ホルモン感受性早期乳癌の若齢女性に対する術後補助療法にエキセメスタンと卵巣機能抑制の併用はタモキシフェンよりも効果的
<ASCO年次大会で注目された乳癌、前立腺癌、大腸癌の治療に関する重要な進展(ASCO2014プレナリーセッション)>(折畳記事)
2つの第3相試験(TEXT試験とSOFT試験)を併合解析したランドマーク試験(大規模臨床試験)において、ホルモン感受性癌の閉経前女性ではアロマターゼ阻害剤であるエキセメスタンを卵巣機能抑制(OFS)と併用した場合、タモキシフェンより乳癌再発防止効果が高いことが示された。この試験では、エキセメスタンとOFSを併用した場合、タモキシフェンとOFSを併用した場合と比較して、患者が浸潤癌を続発する相対リスクが28%低下し、なかでも乳癌再発の相対リスクは34%低下した。
「長年の間、タモキシフェンはホルモン感受性乳癌の若齢女性における癌再発予防の標準的なホルモン療法薬でした。この試験結果は、卵巣機能抑制を併用したエキセメスタンが有用な治療選択肢となることを裏づけています」と、スイスBellinzonaに所在するOncology Institute of Southern Switzerlandの乳腺科医局長で本研究の筆頭著者でもあるOlivia Pagani医師は語る。「本研究の結果は、卵巣機能抑制と併用した場合(閉経後状態を模倣)、エキセメスタンはタモキシフェンより優れていることを示唆していますが、治療を受けた若齢女性の生存率や長期副作用、妊よう性を評価するためには今後も長期的な追跡調査を行うことが重要です」。
TEXT試験およびSOFT試験は、Breast International Group(BIG)およびNorth American Breast Cancer Group(NABCG)の協賛のもとでInternational Breast Cancer Study Group(国際乳癌臨床試験団体、IBCSG)によって世界6大陸27カ国において実施され、成果を挙げた。本試験は一部、米国国立癌研究所(NCI)の助成を受けた。
TEXT試験とSOFT試験の併合解析は、乳癌の若齢女性を対象にアロマターゼ阻害剤とOFSを併用した術後補助療法を評価する世界最大規模の研究であるとともに、ホルモン受容体陽性乳癌の女性に対するこの治療法の有益性を示した初の研究である。アロマターゼ阻害剤は患者のエストロゲン濃度が低い場合にのみ使用できるため、本剤は当初、閉経後女性に用いられていた。TEXT試験およびSOFT試験では、閉経前女性の卵巣機能を抑制することで、閉経によって自然にエストロゲン濃度が低下する状態を模倣した。
閉経前女性に対する内分泌(ホルモン)療法による術後補助療法の現行標準法は、タモキシフェン5年間投与である。国によっては、高リスクの若齢女性に対してタモキシフェンにOFSを追加することを推奨している。タモキシフェンにOFSを追加した場合の有益性が不明であるため、米国ではこの治療法はあまり一般的ではない。SOFT試験では、タモキシフェンにOFSを追加した場合の影響についても研究されており、結果は2014年後半に発表される予定である。TEXT試験とSOFT試験の併合解析では、平均年齢43歳の女性4,690人をエキセメスタン+OFS群またはタモキシフェン+OFS群のいずれかにランダムに割付け、5年間投薬を受けた後の転帰を検証した。治療期間中は、triptorelin(トリプトレリン)投与、外科的卵巣摘出術、または卵巣放射線照射によって卵巣機能を抑制した。一部の女性は、担当医の判断で術後補助化学療法も受けた。
エキセメスタン+OFS群の5年無癌生存率は91.1%であったのに対しタモキシフェン+OFS群では87.3%であり、相対リスクは28%低下した。また、エキセメスタン+OFS群ではタモキシフェン+OFS群と比較して乳癌再発の相対リスクが34%低下し、遠隔再発(転移)の相対リスクは22%低下した。いずれの群でも5年全生存率は高く、エキセメスタン+OFS群では95.9%、タモキシフェン+OFS群では96.9%であった。2種類の治療法が長期生存率に与える影響を正確に評価するためには、より長期的な追跡調査が必要である。
副作用については、閉経後女性の術後補助療法においてアロマターゼ阻害剤とタモキシフェンを比較した既報の研究と同様のものが認められ、その内訳は薬剤によって異なっていた。副作用が認められたにもかかわらず、TEXT試験およびSOFT試験の参加者のうち、割付けられた治療を早期に完全中止したのはわずか14%であり、遵守率は日常診療におけるそれよりも高かった。Pagani氏は、遵守率が高いことは、この治療法を患者さんに勧めたいと考えている医師にとって重要な情報であると述べた。
TEXT試験とSOFT試験は同一の一般母集団(ホルモン受容体陽性早期乳癌の閉経前女性)を対象に同時期に実施された。両試験では共通の治療群(エキセメスタン+OFS群とタモキシフェン+OFS群)を設定しているため、当初の計画では、併合解析のみでなく、各試験の個別解析も予定していた。しかし、併合解析として試験を統合すれば、より早期に結果を発表することが可能となり、結果にもとづく迅速な行動によって医師や患者が利益を享受できるかもしれない。
本研究は、ファイザー社、Ipsen社、International Breast Cancer Study Group(国際乳癌臨床試験団体、米国国立癌研究所(NCI)および米国国立衛生研究所(NIH)の支援を受けた。
ASCOの見解:「若齢乳癌患者は長年にわたり術後の新たな治療選択肢を必要としてきました。そして今、それを手にしたかもしれません」と、ASCO会長のClifford A. Hudis医師、米国内科学会名誉上級会員(FACP)は語る。「タモキシフェンは何十年もの間ゴールドスタンダードであり、著効を示してきました。今後は、アロマターゼ阻害剤と卵巣機能抑制の併用が、再発リスクをさらに低下させる治療選択肢となります」。
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