早期乳がんにリボシクリブとホルモン療法の併用は転帰を改善:SABCS
MDアンダーソンがんセンター
アブストラクト:GA03-03
Ribociclib[リボシクリブ](販売名:Kisqali[キスカリ])とホルモン療法の併用による標的治療は、再発リスクのある早期ホルモン受容体陽性(HR+)/ヒト上皮成長因子受容体2陰性(HER2-)乳がん患者において、無浸潤疾患生存期間(iDFS)に有意な便益をもたらした。テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者が主導した第3相NATALEE試験の結果は、本日、2023年サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)で発表された。
併用療法を受けた患者はホルモン療法単独を受けた患者と比較して、iDFS(浸潤性疾患が最初に発生するまでの期間)が有意に延長し、これは再発リスクの25%低下に相当する。3年後のiDFS率は併用群で90.7%、ホルモン療法単独群で87.6%であった。
「HR+/HER 2-早期乳がんに対する現在の治療法は、ごく一部の患者にしか効果がなく、多くの患者にはがんの再発の可能性を下げるための選択肢が限られています」と、乳腺腫瘍学教授のGabriel Hortobagyi医師は述べた。「本試験では、リボシクリブ+ホルモン療法を受けた患者の無病生存率の継続的な改善が示され、臨床的に関連のあるサブグループに対しても効果が示されました」。米国国立がん研究所によると、HR+/HER 2-乳がんは、最も一般的なサブタイプであり、米国の全乳がん症例の約70%を占めている。ステージ2のHR+/HER 2-乳がんと診断された人の約1/3は、標準治療を受けているにもかかわらず、再発のリスクに直面している。ステージ3の患者では、半数以上が再発を経験する。
リボシクリブは、低分子阻害薬として知られる標的療法薬の部類に属する。特にCDK 4およびCDK 6タンパク質を標的としており、これらは細胞増殖の調節および乳がん細胞の増殖促進に重要な役割を果たしている。米国食品医薬品局は、進行性HR+/HER 2-乳がんの治療におけるリボシクリブの使用を承認した。Hortobagyi医師が主導した過去の試験では、転移乳がんの治療におけるリボシクリブによる生存率の改善が示されていたが、今回の試験では、リンパ節に転移していない早期乳がん患者の転帰を改善できるというエビデンスが示された。
NATALEE試験では、20カ国から、再発リスクのあるHR+/HER2-のステージ2A、2B、3の乳がんを有する男性、または閉経前後の女性5,101人を登録した。被験者は、術後療法としてリボシクリブを3年間投与とホルモン療法を5年以上受ける併用群、またはホルモン療法を5年以上単独で受ける群とに無作為に割り付けられた。主要評価項目はiDFS、副次的有効性評価項目は、無再発生存期間(RFS)、遠隔無病生存期間(DDFS)、全生存期間(OS)であった。
研究者らは、リンパ節転移陰性、ステージ2、ステージ3の患者を含む患者サブグループ全体で一貫した便益性を認めた。副次的評価項目であるDDFSとRFSの解析では、リボシクリブ単独と比較してリボシクリブ+ホルモン療法が支持された。全生存期間データは現時点で不完全なままであり、リボシクリブ+ホルモン療法の併用群では84件、ホルモン療法単独群では合計88件のイベントが発現した。
前回の中間解析以降、新たな安全性シグナルは認められず、副作用はリボシクリブおよび非ステロイド性アロマターゼ阻害薬の既知の安全性プロファイルと一致した。
「早期乳がんの患者におけるこの併用療法の結果には勇気づけられます」とHortobagyi医師は述べた。「私たちは、これらの患者を長期間、経過観察する予定ですが、この結果が今後の乳がんの治療方法に影響を与える可能性があります」。
研究者はホルモン療法にリボシクリブを併用することにより、生活の質にどのような影響を与えるのかを引き続き評価し、長期的な転帰を観察するために患者の追跡調査を行う予定である。
本試験は、ribociclib[リボシクリブ](商標名:Kisqali[キスカリ])を販売するノバルティスファーマ株式会社から資金提供を受けており、Hortobagyi医師はノバルティスの有償コンサルタントであり、MD アンダーソンはこの研究を実施するためにノバルティスから資金提供を受けた。共同執筆者および開示のすべてのリストは抄録に記載されている。
- 監訳 東海林洋子(薬学博士)
- 翻訳担当者 三宅久美子
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- 原文掲載日 2023/12/08
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