乳癌の画像検査と腫瘍マーカー検査

Choosing Wisely

必要なとき、不要なとき

乳癌に罹ったことを知ったならできる限りのあらゆる治療を受けて、絶対に再発を防ぎたいと思うのは自然なことです。けれども、可能な検査を全て受けるというのは必ずしもよい選択とはいえません。検査は必要ではない可能性もあり、検査を受けることによる利点よりもリスクのほうが大きいかもしれません。

このファクトシートは、癌専門医が画像検査と腫瘍マーカー検査を奨めるケースと、奨めないケースを示しています。

CT・PET・骨のスキャンなどの画像検査においては、癌が体内で転移していないかみつけるために撮影をします。もう一つの検査であるいわゆる腫瘍マーカーは、血液検査の一種です。腫瘍マーカーはバイオマーカーまたは血清マーカーとも呼ばれます。いくつかの型の癌を有する患者において、マーカー値は通常よりも高いです。必要とされる検査は乳癌の病期により異なります。

乳癌の病期分類とはどういったものでしょうか?

癌の病期を決定するには、医師は、腫瘍の大きさ、部位、転移の有無をチェックします。さらに、病歴・理学的検査・診断検査・癌とリンパ節の検査が確認されます。

早期乳癌はステージ0、1、2、3Aのことを指します。

・ステージ0は、異常細胞が乳管または乳腺葉に存在する状態です。細胞は乳管壁を越えておらず、転移もしていません。

・ステージ1、2、3Aでは。腫瘍が存在します。腫瘍は脇下のリンパ節に広がっている可能性がありますが、そのほかの部位には転移していません。

後期乳癌はステージ3Bと4です。癌は乳房以外に、脇下のリンパ節に転移しています。

初期乳癌の場合、どうすればいいでしょうか?

初期乳癌で、癌転移を示す徴候がない場合、体内のほかの部位の癌を調べる画像検査を受ける必要はありません。癌が転移している可能性はとても低いからです。これまでの研究によれば、乳癌が肝臓や骨に転移した例は100人中6人にも満たないのです。さらに転移するのは通常、ステージ3の乳癌患者です。

画像検査はリスクが高く、コストがかかる

最大のリスクは画像検査により放射線を浴びることです。一生涯に浴びる放射線の蓄積の結果、癌のリスクは高まる可能性があるのです。

画像検査は「偽陽性」を示すこともあります。つまり、1回目の検査では異常を示すけれども、検査を重ねると問題がないということです。偽陽性が示されると、ストレスを受け、別の検査が必要となり、受けるべき治療が遅れてしまうかもしれません。

画像検査は、また治療費に数千ドル余分にかかることになります。すべての保険会社で初期乳癌の画像診断に保険金が支払われるとは限らないのです。

すでに乳癌にかかっている場合どうすればいいでしょうか

もしも初期乳癌に罹っていて癌が再発した徴候がなければ、画像検査や腫瘍マーカー検査を受ける必要はないでしょう。癌が再発している可能性は低いからです。通常、検査により寿命が延びることはありません。また、間違った診断や必要のない治療につながる可能性もあるのです。

一般的に、癌の経過観察をする最善の方法は、毎年、乳房のX線検査を受け、6か月毎に健康診断を受けることです。そして、乳房に新たなしこりや痛みのような症状がないかを確認します。複数の研究によると、乳癌の再発のほとんどは画像検査ではなく症状を通して発見されます。

後期乳癌では検査は必要でしょうか

画像検査-ステージ3Bか4なら、他の部位への転移を調べるために画像検査を受けるべきです。治療は癌の転移の程度、部位によって異なります。

腫瘍マーカー検査-後期乳癌の患者に対して、医師は、腫瘍マーカーを確認するために血液検査も行うかもしれません。これらの検査は癌が進行癌していることが判明している場合にのみ行われるべきです。

コンシューマー・リポートによる助言

主治医に尋ねるべき質問

乳癌と新たに診断された場合

癌の病期を決定するためにどんな検査を行うか、その検査が治療の選択にどのように役立つのかを確認してください。医師が画像検査をするというなら、以下の質問をしてください。

・乳癌の病期を教えてください。

・病気の診断のためにどの検査をしましたか?

・癌が転移しているかを調べるために画像検査が必要ですか?

・検査結果は治療の選択にどのように影響しますか?

乳癌の治療中である場合

医師に下記のことを尋ねてください。

・癌が再発したかを確認するためにどの検査を受ける必要がありますか?

・どのぐらいの頻度で検査を受ければいいでしょうか?

・その検査によって、どのような利点がありますか

・どんな徴候や症状をすぐに報告する必要がありますか?

・次の予約で何を報告すればいいですか?

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2012年コンシューマー・リポート。本サイトは米国臨床腫瘍学会の協力を得て作成しました。記事の出典や記事中の用語およびその使い方についてはConsumerHealthChoices.org/about-us/をご覧ください。2012年9月

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池上紀子 訳
高濱 隆幸(腫瘍内科/近畿大学医学部)監修 
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原文

翻訳担当者 池上紀子

監修 高濱 隆幸(腫瘍内科/近畿大学医学部)

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