有望な治療法、検診の新たな知見、肥満と乳癌の関連性の研究ー第50回ASCO年次総会にて注目すべき5つの演題

第50回ASCO年次総会では5,000以上もの研究が発表

本日、米国臨床腫瘍学会(ASCO)は、2014年5月30日〜6月3日にシカゴで開催される第50回ASCO年次総会で最も注目される演題として、主要な5つの研究結果の概要を明らかにした。これらの研究結果は次のとおりである。一部の患者では前立腺癌再発後のホルモン療法を延期しても安全である。最新の米国肺癌検診ガイドライン施行により、早期診断率および医療費総額が著しく上昇する見込みである。2種類の新たな分子標的薬が難治性癌の治療に有望である。この他、若齢女性における肥満と乳癌死亡率の関連性について新たな知見が示されている。

上記の研究は、本日、年次総会に先立ってASCOのホームページabstracts.asco.orgで公開された5,000題を超える発表要旨の一部である。この他、年次総会の本会議(Plenary session)の議題に選定された研究など、主要な研究は順次、最新演題情報としてシカゴの会場(McCormick Place)およびインターネット上で会期を通して発表される予定である。本年次総会のテーマは「科学と社会:次の50年」であり、世界各国から25,000人を超える腫瘍専門家が参加すると予想される。

「本学会50周年にあたる今回の年次総会で発表される研究では、癌研究およびケアにおける類をみない有望な成果が得られています。一般的な癌と稀少癌の両方に対して、オーダーメイド医療を提供するための臨床試験が行われています。われわれは、治療中の患者さんの生活の質を比較的容易に向上させる方法を探索するとともに、肥満などの社会的問題が患者さんのケアや転帰に与える影響に関する知識を深めています」と、ASCO会長のClifford A. Hudis医師、米国内科学会名誉上級会員(Fellow of American College of Physicians:FACP)は述べる。

「癌研究は非常に大きな成果を挙げています」とASCO Cancer Communications Committee(癌コミュニケーション委員会)委員長のJyoti D. Patel医師は語る。「なかでも、今回新たに発表される前立腺癌ホルモン療法に関する研究が示すように、長年主流となっている治療法の改善に非常に大きな意義があるということが認識されつつあります。また、肺癌に関しては、検診の重要性が一層明確になる一方で、莫大な検診費用を要することも明らかになりました」。

本日のpresscast(インターネット生放送による記者会見)で発表された研究の概要は次のとおりである。

  • PSA検査で前立腺癌再発が判明した患者のアンドロゲン除去療法(ADT)を延期しても安全であると考えられる:PSA値上昇のみで前立腺癌再発と診断された場合のホルモン療法開始時期に関する新たなデータが得られた。アンドロゲン除去療法を延期することで、ホルモン療法が原因で起こりやすい副作用(性機能不全、ホットフラッシュなど)が回避できるなど、男性の生活の質にとって重要な効果が得られる。
  • 新規EGFR阻害薬AZD9291は治療抵抗性非小細胞肺癌(NSCLC)に有効:第1相臨床試験の結果、新たなEGFR標的薬が、標準的なファーストラインEGFR標的薬に反応しなくなった進行型NSCLCに対して安全かつ有効性が高いことが示された。現在、このような患者を対象とした標準治療はない。
  • PLX3397は色素性絨毛結節性滑膜炎再発患者の新たな治療選択肢となり得る:初期の臨床試験の結果により、PLX3397が稀な腫瘍性関節疾患である本症の患者に著効を示すことが明らかになった。
  • 低線量コンピューター断層撮影法(LDCT)による全米肺癌検診は従来より早期かつ高率に肺癌を検出できるが、その費用は莫大:米国予防医学専門委員会(USPSTF)が推奨するLDCTによる年1回の肺癌検診を実施した場合、早期癌の診断率は2倍に上昇すると予想されるが、メディケア(高齢者医療保険制度)の費用が年間約20億ドル上乗せされることになる。
  • 閉経前のER陽性早期乳癌患者では肥満により乳癌死亡率が上昇:閉経前および閉経後の女性80,000人を対象に実施された新たな解析の結果、閉経前のER陽性乳癌患者においてのみ、肥満によって乳癌死亡率が1/3上昇することが示された。

翻訳担当者 佐々木真理

監修 小宮武文(腫瘍内科/カンザス大学医療センター)

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