肺癌と乳癌の治療および予防の進展と国内の抗癌剤不足に対する新たな洞察

問合わせ先:
Kelly Baldwin
312-949-3232
kelly.baldwin@asco.org

シカゴ-第49回米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会において、大規模臨床試験の新たな結果が今日発表された。この試験では、進行性肺癌に対する有望な新しい標的治療が発表され、2つの乳癌治療の治療選択肢が患者を衰弱させる副作用のリスクを軽減できることを確認している。

それに加え、研究者らはアフリカ系アメリカ人女性の乳癌不均一の低減に役立つ可能性のある新たなゲノムの知見について述べ、また抗癌剤の不足が米国内の患者治療に悪影響を及ぼし続けていることを示した。

「医師として、患者にできる限り最善の生活の質を提供することは重要です。それはひとつには治療方針を再評価して、生存率を低下させることなく副作用を抑えることによって成されます。今日の研究のいくつかは、まさにそれを行っています」とニューヨーク州ニューヨーク、スローンケタリング記念がんセンターの腫瘍学者であり、議長およびACSOのスポークスマンであるAndrew D. Seidman医師は述べた。「良質な癌治療とは、適切な時に適切な治療を患者に提供することでもありますが、抗癌剤の不足によってその使命が依然として妨げられていることを、今日われわれは知りました。現在進行しているこの危機を決して見過ごしてはなりません。監督機関、政策立案者および製造業者による早期解決が望まれます」。

重要な研究結果:

・調査データは抗癌剤の不足が続き、医師らがさまざまな方法でそれに対処していることを示している米国腫瘍学者および血液学者、250人の調査から、2012年の半ばから後半には抗癌剤が一般に不足しており、患者治療に影響を与えていたことがわかる。医師らは標準的なジェネリック薬のかわりに、より高価なブランド薬を頻繁に使わざるを得ず、また治療を延期したり変更したりしなければならなかったと報告した。ASCOが実施した二次的調査でも同じような結果であった。

・2つの一般的なアジュバント化学療法レジメンは類似の有効性をもつが副作用は異なる第3相試験では、早期乳癌女性にパクリタキセル(タキソール)を低用量で毎週投与したときの効果は、標準量を隔週投与したときと同等であったが、副作用は大幅に軽減された。この結果は、より多くの医師が毎週投与のスケジュールを採用し、患者の生活の質が改善され、場合によってはコストの削減をもたらす可能性がある。

・腋窩放射線治療は腋窩リンパ節手術の安全な代替治療であり、リンパ浮腫のリスクを軽減できるランダム化第3相臨床試験の結果から、早期乳癌女性およびセンチネルリンパ節転移陽性女性に対する、腋窩放射線治療と腋窩リンパ節手術の5年生存率は、同等に良好であることがわかった。しかしながら、リンパ浮腫(痛みを伴う上腕の腫れ)の割合は、放射線治療に比べて手術の方が大幅に高かった。

・早期発症型乳癌あるいはトリプルネガティブ乳癌のアフリカ系アメリカ人女性は、乳癌関連遺伝子変異を有することが多い高リスクのアフリカ系アメリカ人乳癌女性の包括的な遺伝的プロファイリング研究から、彼らの20パーセント以上に、既知の18の乳癌感受性遺伝子のうちの少なくともひとつに遺伝子異常が認められた。この研究は特定のアフリカ系アメリカ人女性集団を調査したものだが、この結果は、乳癌に罹患した特定のアフリカ系アメリカ人女性やその親族のスクリーニングが、より徹底したスクリーニングや乳癌予防戦略の恩恵をこうむる可能性のある乳癌高リスク女性を特定する助けになるだろう。

・ファースト・イン・クラス(独創的かつ画期的医薬品)の標的薬が進行性肺癌患者の生存率を改善する大規模第2相臨床試験の結果により、進行性肺癌に対する有望な新しい二次療法が示された。熱ショックタンパク質(Hsp)90阻害剤であるganetespibを標準治療であるドセタキセルと併用すると、ドセタキセル単独に比べて全生存期間が延長された。

翻訳担当者 井上陽子

監修 原野謙一(乳腺科・婦人科癌・腫瘍内科/日本医科大学武蔵小杉病院)

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