転移性乳癌に対する新たな抗癌剤(LY2835219)が第1相試験で有望な結果

新規抗癌剤であるサイクリン依存性キナーゼ(CDK)4および6の経口阻害剤LY2835219が転移性乳癌患者、特にホルモン受容体(HR)陽性患者に対する単剤療法として有望であるとの第1相試験の結果が4月5~9日に開催された2014年米国癌学会(AACR)年次総会で発表された。

「前臨床試験の評価では、LY2835219は、ヒト癌において異常なCDK-4/6経路が促進する癌細胞の増殖に対する治療薬として使用できる可能性が高いことが示されています」とテキサス州サンアントニオにあるSouth Texas Accelerated Research Therapeuticsの臨床研究部副部長のAmita Patnaik医師は述べた。「前臨床試験において、各種の乳癌タイプでの試験を実施したところ、ホルモン受容体陽性細胞が本薬剤に高い感受性を持つことが判明しました」。

「乳癌の約80%がホルモン受容体陽性です」とPatnaik氏は続けた。「私たちの実施した試験はホルモン受容体の状態に基づいて患者の転帰を比較する試験デザインではありませんが、臨床的有効率は、ホルモン受容体陽性乳癌患者において61%であり、患者が24週間以上疾患をコントロールできているか、または腫瘍が30%以上縮小したことを意味しています。これはとても勇気づけられることであり、治療を必要とする同様の患者らを対象とした臨床試験を開始する必要があります」。

今回の第1相試験において、Patnaik氏らは5種類の異なったタイプの腫瘍に対する単剤治療として、LY2835219の試験を実施した。5種類の異なったタイプの腫瘍に登録された132人の患者のうち、47人が転移性乳癌患者でこれまで約7種類の治療を受けていた。全ての患者は28日間12時間おきに本薬剤の経口投与を受け、腫瘍が増大するか、または忍容できない副作用が出現するまでさらに継続した。47人の転移性乳癌の患者のうち、36人がホルモン受容体陽性であった。

47人の転移性乳癌の患者のうち、9人(19%)は部分奏効を示し、24人(51%)では病勢の安定を示した。11人においては治療にもかかわらず病勢進行した。

9人の部分奏効を示した患者全員、および24人の病勢安定を示した患者のうち20人がホルモン受容体陽性の癌であった。このことはホルモン受容体陽性患者において、部分奏効率および病勢安定率がそれぞれ25%、55%であったことを意味している。

疾患のコントロール率は完全奏効、部分奏効、および病勢安定の患者の総数として定義づけられるが、これはホルモン受容体陽性患者の81%であった。無増悪生存期間は9.1カ月であった。「これらの結果は、ホルモン受容体陽性の転移性乳癌患者におけるLY2835219の抗腫瘍活性を示しています。本剤は将来的に大規模な検証的試験で評価する必要があることを示しています」とPatnaik氏は述べた。

Patnaik氏によれば、現在も18人のホルモン受容体陽性乳癌患者がLY2835219投与を受けている。本試験の結果に基づき、本薬剤は乳癌に対する治療薬としてさらに開発中である。

本試験はイーライリリー社の資金提供を受けている。Patnaik氏はイーライリリー社からの研究資金提供と謝礼金を受けている。

翻訳担当者 木水友子

監修 辻村信一(獣医学・農学博士、メディカルライター/メディア総合研究所)

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