OncoLog 2014年4月号◆In Brief「浸潤性膀胱癌と乳癌の類似性」
MDアンダーソン OncoLog 2014年4月号(Volume 59 / Number 4)
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浸潤性膀胱癌と乳癌の類似性
研究者らは、筋層浸潤性膀胱癌の遺伝子発現パターンが、乳癌の遺伝子発現パターンと顕著に類似することを発見した。このことは、最も致死的なタイプの膀胱癌の治療に重要な意味をもっている。
テキサス大学大学院バイオメディカルサイエンス科や他の研究機関と共同研究を行なっているテキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らは、筋層浸潤性膀胱癌の遺伝子発現プロファイルが乳癌の主要な4つのサブタイプのうち3つに非常に類似した分子カテゴリーに属することを報告した。
研究者らは、MDアンダーソンから得た瞬間凍結した筋層浸潤性膀胱癌の73の組織サンプルを遺伝子解析し、同じくMDアンダーソンから得た57のホルマリン固定パラフィン包埋筋層浸潤性膀胱癌サンプルを使用してこの発見を検証した。研究者らは、MDアンダーソン、フォックス・チェイスがんセンター、およびフィラデルフィアのトーマス・ジェファーソン大学病院の臨床試験で採取された筋層浸潤性膀胱癌サンプルのサブタイプ解析も行なった。
泌尿器科教授のDavid McConkey博士とその研究グループは、basal(トリプルネガティブ)乳癌に類似した筋層浸潤性膀胱癌のbasalサブタイプ、luminal AおよびB乳癌サブタイプに類似するluminalサブタイプ、luminal A乳癌に類似するが活性化した野生型TP53遺伝子の発現を特徴とする”p53-like”luminalサブタイプ)を特定した。
筋層浸潤性膀胱癌のこのbasalサブタイプは、basal乳癌のバイオマーカー(CD44、KRT5、KRT6、CDH3)でもあり、癌の幹細胞や他の治療抵抗性の特徴の存在を示す遺伝子を発現した。乳癌のそれらのサブタイプと同様に、basal膀胱癌のサブタイプは無治療だと悪性度は高いが、シスプラチンベースの化学療法には感受性が高いことが分かった。筋層浸潤性膀胱癌でも、シスプラチンベースの化学療法後に膀胱切除術を行なうのが標準治療である。
筋層浸潤性膀胱癌のluminalサブタイプは、乳癌のluminal AおよびBサブタイプと共通の遺伝子バイオマーカー(CD24、FOXA1、GATA3、ERBB2)を発現した。luminal膀胱癌はエストロゲン受容体陽性であり、成長因子受容体をコードするFGFR3に活性化変異が認められた。そのため、本タイプの膀胱癌患者には、これらの受容体を標的とする薬剤が有効であるかもしれない。
筋層浸潤性膀胱癌のp53-likeサブタイプは、活性化野生型TP53遺伝子の発現特性により区別された。本カテゴリーの腫瘍は、シスプラチンベースの併用化学療法に抵抗性を示した。McConkey博士は、「乳癌の術前化学療法に関する最近のある臨床試験では、正常なTP53遺伝子の発現特性を示す乳癌腫瘍も化学療法の効果があまりないことが分かった」と述べた。このような化学療法への抵抗性は、p53タンパク質が細胞死を促すことにくわえ、単に細胞の成長や分裂を停止させることからも説明できる。また、McConkey博士は、「これらの休止細胞が化学療法を逃れ、それにより分裂している細胞が優先的に殺傷されている」とも述べた。
本試験の結果は、Cancer Cell誌の2月号で発表された。研究者らは、本情報を治療の決定指針として活用できるよう、これらの筋層浸潤性膀胱癌サブタイプを特定するための簡素な方法を開発中である。
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