銅減少療法はトリプルネガティブ乳癌の増殖を抑制する可能性

キャンサーコンサルタンツ

第2相臨床試験において、抗銅剤はトリプルネガティブ乳癌に対して有望な結果を示した。この結果はAnnals of Oncology誌に発表された。

これまでの研究で、内皮前駆細胞として知られている骨髄細胞は、癌の進展に重要な役割を果たすことが示されている。内皮前駆細胞は癌細胞が生き残り、他の臓器に広がるのを促進していると考えられている。銅を減少させる薬剤Tetrathiomolybdate(テトラチオモリブデイト)はこの内皮前駆細胞の働きを阻害し、癌の進展を抑制する可能性がある。

テトラチオモリブデイトの効果はハイリスク乳癌の女性を対象にした第2相臨床試験で評価された。この臨床試験には40人の女性が参加し、そのうちの11人がトリプルネガティブ乳癌(エストロゲンレセプター、プロゲステロンレセプター、HER2いずれも陰性の乳癌)であった。参加者は全員過去に乳癌の治療を受けており、臨床試験にエントリーされた時には画像上検出可能な乳癌は認めないものの、再発のハイリスク群と考えられていた。

テトラチオモリブデイトの使用により銅の値はある一定の範囲内に下げられた。治療は全体的に良好な忍容性を示した。このレポートでは最初の1年間の治療後の結果に着目して報告している。

  • 銅減少療法はトリプルネガティブ乳癌の女性に最も効果的に認められた。1カ月の治療後に目標とする銅の血中濃度に到達したのは、他のタイプの乳癌女性では41%であったのに比べ、トリプルネガティブ乳癌の女性では91%であった。
  • 銅減少療法により有意に内皮前駆細胞の数値が減少した。
  • 全体で85%の女性(トリプルネガティブ乳癌女性の82%)が少なくとも10カ月間再発を認めなかった。11人のトリプルネガティブ乳癌の女性のうち、10カ月以内に再発したのは2人のみであった。

これらの結果から、銅減少療法はトリプルネガティブ乳癌を含むハイリスク乳癌患者の再発リスクを下げる可能性があると考えられる。このアプローチの有効性や安全性を調べるために、第3相臨床試験が必要である。

参考文献:

Jain S, Cohen J, Ward MM et al. Tetrathiomolybdate-associated copper depletion decreases circulating endothelial progenitor cells in women with breast cancer at high risk of relapse. Annals of Oncology. Early online publication February 13, 2013.


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 中村奈緒美

監修 大野 智(腫瘍免疫学 早稲田大学/東京女子医科大学)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

乳がんに関連する記事

欧州臨床腫瘍学会(ESMOアジア2024)ハイライトの画像

欧州臨床腫瘍学会(ESMOアジア2024)ハイライト

ESMOアジア会議2024は、アジア地域における集学的腫瘍学に特化した年次イベントである。新しい治療法、特定のがん種の管理に関する詳細な議論、アジア全域を対象とした臨床試験、アジア地域...
喫煙はいかにして乳がん放射線治療を複雑にするのかの画像

喫煙はいかにして乳がん放射線治療を複雑にするのか

放射線治療は基本的ながん治療のひとつであり、乳がんを含むさまざまながん種での治療に用いられている。 
放射線治療は、放射線(通常はX線)を用いてがん細胞のDNAを損傷させ、がん細胞を破壊...
がんにおけるエストロゲンの知られざる役割ー主要な免疫細胞を阻害の画像

がんにおけるエストロゲンの知られざる役割ー主要な免疫細胞を阻害

エストロゲンは、その受容体を持つ乳がん細胞の増殖を促進することが知られているが、デュークがん研究所による新たな研究では、エストロゲンが、他のがんと同様に、受容体を持たない乳がんにおいて...
乳がん個別化試験で、免疫陽性サブタイプにDato-DXd+イミフィンジが効果改善の画像

乳がん個別化試験で、免疫陽性サブタイプにDato-DXd+イミフィンジが効果改善

早期乳がんに対し、抗体薬物複合体Dato-DXdと免疫チェックポイント阻害薬デュルバルマブの術前併用療法が有用である可能性がI-SPY 2.2試験で示された。乳がんは、米国およ...