患者、がんサバイバー、介護者のQOLを改善する新たな戦略が研究で明らかに

「少ない方が効果的」という治療戦略、早期緩和ケアの有用性、および女性乳癌患者の妊よう性を温存する新しい治療法のエビデンスが新たな研究で示される

第50回米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で本日、癌治療の短期的・長期的影響を緩和し、癌患者および介護者のQOLを改善するための新たな戦略を示す重要な研究が発表された。

「癌治療が大きな進歩を遂げた結果、今日、以前より多くのがんサバイバーが存在します。しかし腫瘍学は生存期間を延ばすことだけを目的にしているわけではありません。積極的な治療からサバイバーシップまで、すべての段階で患者が可能な限り最良のQOLを保てるようにしなければなりません」と、ASCO専門委員でFASCO(米国臨床腫瘍学会フェロー)、カリフォルニア大学ロサンゼルス校ジョンソン総合がんセンターの癌予防管理研究部長であるPatricia Ganz医師は、記者説明会で述べた。

「今日の研究により、どの段階で安全に治療を減らすことができるかということから、若い女性の癌治療において妊よう性を温存するための簡易で新たなアプローチまで、患者の生活をより良くする新たな手技が明らかになりました。また、緩和ケアの早期活用により、進行癌患者だけでなく介護者の生活をも改善することがわかりました」と、Ganz医師は述べた。

重要な研究結果

LHRHアナログ剤ゴセレリンは化学療法を受けるホルモン受容体陰性乳癌の女性患者の妊よう性温存に有用:新たな第3相臨床試験で、ホルモン受容体陰性の早期乳癌患者に対するゴセレリンによるホルモン療法が、化学療法による早期卵巣不全のリスクを大幅に下げることが示された。このホルモン療法を追加して受けた女性は、癌治療の後で妊娠する可能性が高かっただけでなく、生存率も改善した。

乳癌骨転移患者に対する低頻度(3カ月に1回)のゾレドロン酸投与は、標準的な月1回投与と比較して安全であり同等の有効性が得られる:乳癌骨転移患者に対し、1年間の標準治療の後でゾレドロン酸投与の頻度を下げても、有効性を損なうことなく、副作用も同程度だった。これらの知見は、こうした患者にとって頻度を減じた治療でも有効性は変わらず、治療への負担と治療費用が軽減されることを示している。

低リスクのHPV陽性頭頸部癌患者を対象とした低線量放射線療法は安全である:米国国立衛生研究所(NCI)が財政支援した第2相臨床試験では、予後が良好なHPV陽性の口腔咽頭癌患者が低線量強度変調放射線治療(IMRT)を受けることにより、2年生存率が95%となった。この新たなアプローチにより、多くの患者は治療のために、しばしば生涯にわたり悩まされる副作用を避けることができる。

電話による早期の緩和ケアサポートで介護者の生活の質が改善:電話を使った緩和ケアによる介入は、特に患者が癌診断を受けた後、早期に提供することで、介護者のうつや負担を軽減する。過去の研究では、進行癌の患者が緩和ケアで大きな利益を得られることを明らかにしたが、この研究は介護者にとっても重要であることを強調している。

終末期のスタチン投与中止は安全であり、患者のQOLを改善する:生命を脅かすような病気の患者では、終末期にスタチンの投与を中止することにより、生存を脅かすことなく、QOLが向上する。投与中止は頭痛、筋肉痛、炎症、眠気、めまいを軽減するとともに、ケアの費用負担も大幅に削減する。

翻訳担当者 片瀬ケイ

監修 原 文堅 (乳腺科/四国がんセンター)

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