCISと呼ばれる)が14%、ステージ1が41%、ステージ2が35%、ステージ3が10%であった。
- 76%がホルモン受容体陽性であった。
- 68%が化学療法を受けた。
- 57%が診断後1年以内にホルモン療法を受けていた。
- 13%にBRCA1またはBRCA2、あるいはその両方の生殖細胞系列遺伝子変異がみられた。
- 51%が経済的に余裕がある(請求書を支払った後でも、特別なものを買うために十分なお金が残っている状態と定義する)と答えた。
- 51%が妊娠経験がなく、72%が正期産での出産経験がなかった。
- 28%が診断時に妊よう性温存、特に卵子や胚の凍結を受けたことがあった。
- 15%が診断前に不妊を経験したと報告した。
主な知見
- 治療後に妊娠を試みた患者のうち、73%が1回以上妊娠し、65%が1回以上生児を出産したと報告した。診断から最初の妊娠までの期間の中央値は4年であった。
- 診断時に高齢であった患者は、妊娠・出産する可能性が低く、一方、経済的に余裕のある患者と診断時に妊よう性温存を受けた患者は、それぞれ妊娠と生児出産の可能性が高かった。
- また、妊娠を希望する人において、不妊の既往歴、出産経験の有無、乳がんの特徴、受けた治療の種類、BRCA生殖細胞系列変異の有無、人種や民族など、妊娠や出産の可能性に影響を与えないと思われる要素も多く確認された。
研究者らは、乳がん患者の妊娠や生児出産に関連した、無病生存期間や全生存期間といった疾患の転帰について、より理解が深まることを期待している。また、エストロゲン受容体陰性など、乳がんのサブタイプ別の解析をすることも考えている。
この研究は、スーザン・G・コーメンと乳がん研究財団から資金提供を受けた。
- 監訳 小坂泰二郎(乳腺外科/JA長野厚生連 佐久総合病院 佐久医療センター)
- 記事担当者 平沢沙枝
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- 原文掲載日 2024/05/23
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