HR陽性進行乳がんに対するサシツズマブの有用性を確認
ダナファーバーがん研究所
ホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陰性(HER2−)の転移を有する乳がんにおいて、新しい抗体薬物複合体が、標準的な化学療法と比較して優れた有用性を引き続き示していることが、Lancet誌掲載の研究により明らかになった。
本日発表された第3相臨床試験TROPiCS-02の2回目のデータ解析によると、sacituzumab govitecan[サシツズマブ ゴビテカン]は化学療法と比較して全生存期間を統計学的に有意に改善した。この国際共同試験に参加した患者の全生存期間は、サシツズマブ 投与群で14.4カ月、化学療法群で11.2カ月であった。また、サシツズマブ投与群は標準化学療法と比較して、優れた奏効率を示し、無増悪生存期間中央値も延長した。サシツズマブを投与された患者は、化学療法を受けた患者よりがんの進行または死亡のリスクが34%低かった。
「これらのデータは、サシツズマブ ゴビテカンが無増悪生存期間および全生存期間の両方を改善し、腫瘍のTrop-2発現に関係なく有効であることを裏付けるものです」と、ダナファーバーがん研究所のSusan F. Smith婦人科がんセンター乳腺腫瘍学部長であり、本試験の上席著者であるSara Tolaney医師・MPHはいう。「この最新の解析結果は、サシツズマブ ゴビテカンが治療歴のあるホルモン療法抵抗性、HR+/HER2-転移乳がんの標準治療となりうることを引き続き示しています」。
昨年のASCO年次総会および欧州腫瘍学会で発表されたTROPICs-02試験の先行データに基づき、サシツズマブはHR+/HER2-転移乳がんの治療薬として今年2月にFDAに承認された。
本試験の筆頭著者は、カリフォルニア大学サンフランシスコ校、Helen Diller Family総合がんセンターのHope S. Rugo医師、およびマサチューセッツ総合病院がんセンターのAditya Bardia医師・MPHである。
サシツズマブは、乳がんなど多種の固形がんに豊富に存在する細胞受容体Trop-2を標的とする抗体と、SN-38という抗がん剤から構成されている。トリプルネガティブ乳がんの特定の患者を対象にFDAから承認されており、HR+/HER2-転移乳がんで少なくとも2回の化学療法後に進行した患者を対象とした早期臨床試験で有望な活性を示した。
TROPICS-02臨床試験は、ホルモン療法および化学療法による治療歴のあるHR+/HER2-転移乳がん患者543人を対象とした。半数がサシツズマブ投与群に、半数が化学療法群にランダムに割り付けられた。特によく見られた副作用は、好中球減少症(白血球の一種である好中球の数が少ない状態)、下痢、悪心、脱毛症(髪が抜ける)、けん怠感、貧血であり、サシツズマブ群において化学療法群より高頻度に発生した。
本試験はGilead社から資金提供を受けた。
- 監訳 尾崎由記範(腫瘍内科・乳腺/がん研究会有明病院)
- 翻訳担当者 奥山浩子
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- 原文掲載日 2023/08/23
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