子宮頸癌死の減少に新たな希望、甲状腺癌、乳癌および脳腫瘍治療の進歩を示す画期的な研究

問合わせ先:
Kelly Baldwin
312-949-3232
Kelly.Baldwin@asco.org

第49回米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次集会の総会に先がけて、本日極めて重要な研究5題が公表された。ASCO総会の最重要演題で取り上げられる抄録は、本集会における最も重要な癌臨床研究であり、腫瘍学研究および臨床に対して最も高い科学的レベルのメリットおよび非常に大きな影響をもたらす。

「本日示された研究結果は、最先端の薬剤から子宮頸癌の検出に酢酸を用いるシンプルな手法まで、技術領域の隅から隅まで網羅しつつ進歩している可能性を示唆しています」と、議長であり、ASCOの広報担当者であるJyoti Patel医師は語った。氏は、イリノイ州シカゴにあるノースウエスタン大学の Robert H. Lurie総合がんセンターの腫瘍医である。「特に喜ばしいことに、本集会でみられる大きな前進の中には子宮頸癌に関するものが複数あり、この結果は社会的背景が非常に恵まれていない女性に大きく影響します。さらに、本日示された研究によって、甲状腺癌、乳癌および脳腫瘍患者の生活の質は改善され、また場合によってはより長く生きられるようになるでしょう」。

重要な研究結果:

●効果的で簡便な子宮頸癌検診が、低所得国に住む多数の女性の命を救う:インドで行われた大規模臨床試験において、酢酸(酢)を用いる訓練された医療補助者の視診(コメント:本邦でも2次検診にて行われているコルポスコピー)による隔年の子宮頸癌検診は、効果的でかつ大規模に実施可能であることが示されている。この検診によって、子宮頸癌による死亡率はほぼ3分の1減少した。研究者らは、インドで毎年22,000人、全世界で73,000人の命を救うことができると推定している。

●転移あるいは再発子宮頸癌患者に対して奏効した初の生物学的療法:ランダム化第3相臨床試験において、進行した子宮頸癌患者に対し、標準的な化学療法に加えてベバシズマブ(アバスチン)を用いると、生存率を改善することが報告されている。これは、生物学的薬剤が、進行した子宮頸癌患者の生存率を有意に延長したとする初めての報告である。

●初発の膠芽腫患者に対し、標準的な化学療法に加えてベバシズマブを投与しても有益ではない:最も悪性度の高い脳腫瘍、膠芽腫の患者に対する初回治療として、ベバシズマブ(アバスチン)を用いるべきではないことが、第3相臨床試験で示されている。アバスチンとテモゾロマイドの併用投与は、テモゾロマイドの単剤投与に比べて副作用が多くみられたうえ、全生存率には改善が認められなかった。

●ソラフェニブが、悪性度の高い甲状腺癌に40年ぶりに効果を示す:第3相臨床試験の中間結果によると、マルチキナーゼ阻害剤ソラフェニブ(ネクサバール)は、標準的な放射性ヨード療法が無効な分化型甲状腺癌患者の無増悪生存期間を延長する。腫瘍増殖の遅延は、患者の生活の質を改善し、患者を入院や侵襲的治療から解放する。

●タモキシフェン療法の更なる延長により、乳癌再発や乳癌による死亡のリスクが大幅に減少:英国で行われたランダム化第3相臨床試験において、早期ステージの初発乳癌を治療した後、タモキシフェンを10年間服用した女性では、現在推奨されている5年間服用した女性に比べて、乳癌の再発率および死亡率が約25%低下したことが報告されている。本知見は、タモキシフェンを服用している世界中の何十万人もの女性の治療に影響を与えるであろう。

翻訳担当者 徳井 陽子

監修 喜多川 亮(産婦人科/NTT東日本関東病院)

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