OncoLog 2014年1月号◆House Call「乳癌サバイバーのための減量のヒント」

MDアンダーソン OncoLog 2014年1月号(Volume 59 / Number 1)

 Oncologとは、米国MDアンダーソンがんセンターが発行する最新の癌研究とケアについてのオンラインおよび紙媒体の月刊情報誌です。最新号URL最新号URL

乳癌サバイバーのための減量のヒント
過剰体重を減らすことで多面的恩恵を得られる

多くの人は、癌の治療によって体重は減少するものと思っている。しかし、治療中や治療後に体重が増加する乳癌サバイバーが数多くいる。治療中はストレスにより高カロリーで心の安らぐ食べ物を求め、後に改めることが難しい不健康な食事を習慣化し、結果として体重の増加につながる。乳癌サバイバーのための減量法とその維持に有効な5つのヒントを示す。

減量のヒント

賢く飲食をしよう。テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターのがん予防センターに勤務する上級実践看護師のSuzanne Dayさんは、乳癌サバイバーは、沢山の果物と野菜を食べ、赤身肉(牛や豚など動物の肉)や加工肉は制限した方がよいと助言する。

複数の試験で乳癌再発リスクの上昇が示されたアルコールの摂取に関して、乳癌サバイバーは特に関心をもっている。アルコールの摂取は、カロリーが過剰になることに加え、細胞の修復やビタミン・ミネラルの吸収を妨げるかもしれない。乳癌サバイバーのアルコール摂取量は、1日あたり1サービングの標準推奨量に制限すべきであり、さらに1週間あたり3サービング未満の摂取量にするとなおよい。1サービングは、蒸留酒1.5オンス(約44ml)、ワイン5オンス(約148ml)、ビールなら12オンス(約355ml)である。

運動をしよう。運動はカロリーを消費するだけではなく、筋肉量が増加する。安静時においても筋肉は脂肪より多くのカロリーを消費するため、筋肉量の増加は体重を維持する助けとなる。最大の効果を得るためには、十分に発汗する強度で毎日30 ~ 60分の運動を行うとよい。運動習慣に飽きが来ないようにするため、体重負荷運動からヨガにいたるまでいろいろな運動を検討しよう。

術後に上半身の可動域が小さくなって運動が困難な乳癌サバイバーがいるかもしれない。もし可動域が小さくなっていたら、運動習慣が徐々に身につく適切な運動を運動生理学の専門家が指導してくれる。

会話をしよう。支援団体やカウンセリングを利用する人は、より多くの減量に成功しただけではなく、減量後の体重も維持していたことが研究により明らかになっている。対面相談が難しい場合は、オンラインのチャットがよいかもしれない。

また、目標を大きな声に出して自分自身に言うのもよい。というのも、自分の目標を自ら聞くことによって、その目標がより現実味を帯びてくるからである。さらに友人や家族と目標について話をすることで、彼らの支援を得られモチベーションを保ち続けることができる。

気楽に構えよう。健康的な食事を作る時間を見つけることに四苦八苦する人もいるかもしれない。これは、小分けにされた健康的な食品を購入することで容易になる。チョコレートバーの代わりに低カロリーのプロテインバーといった健康的な置き換え食品を利用することで、手軽に健康的な食事を摂ることができる。

また、現実的な運動目標を立てることは、モチベーションを保ち、そして順調に続ける助けとなる。達成可能な、毎日のあるいは1週間ごとの目標を立て、進捗状況を記録する。進捗状況を記録することで、改善が必要な部分を特定する助けとなり体重減少が容易になる。

気分を変えよう。がん予防センターの登録栄養士であるClare McKindleyさんは、「減量について話し合うべき目新しい栄養学は何も無いと言う患者さんが時々います。その場合、患者さんが過去に行ったことを再検討し、知識と行動の溝を埋めようと自ら決断をする手助けをします」と述べた。この知識と行動の溝を埋めることは、どんな減量プランにおいても必要不可欠なことである。

知識と行動の溝を埋めるために考案した1つの戦略は、患者さんに食べ物との関係を見直してもらうということである。そうすることで、食べ過ぎてしまう「問題のある食べ物」を確認することができる。問題のある食べ物は、退屈な時、悲しい時、気分がすぐれない時などに誘惑に抵抗し難いものである。健康的なスナックを用意し、問題のある食べ物は気分がよくなるまで取っておく。ポジティブな雰囲気では、食べ物に対する欲望は減り食べ過ぎる可能性が少なくなるためである。

健康である利点

健康的な体重を維持することは心臓疾患や糖尿病のリスクを減らすことに加え、乳癌の再発リスクも低減させることができるため、乳癌サバイバーにとっては重要である。しかし一方では遺伝子変異のようにコントロールが不可能な乳癌のリスク要因もある。食事や運動といったコントロール可能なリスク要因は、乳癌発症や再発のリスクを低減させることが可能である。

幸いなことに、運動による健康増進はわずかであっても健康の改善に非常に役立つ。そして運動は手軽に始められる。乳癌サバイバーに対するDayさんのアドバイスは、「アルコールの摂取を減らし、もっと運動をしましょう」という簡潔なものである。

— M. Yeoman

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翻訳担当者 野川恵子

監修 朝井鈴佳(獣医学・免疫学)

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